第五話 「立派になったな」
21時をオーバーしてしまいました。
本当に申し訳ありません。
データが一度飛んでしまい、急いで書き直したので文体も荒いかもしれません。
全員の話を聞き終わると、僕は疲労感から壁の近くの椅子に腰を下ろした。
流石に疲れた。全員の話を聞くのに三時間は優にかかってしまったし。
父の云う通り、僕と同じくらいの貴族の子はたくさんいて、それはとても僥倖だった。
尤も、全員僕よりは年上みたいだったけど。
座っている間に誰かが話しかけてくることはなく、皆は皆で思い思いに漫談し、パーティーを楽しんでくれているようだった。
うなだれたまましばらくいると、誰かが近づいてきたのがわかった。
「どうだ、エイリアス。パーティーは楽しめているか?」
声から、それが父であることがわかった。
座ったままでは失礼かと思い、立ち上がる。
「はい、お陰様でとても」
「ははは。遠慮することはないのだぞ。私も経験したことがあるからわかる。話を聞くのが大変で、それどころではないことくらいはな」
……見破られてる。まあ当然か。
「すいません」
「謝るほどのことでもない。お前に話を聞いてもらった貴族はみな嬉しそうにしていた。私も誇らしい」
そういわれると、少しうれしい。
生前から、人の話を聞くのには自信があった。以外と何にでも関心を持てる性格が幸いしたのかもしれない。
「父さんも僕と同じように、育てられたのですか?」
「その通りだ。ナインハイト家の当主に目されたものは全員通る道と言える。民と同じ生活をし、民と接し、民を知り。そうすることで民の求める執政を行う。私たちの責任は、王に次いで重いと言える。できることは、すべてやらねばならないのだ」
民を知り、民を想う。
それは、僕の国の衆議院の在り方に近い気がした。
「私達は、貴族だ。恵まれているかもしれないが、それは私たちが偉いからでは、決してない。民が我々を信頼し、懸命に働いてくれているからだ。ならばその期待を、思いを。間違っても裏切るわけにはいかないのだよ。民に幸せを、恵みを与える。民を悲しませるような結果にしないために。より良い政治を行い続けることが我々の使命だ。アーガス領は、その面において最も重大な場所なのだ。王国にとってもな」
王国は、平和な土地だ。
しかしその平和には、頭に比較的、という言葉が付く。
国内でも街を出て道を外れれば凶暴な動物はもちろん、蛮族だっている。
<騎士>や<冒険者>がいなければ、その数を抑えることもできない。
それに王国の東に接するメルコス平野。
蛮族と騎士が武力によって衝突しあい、今は拮抗しているが、万が一食い破られれば民は大勢死ぬ。
そうさせないためにも、執政は絶対にしくじれない。
メルコス平野に接している、王国で最も東にある領はほかでもない、アーガス領なのだから。
父がちらりと壁にかかった時計を見た。
僕もつられてそちらを視ると、時刻はもう夜になっている。
「……もう、このような時間か。結局私も長々と話をしてしまったな」
「いえ、大変ためになるお話でした」
「そうか。皆が笑顔だった理由がわかる。──立派になったな、エイリアス」
父が僕の頭を撫でた。
少しだけ、誇らしい気持ちになった。
父が階段を上ると、皆の視線が壇上に集まった。
「皆様、本日は遠いなか、我が息子を祝うために足を運んでいただきありがとうございます。もう夜も遅い。誠に名残惜しく思いますが、本日のパーティーはここまでとさせていただきます。皆様、お楽しみいただけたでしょうか」
わっと拍手が起きた。
それを受けた父が、笑顔で続ける。
「大変嬉しく思います。では、皆様、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください」
再度鳴る拍手と、深く礼をする父。
僕はそれを見て、誇らしく思えた。
──音もなく、ドアが開いた。
奇妙な違和感。恐怖感。威圧感がどうしてかにじみ出ている。
理由は、明白だった。
そこに、得体のしれない長身の男が拍手をしながら佇んでいたからだ。