第?話 「あと、十年」
「いだああああああああああああああああっはっははははあああああ!!!」
絶叫。絶叫。絶叫。
その場で跳ねまわり、もんどりうつ男。
嗤いながら、唾液をまき散らしながら転がるその様相は、誰から見ても異常であった。
「ぎもぢいいいいいいいいぃぃぃぃ………………なんだ? なんだなんだ、あれ?」
えへ、えへ、と。
聞くものが不快感を覚えるような歓喜の声を漏らす。
「あああああああぁぁぁぁぁぁ……でも、駄目だ。駄目だなあ……肝心の”種”が芽も出してないよぉ…………」
親指の爪をガリガリと噛み砕く。
血が出るが、それすら彼には快楽に過ぎなかった。
「あと、十年ってところかな。全く、面白いなぁ。愉しいなぁ。嬉しいよ、私は」
光も差さない暗闇の中で、ナニカが蠢く。
彼の嗤いに呼応するように、虫が這うような気配がある。
「さて、今日だけで人形が二つも潰れてしまったけれど……まあ、新鮮な素体もいくつか手に入ったことだし」
ガチリ、と。
ペンチ。ハンマー。釘。ねじ。歯車。ピン。
多種多様な工具を次々と手にする。
散らかった台の上に、年若い男女が幾人か、首と胴体が分かれた状態で眠っていた。
「さあ、新しい『私』を創ろうか────」
──【魔人】【傀儡王】【天使の塵】。
いつかそう呼ばれることになる男は、自分の工房で静かに舌なめずりをした。