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メイプルのお礼

「今日はありがとう」

「どういたしまして」


 楓のアカウントは作り終わった。時刻はもう夕方だ。紫苑は楓を駅に送っていくことになった。住宅街の間を二人で歩いて行く。


「あのアカウント、大まかには出来上がったけど、細かい部分はまだあるかもしれないな。コメントが来るようになったらコメント欄の見栄えを変えたいとか、細かい需要は使っているうちに沸いてくると思う。その辺りは使いながら微調整だね」

「何だか悪い気がしちゃうな。紫苑くんばかりに頑張らせちゃってて」

「別に良いさ。僕はああいう作業は好きだから」

(……それに、瀬川さんの為だもんね)


 極限の集中力を発動すると、その反動でもの凄い疲労が襲ってくる。だが、楓の為に頑張った結果だと思うと、その疲労感も心地良いものだった。

 それに何より、今日一日で随分と距離が縮まった気がする。これなら両思いになってお付き合いするのも夢じゃないぞ。頑張って良かった!


「ここからは瀬川さんの頑張りが大事かな。ネットアイドルに限ったことじゃないけど、ブログってのは更新頻度が一番大事なんだよ。ネタが無くても毎日更新している方が人が集まってくる。何かやってるってだけで人は応援したくなるんだね」

「これで私が三日坊主になっちゃったら申し訳無いし。ちゃんと毎日更新する! だから紫苑君もちゃんと読んでね。私の一番最初のお気に入りユーザなんだから」

「もちろんさ♪」


 そうこうしているうちに駅前に着いた。紫苑の住んでいる住宅街は閑静だが、駅前ともなれば人通りも多いものである。


「それじゃ、また来週。学校でね。何か困ったらメールしてね」

「うん……」


 別れの言葉に返事をする楓だったが、どうも表情を曇らせてその場から動こうとしない。どうしたのかな、と思っていると……。


「やっぱり、私、紫苑君にお礼したいの!」

「お礼? ど、どんなお礼かな?」

「な、何が良いかな……?」


 お礼はしたいが、何をお礼にするかの案は無い。実に楓らしい。


「で、出来る事なら何でもしてあげるよ。何が良い?」

「何でも?」

「うん」

(……そ、それならッ!?)


『おっぱい触らせて!』


 と真っ先に思い浮かんだが、クズ過ぎるので流石に踏み留まった。


(……くそっ、男の本音なんてみんな分かってるだろ。なのに近頃はそれを公にすると白い目で見られる風潮だからな。生きづらい世の中だ!)


 紫苑の本音は既にアカウントバレで露見しているのだが、それでも好きな女の子の前では格好付けたいのが男という生き物なのだ。いつまでも返事を遅らせるわけにはいかない。悩んだ紫苑が出した答えは……。


「手……、手、繋いで貰える?」

「うん♪」


 これが一番良い線だろう。お礼なんかいらない、だと折角の楓の行為を台無しにしてしまう気がするし、かと言っておっぱいはありえない。楓の行為に甘えつつも、紳士的な範囲で、かつ自分の楓に対する行為が伝わる、そんな答えを選んだ。


 紫苑が左手を出すと、楓は両手でギュッと手を握ってくれた。


(……わぁ。スベスベだ)


 きっとハンドクリームも塗っているに違いない。楓の両手は絹のように細かやで肌触りが良かった。女の子の手ってこんなに気持ち良いんだ!


(……生きてて良かったぁ♪)


 もうおっぱいなんてすっかり頭から吹き飛んでいた。満足しきって油断している紫苑。と、その途端に楓は両手で紫苑の手を引っ張った。


「よいしょっと」

(……えっ!?)


 フラッとバランスを崩した紫苑は、楓の大きめの胸に正面からぶつかる。弾力に富んだムニュッとした感触が紫苑の胸板に広がった。そのまま楓は紫苑の首の後ろに腕を回し、、パンプスの先で背伸びして首を伸ばした。


 チュ~~~~。


(……ええっっっ!?!?!?)


 紫苑の口の中に甘い味が広がっていた。


「ペロペロ神、私とチュッチュしたいんだもんね。またね♪」


 楓は恥ずかしさを隠すように大慌てで手を振ると、駆け足で駅の改札に入って行ってしまった。


(……マ、マジでッッッ!?!?!?)


 女と言うのは、何するか分からない生き物だッ!

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