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第八話 「二回戦」

 歓声を背に受けながら、速足で通路を歩く。


「ガルマ」

「は、こちらに」


 歩きながらそう呼ぶと、ガルマはいつの間にか隣にいる。


「控室には戻らない。汗を拭きたいから布をもらえるかな」

「承知致しました」


 布を受け取って汗を拭く。

 スムーズに勝てはしたが、緊張感からか体力の消費が思いのほか著しい。


「観戦席に行く。入場券は…………」

「既に、確保しております」


 そんなことだろうと思った。

 僕がどれだけ唐突に何を頼んでも、彼が用意できなかった……いや、既に用意していなかったことが、ない。

 規模が大きいだけあって、それなりに倍率が高いはずなのだが、彼には関係がなかったらしい。

 出場者も敵の情報を得るためにチケットを取りたがるが、当然上手く行くことの方が少ない。

 僕の目的はもちろん、偵察(それ)だ。


「うーん、流石だなぁ」

「光栄の至り」


 僕が苦笑しつつ褒めると、ガルマは小さく頭を下げた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



「アヤトさんの試合は…………たしかあの人たちは『412』だったから……!」


 慌てて情報を探す。

 コロシアムには競技場をが八つもあるが、試合数も多いのでテンポをよくするために空いたところでどんどん試合をやっていく。

 あらかじめ何処で誰がやっているか、と言うのはわからない。常連は見たい選手が闘う場所を予想して、席を先に取っておくなどすることもあるが。

 公式で出された掲示板の試合情報を見るか、スター選手の試合なら噂の方が伝播が早い場合もある。

 掲示板の前には人が群がっていて、どうにも見るには時間がかかりそうだ。

 

 まずい。モタモタしていると試合が終わりかねない。

 団体戦には出場者数が少ないのが仇になって、試合が後ろの方のはずのアヤトさんたちですら僕と大分近いのだ。


「聞いたかよ、五番競技場に『火の国』出身者が出たって話──」

「ああ、聞いた聞いた。黒髪、黒目の三人組だろ? 実力者だろうからチェックしとこうと思ってたんだけど、エイリアスも見たいからそっちの席を──」


 それだ!!

 聞き耳を立てるのをやめる。

 僕は五番競技場めがけて走り出した──!!



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 


 暗い階段を駆け上がる。

 歓声。歓声。歓声。歓声。

 曖昧な実況の声に熱がこもっている。

 盛り上がりは最高潮に達しているだろう。


 ──間に合うか!?


 差し込む光の元へ飛び込む。

 開ける視界。

 明瞭になる実況。


「────試合、終了ぉぉぉぉぉぉぉ!! 優勝候補、アルバーニュ傭兵団を瞬殺ぅぅぅ!!! 何が起きたかわからない!! 言えることは一つ、この三人組は強い!! 優勝候補がどんどんなぎ倒されていくぞ、この大会!! 最後に微笑むのは誰だぁぁぁぁぁ!!!」


 ──遅かった!!!


 壁を殴る。

 何も見られなかったというのは、あまりに大きすぎる失態だった。


 あの三人組が、自分の最大の敵になるだろうという確信していた。

 だからこそ、手の内を一つでも明かしておきたかったのだ。


 僕は彼らがにこやかに歓声に応えて手を振っているのを見て、それから踵を返した。

 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 試合開始の合図とともに飛来する炎球。

 それを地面に転がってかろうじて避けると、今度は氷の槍が襲来する。

 鞘から抜かずに剣を振るい、空中で悉くを打ち落とす。

 体勢を整える前に、目の前には可視化するほどに圧縮された空気の刃が迫っている──!!


「おっと、これはエイリアス近づけない! ガーダット魔法塾の三人の魔法連携に足が出ない!! これは厄介だぁぁぁ!!」


 即座に頭にイメージを作り出す。

 速度を持って空気を切り裂き進む刃。

 イメージ(それ)を言の葉に乗せて吐き出し、現実に顕現させる!


「【切り裂く風アルドゥエッタ・シュヴァイン】!!」


 瞬間。

 イメージ通りの現象(やいば)が眼前から飛び出し、迫っていた空気の刃と激突、対消滅する。


 反魔法(アンチマジック)

 一~二節詠唱の魔法を咄嗟に唱え、相手の魔法に衝突させ回避する技術だ。

 高等技術だが、出来るように訓練したのでこれくらいは何のことはない。


 瞬時に体勢を立て直す。

 油断からか、追撃はまだ来ていない。

 三人は慌てて詠唱をし始める。


 疾走。

 距離はみるみると縮まる。

 走りながら鞘から剣を抜きさり、鞘を捨てて加速する。


 次に魔法が出るよりも早く、僕は三人を一掃した。

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