異世界とは一体
まあ、俺は魔法について知りたいのだから、今はそれを最優先に考えようと思う。
という訳で、屋敷内を探し回り、書斎っぽい部屋を見つけ出すのに成功した。
というかこの家大きすぎでしょ、さすが公爵家。
もはや一種の城である。
それは置いておこう。
書斎っぽい部屋にある資料によると今年の収入は平年並みで、昨年比96%となっていて、、、。
違う、これじゃない。
アルベルト侯爵さんが2週間後面会予定で、その際フルコースのメニューが、、、。
違う。
グランデ帝国とフルス王国、ゲルン王国への国民税に穀物をそれぞれ、、、。
違う。
というか、おかしい。
なんでこの家3ヶ国に税金払ってんの?賄賂?
と思ったら違うみたいだ。
3ヶ国にまたがって領土を持ってる大貴族らしい。
しかも、公爵なのはグランデ帝国においてであり、フルスとゲルンでは侯爵らしい。
うーん、よくわからん。飛び地にも領土があるらしく、そこを任されてるのが父っぽい。
つまり正確には父はまだ爵位持ってなくて代官的な?
てか、爵位が3つってなんだよ。
しかも別の国から。
そんな事あるのか?
歴史、特に世界史は興味無かったから全然わからん。
これ、例えば3国間で三つ巴の戦争になったらどうすんのって感じだね。
それともそうならない確信でもあるんだろうか?
謎。
いや、違うそうじゃない。
今は魔法だ。
それにしてもおかしい。
魔法の資料が全然見つからない。
まさか、魔法のない世界!?
よく考えたらここが異世界かどうかなんてわからない話だ。
そもそも異世界とは何かについて考える必要がある。
異世界を仮に別の宇宙空間に存在する星だとする。
すると、そこでも当然我々の知る世界の物理法則が働くはずである。
あれ、て事は、別の宇宙空間ですらないという事か、、、。
なんだろう、自分でも訳が分からなくなってきた。
整理しよう。
まずこの場所がどこなのかについてだ。
考えうるパターンは大まかには2つ。
一つは同じ宇宙空間内の別の地球に似た惑星の場合。
これは未来の地球である可能性も考えていいが、その場合でも上記と大差ない。
つまり、その場合に重要なのは、魔法は使えなくて、既知の物理法則が支配する世界であるといえる。
いや、もちろん現代物理においても未知の部分の方が多いのは間違いないが言いたいことはそういう事ではない。
次に、宇宙空間と言われる空間とは別の何かしらの空間にある宇宙空間における惑星と等価の物体である場合。
つまり、完全なる異空間である場合だ。
この時、この世界には力に類似する法則や、質量に類似する物理量が存在することになる訳だ。
何故なら俺は今間違いなく地面に立っており、ジャンプしても永遠に飛んでいく事がないからだ。
しかし、魔法がないと困った事になる。
いや、魔法が無くても困るわけではないが、元の世界とは異なる何かが無いと困った事になる。
元の世界との違いが観測されないのなら、それは元の世界と区別する意味がなくなるからである。
わざわざパターンを二つにわけて考えたが、元の世界と変わらないなら、第二の宇宙と呼ぶだけでおわりである、という事だ。
なんだろう。
そう考えると、急激にやる気がなくなった。
もう、死んでいいんじゃないだろうか。
特にやる事もない。
地球と違って文明レベルもものすごく低い。
ここでは生きがいが見つかりそうにない。