CG作り1
「バーチャルアイドルで一番大事なのはCGだ」
設定も決まったことだし、早速CG作りに取り掛かる。
「大抵のバーチャルアイドルは架空だけど、今回の場合はモデルがここにりう。メイプルリンクの場合は実在のネットアイドルであるメイプルが電脳の中に入っているという設定だ。早速瀬川さんをモデルにしたCGを」
「よし! 私、頑張るね! その為に来たんだから!」
「は?」
いきなり席から立ち上がった楓は一歩下がると背中を向けて両手を首元に持って行った。プチ、と音がする。どうやら第一ボタンを外したようだ。しかしそこで動きが止まってしまう。そこからクルッと振り向いて一度だけ確認した。
「ヌードになれば良いんだよね?」
「そんなわけでないだろッッッ!!!」
「きゃあッ!?」
ビックリして楓がベッドまで飛んでいった。
「そんなことしたら完全にアウト! 僕が捕まっちゃうよ!」
「でも、モデルって言ったら裸じゃない! 映画とかで見たもん!」
「タイタニックとか?」
「そう」
「あんなことやったら直球でアウトじゃないかッ! まあ、でも、本来はそういう意味じゃないんだ。ヨーロッパの神話をモチーフにした芸術には衣服を纏わないデザインのものが多いでしょ? ヴィーナスの誕生とか有名だよね?」
「それなら私も知ってる!」
「あの手の芸術には完全なる美の追究という崇高な目的がある。男であれば筋肉質で男らしい肉体、女性であればふくよかで母性に満ちあふれた肉体。神や天使といった完全な存在により近づくための探求という意味だ。人間の精神の理想を追い求めた芸術なんだ。だから一糸纏わぬ生まれたままの姿でいることは表現方法として必要不可欠なものであった。裸の意味が現代とは全然違うのッッッ!!!!!!」
「そうなんだ。私ったらてっきり。あはは」
「全くもう」
あのまま放っておいたらどこまで脱ぐつもりだったのだろうか? 間違いを誘発させようとしているとしか思えない。
「でも、やっぱり新条くんって絵画とかそういうの詳しいね」
「趣味だからね」
「なら、いつか新条くんが人間の精神の理想を追い求めた完全な芸術を創作する時もあるのかな?」
「い、今でもそういうのもやる時はあるよ。ネットには出してないけどね」
「それならそういう時はモデルは必要なんじゃない?」
「そ、その場合であれば、今とは話は別だ。芸術としての意味が違うからね」
「ちゃんと実物を見た方がしっかりした物が作れるよね? 誰にモデルをやって欲しいのかな?」
「そ、そういう時の為の資料となるものは書籍として存在しているから、必ずしも目の前にモデルが無くてもやりようはある」
「モデルして欲しい?」
「そういうことばかり言うのはこの口か! セロハンテープで蓋してやる!」
「きゃ~」