広告設定変更
「さて、ログイン出来たは良いけど、どこから手を付けていこうか?」
「全部! 全部良くして。プロデューサーでしょッ!」
(……本当に僕だけが頼りなんだな)
楓のアカウントにログインしてパスワード変更まで完了した。
さて、カレイドスコープは高機能なSNSだが、楽器が弾けるわけでもなく、ダンスが出来るわけでもない楓が出来ることは「日記を書く」だけが関の山である。従って、楓をネットアイドルとして成立させる為には、ブログ機能の充実に力を入れなければならない。
高機能なカレイドスコープらしく、ブログ機能もカスタマイズ出来る範囲が大きい。カスタマイズするスキルを持っていないと平凡な初期状態のままである。
紫苑の見たところ、楓のブログはかなり低品質だ。ほとんどの設定が初期設定のままで、広告も出まくりで見苦しい。デフォルト状態との違いは壁紙の色がピンクなだけではないか。
一ヶ月も必死で頑張って出来た事が壁紙の色を変えただけとは。実に低スキルである。
「じゃあ、まずは広告の位置を変えようか? このブログ、画面の一番上に広告が出てるから見辛いったらありゃしない」
「位置を変えるんじゃなくて、消して欲しいの! 邪魔なだけじゃなくてエッチな玩具の広告ばっかり出てくるもん! こ、こんな汚れた広告ばっかりブログを持ってたらそれだけで私のイメージが台無しになっちゃう!」
「あのね、この広告は読んでいる人に応じて表示される内容が変わるんだよ。ほら、今は僕のパソコンでログインしているから、今度発売のゲームの広告が出ているでしょ?」
「ほ、本当だ。私が見た広告と違う……」
「行動ターゲッティング広告って言うんだ。パソコンに残された痕跡を使ってその人に合った広告を選んで表示している。これは前に僕が通販でこのゲームの前作を買った履歴が解析されているんだな。エロゲーじゃないよ」
「そうだんだ。男の子っぽいゲームだね。新条くんってこういうゲームが好きなんだ。そうなんだ。そうなんだ……。……そ、それで、つまりどういうこと?」
「つまり、君のパソコンで見るとそういう広告ばっかり出てくるってことは、君が前にそういう玩具をネット通販で買った事があるか、そういうサイトを頻繁に見ているってことだよ」
その瞬間、ガタッと楓は顔色を青くしてイスから滑り落ちてしまう。
「君ね、日頃一体どういうネットの使い方をしているのかな? 聞いていると何だか凄く偏った使い方をしているようにしか思えないんだけど? まあ、僕も人のことを言えた口じゃないけどね」
「ご、誤解だよ! わ、私は新条くんが思っているような使い方はしてないよ! そういう使い方をするのは男の子だけでしょ! 私は違うよ……。ほ、本当だよ……。か、か、神様に誓って、私はそんな……。き、き、きっとスーパーハッカーが私のパソコンに変なことしたんだよ……。そうなんだよ……」
「知らないうちにスーパーハッカーに変な物を注文されて、それが君の家に届いてお母さんにバレないように回収して今は君の部屋に開封された状態で転がっていたりしない?」
「わ、わ、私の無知につけ込んであること無いこと吹き込むのがそんなに楽しいのッ!?」
(……超楽しい!)
壁際でガタガタと体を震わせる楓を見ていると歪んだ感情が沸き上がってきてしまうが、可哀想だしこの程度にしておこう。
「まあ、僕のアカウントを追っかけてたら自然とそうなるよ」
「それよ! 最初はあんな広告出てなかったもん! 全部ペロペロ神のせいじゃない! ペロペロ! ペロペロ! ペロペロ! ペロペロ!」
「わ、分かったって! 悪かったって! ちゃんと変な広告は出ないようにしてあげるよ! えーっと、十八歳未満向けの広告が表示されることを許可しない、を選択して保存。はい終わり」
「それだけッ!? なら早くやってよね! わざともったいぶって私の反応を見て楽しんでたでしょ!? 何て人なのッ!?」
「だから悪かったってば! 悪かったッッッ!!!!!!」
楓の要望は広告を全く非表示とすることだったが、カレイドスコープは無料会員である限りは広告非表示には出来ない。ただし位置を変えることは出来るので、紫苑はサイドバーの下の方に移動させることで見栄えを保つことにした。