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過去ログ2

『○月×日、雨。両親が離婚した』


 中学二年生。楓の人生観に決定的な影響を与える事態が発生した。両親の離婚だった。


『○月×日、雨。今日二回目。両親が離婚した。原因は私。いつも私のことで言い争いしていた。教育方針の違い。私が馬鹿だからこんなことになってしまった』


『○月△日、曇り。私の親権はお母さんが持つことになった。お父さんは出て行った。養育費の心配はするな。勉強に専念しなさい。それだけ言っていなくなった。お父さんが欲しいのは優秀な子供だった。馬鹿な娘はいらなかった』


『○月□日、晴れ。お母さんと先生で三者面談。先生からの提案。離婚して親権をお母さんが持ったことで、私の苗字は変わっている。お母さんの旧性、瀬川だ。でも、学校では元の苗字で通すよう取りはからってくれるらしい。違う苗字を名乗ると、他の生徒に悟られる。波風を立てず、平穏な学校生活を送らせる事が私の為だと先生は言う。このような事例は他の生徒も行っている。瀬川の性は高校から名乗れば良い。心配はいらない。お母さんは泣いて先生に頭を下げた。私は死にたくなった』


『×月○日、曇り。何もかも、私がダメ人間であることが原因。私が優秀だったら、こんなことにならなかった。教育方針の違いなんて。私が馬鹿だからこんなことになった。私の馬鹿さ加減が全ての原因』




『×月×日、晴れ。東大に行くことにした。それでお父さんは戻ってくる』




『×月△日、晴れ。勉強頑張る。勉強勉強』


『×月□日、晴れ。勉強勉強。東大東大』


『△月△日、曇り。目が悪くなってしまった。眼鏡をかけて勉強勉強』



―――そして更に一年が経過した。



 楓、中学三年生。


『△月○日、晴れ。ヤバい。志望校ギリギリ。かなり背伸びしてる』


『△月×日、晴れ。先生もお母さんも志望校を下げろと言う。それは出来ない。あの学校に入らなければ東大の目が無くなる。妥協は許されない。私には東大以外に無い。東大だけが私の生きる意味』


『△月△日、晴れ。お母さんと大喧嘩。生まれて初めて喧嘩した。志望校を下げろって。それは出来ない。進学校でなければ東大生になれない。理由を聞かれたが、言えるわけが無い。行きたいから行きたいとだけ言ってゴリ押し。でも、これはお母さんの為なんだ。私が東大に合格すれば、お母さんは救われるんだ。お父さんも喜んでくれるんだ。私がやらなきゃいけないんだ』


『△月□日、晴れ。いよいよ試験。結局、滑り止めを受けなかった。これで落ちたら東大どころか中卒なんですが。冗談抜きで命懸かってきちゃってます。先生もクラスのみんなもドン引き。お母さんは泣いている。自分でも頭おかしいと思う。とにかく明日は試験です』


『□月○日、晴れ。試験受けてきた。出来たんだか、出来てないんだが……。それなりに出来てるかもしれないけど、周囲の子はもっと出来てるかもしれない。落ちたら私は中卒。お母さんは首吊るかも。相当頭おかしくなってる。合格発表まではお母さんが首吊らないようチェック』


『□月△日、ミラクルレインボー。受かりました! 補欠合格! 人生終わったかと思ったけど、最後の最後でまさか奇跡がッ! 神様が手を差し伸べてくれたようです。ありがとうございます! 神様~』


『□月×日、晴れ。今になって怖くなってしまった。落ちたらどうするつもりだったんだろう、私? 震えて夜が眠れません。外見も変。髪もボサボサ。鬼みたいになってる。これで高校生活はありえません。お祝いに美容院行こ』


『□月□日、晴れ。明日から高校生! 新しい制服に袖を通す。あれ? 何か私、胸が大きくなっているような気が……。何か恥ずかしい。胸が大きい子は頭が悪く見えるかも。ひっそりと胸が小さく見えるブラを着用。少し落ち着いた』

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