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「次ッ! 次はどうすればいいのッ!?」

(……やれやれ。元気だなぁ)


 楓のブログ構築はまだまだ続く。


「次はデザインをいじってみようか。今のこれって壁紙がピンクなだけで他はデフォルトだよね。もうちょっとコンテンツを充実させていこう」

「そ、そう! 私は世界一のネットアイドルに相応しい豪華なブログが欲しいの! 画像に、音楽に、キラキラ。カラフルで、隠しページもあって、それから……」

(……何十年前の発想だよ。最悪だッッッ!!!!!!)


 この初心者は一体どこからネットの知識を仕入れてきたのか。頭の中にあるのはインターネットの黎明期のような超ダサいホームページのイメージである。紫苑でさえネタで聞いたことがある程度で本物を見たことは無いというのに。


「まずはプロフィールを書こうか。ネット上に個人情報を載せるのはそれなりにリスクのある行為だけど、ネットアイドルをやるのであればプロフィールは必要だ。くれぐれも内容は考慮した上でね。でなければ大変なことになる」

「炎上しないように気をつけろってことだよね?」


 ネットアイドル活動を行う上で一番のリスクは、やはり炎上であろう。読者の反感を買うような投稿をブログやSNSに上げてしまうことで多数から袋叩きにされる。インターネット上の調査によると、炎上に参加して攻撃的活動を行った経験があるのは、ネット人口全体の僅か〇.五パーセント程度らしい。二百人に一人くらいである。


 二百人に一人という割合はもの凄く少ない。日本の刑法犯罪発生率が〇.四八パーセントであるから、警察のお世話になった人と同じ人数でネットの炎上祭りは引き起こされている。しかし、そこはインターネット界の母数の多さとアクセス性の高さである。炎上情報に接触している者が百万人いれば、五千人が攻撃に参加している計算になる。五千人が情報を察知して一カ所に集中アタックを仕掛けらたら大炎上もいいところだ。渋谷のスクランブル交差点のど真ん中よりもオープンな環境であること、それがインターネットのリスクだ。


「じゃあ、まずは名前からだ。本名で行く? それともハンドルネーム……芸名を使う?」


 炎上リスクを避ける為に、インターネットは匿名で行うという手法が一般に普及しているが、これは余り望ましく無い対策だ。匿名でやっていてもいずれは特定されることも多いし、何より正体がバレなければ何をやっても良いという話ではない。


 常識を弁えていることが肝要である。


 実名をインターネットに出して問題無く運行している人は沢山いるわけだし、高校生なのにエロアカウントを運営している炎上スレスレの紫苑はさておき、ちゃんと良識ある良い子の楓なら実名でも問題無いだろう。実名でも匿名でも好きな方を選べば良い。


「ほ、本名? 私の名前が世界中に広まってしまうんだよね。ちょっと恥ずかしいかも……」

「本名が恥ずかしいならなら芸名かな?」

「メイプルちゃん! それなら愛嬌もあって可愛いよね」

「なら芸名で」

「でもメイプルちゃんってまるで子供みたい。ちゃんと本名を名乗る方が大人の女性っぽくて格好良いよね」

(……どっちなんだよッッッ!!!!!!)


 これが女という生き物なのだ。何が言いたいのか、何を考えているのか、まるで意味が分からない。天才的頭脳を持つ紫苑が、その能力の大半を傾けても何を考えているのか丸っきり分からない。宇宙誕生の謎よりも意味不明。それが女という生き物である。


「なら、これならどうかな。表向きには芸名のメイプルを名乗る。でもプロフィールには本名は瀬川 楓だと書いておく。こうすることで、通常の活動では抵抗感の少ない芸名で通すけど、それは別に後ろめたい事があって本名を隠蔽する目的ではない、自分は真っ当な人間であることを暗に示すことが出来る。本名を知りたいというファンの心理にも応えることが出来る」

「さ、流石は新条くん! そうします!」

「了解」


 時々思うのだが、楓の考えていることが読めないと言うより、そもそも何も考えていないだけなのでは……。紫苑が何か言うとコロッとその気になっているような気がしなくも無い。真相は永遠の謎である。

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