表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/87

第十話 「決戦」

「さぁお待ちかね! 新人杯(ビギナーカップ)最終戦が始まるぞぉぉぉ!! 先ずは選手の入場だぁぁぁぁぁ!!」


 おおおおおおおおぉぉぉ!!!

 相変わらずの、競技場を揺さぶるほどの歓声。

 格子戸を抜ける前から体がビリビリと呼応する。


「北コーナー!!! 文句なし新人杯最強の個人!! エイリアス・シーダン・ナインハイトぉぉぉぉぉ!! 圧倒的パワーと華麗な剣技、風の様なスピードと鋭い機転で敵を翻弄する!! 今回もアッサリと勝負を決めてしまうのかぁぁぁ!!?」


 格子戸を開けて入場する。

 軽く手を振って歓声に応え、正面を見据える。

 集中力を研ぎ澄ます。

 それが損なわれて、勝てる相手ではない。


「南コーナー!! アヤト・ドウジマ!! カムイ・アラタ!! ナナ・ユキムラの三人だぁぁぁ!! 全くの無名! 前情報はゼロの三人だが、その実力は本物!! これまで二戦をあっという間に、それも何をしたかも解らせず完封!! ここまで快調に飛ばすエイリアスを打倒し得るかぁぁぁ!!?」


 更に歓声。

 向かいの格子戸から、あの三人が現れる。

 ナナさんは、相変わらずビクビクしているけれど、アヤトさんはこちらに手を振って、カムイさんは柔らかく微笑んでお辞儀をした。

 なんとなく気が抜ける思いだが、雑念を振り払う。


「さぁぁぁぁ、最終戦!!! ここまで双方無傷で抜けて来ています!! ファーストアタックはどちらの手に!! そして勝利の女神はどちらに微笑むのかぁぁぁぁ!!!!」


 ──まず、色は不要だ。

 集中。視界からあらゆる色彩が消え、その分の能力を全て他の集中に掛ける。


 聴覚。触覚。動体視力。反射神経。

 全てが鋭敏に、より強力に感じられる。

 世界はゆっくりと動き、まるで全てが粘性の液体の中に堕ちたようだ。



「試合ッ──!!」

 

 前傾。

 脚に力を込め、暴発しそうなそれをなんとか押し留める。


 ──準備は、完了だ。


「──開始ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 脚に込めた力を一気に解放。

 その全てが推進力となり、視線に捉えた三人へと僕を突き動かす。

 一対一なら負けないだろうが、今はこの人数差。

 長期戦になる前に速攻で一人を仕留める──!!


 瞬間。

 ぞわり(・・・)と背筋が凍った。


 ──何か(・・)、来るっ!!


 目の前の三人は微動だにしていない。

 だが、冴え渡った直感は、頭で理解するよりも遥かに早く本能で警鐘を鳴らす──!!


 姿勢を敢えて崩し、前傾故下がっていた頭を更に下げる。

 頭上を、背後から黒鉄の刃が通り過ぎた。


 そのまま頭を抱えるように内側に、手を地面について飛び込み前転の要領で、しかし身体を投げ出さず前方に跳ぶ。


 そのまま背後に視線を向けると、そこに立っていたのはカムイさんだった。


 あり得ない(・・・・・)

 この人はついさっき──どころか。直感が警鐘を鳴らして尚、まだ間違いなく前方にいた筈なのだから。


 ──解らないことを精査している場合じゃない!!


 見れば、脚が止まりかけ、エネルギーは消えかかっている。

 先の前転でより距離を稼ぐ為、エネルギーを利用してより強く地面を突いていたのだ。


 つまり、アヤトさんとの距離は相応に縮んでしまっている──!!


 鞘から剣を振り抜き、カムイさんに背を向けてアヤトさんに向き直る。


 すると、アヤトさんが()を上段に構え、今にも振り抜かんとしていた。


 ──成る程、強敵だ……!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ