おっぱい関数
ある晴れた夏の昼下がり、気温は観測史上最高温度を記録したとかなんとか報道されていた。
とはいってもそれほど珍しいことではない。
むしろ最近ではよくある事といっていいだろう。
3日に1回くらいはそんな事を聞いている気がする。
それはさすがに完全に気のせいなのだが。
そんな猛暑を更に手助けすべく、彼は今日も今日とてエアコンをガンガンにかけていた。
もちろんそんな意図があったわけではないだろうが。
その涼しい空間で、目に隈をつくりながら気だるげに、けれども達成感に満ち溢れた様子で彼は呟く。
「やっと究極のおっぱい関数が完成した。これこそが究極にして至高。」
そして、完成したと思しき数式とそれをグラフ化した図をwebページにアップする。
ここ数週間、時には不眠で数学の論文を漁りつつ、数式をかいてはあーでもないこーでもないと言いながら何かを研究している様子は、ともすれば温暖化を促進するのも致し方ない、必要な犠牲だった、と言える研究をしているように見えたかもしれない。
例えば、非線形偏微分方程式の解析についての研究に見えたかもしれない。
しかし、なんのことはない。
彼は、理想のおっぱいを関数にて描くことに全力を尽くしただけだったのだ。
そして、目的のものを完成さた今、彼は栄養失調と睡眠不足により、ひどく衰弱していた。
それだけであったならば、ご飯を食べて寝れば何の事はなかったはずである。
だが、人間欲望には際限がないとはよくいったものである。
そう、満ち足りてしまった彼は更なる高みを望んでしまった。
今すぐ女性の胸を直接でなくとも(布の上からでも)見てみたい、と。
かくして、快適な環境から過酷な環境の待つ扉を開けた途端、ひどい衰弱状態の彼の体はその温度差についいけず、意識を手放してしまった。