第6話:一撃
アクション!
初めての冒険、初めての対人、出会った仲間、闘いの師匠と呼べる人物、色々思い出していた。
あれから3年かぁ、ハマりにハマったゲーム…俺は対人専門施設での世界ランキング2位まで昇っていた。
満足はしていなかった。称号は闘神。獲得条件は苦労するが申し分無いステータスボーナスも付いてくる。だけど゛最強゛じゃ無い、最強は存在する。ランキング1位、そして俺の師匠。
今日はそんな最強に挑む記念すべき日だった。
所属ギルドのメンバーから金策に誘われては居たが今日ばっかりは無理だ。自分でも興奮を押さえられないのが分かる。強い奴と闘うのが好きだった。勝ったとき仲間が称えてくれるのが嬉しかった。アドレナリンが出て気分が昂るのも悪くなかった。現実では喧嘩なんかしたこと無い。こんな平和な世の中でそんなもの意味が無い。ゲームで強くてもしょうがない、なんて言う奴も居る。俺だって所詮ゲーム、と思う。
それでも俺は最強になりたかった。自慢出来る程頭が良いわけでも無い、自慢出来る程容姿が良いわけでも無い、自慢出来る程ゲームが上手い訳でも無い。
でも自信はあった。ちっぽけだけど対人に置いて誇りもある。
只勝つのみ、ではなく魅せるプレイを心掛けた。攻略サイトには俺の考えたコンボレシピなんかも載っている。仲間が嬉しそうにさっきの読み凄かった、あの場面から勝つかね、等自慢するように他の冒険者に語っているのが恥ずかしいようであり、単純に嬉しかった。
だから闘おう、ちっぽけな誇りと大きな仲間達の誇りを秘めて。全力で、最強に挑もう。
「GVR起動゛闘争者達の宴゛接続開始」
ブウゥン、起動音と共にいつもの光景へ。電子記号が流れる。
「確か…アリーナ前でログアウトしたよな…すぐ準備するかぁ」
なんてのんびり考えている間に視界が白くなる。
そして。
真っ白な空間に俺は立っていた。
「新イベ?いや、んーでも告知とか無かったし…」
自然と独り言になる。
「バグかぁ?」
その時、目の前に白く輝く粒子が出現。それらは纏り始めると見覚えのある、だが初めて見る怪物へと姿を変えた。
それは瞬く間に巨大化。一目でドラゴンと理解出来る姿へと形成される。だが、余りにも雑な作りだった。
色は真っ白。輝きも光沢もなく、鱗には凹凸も無い。ドラゴンの形をしたモノに黒線で目と鱗を描き、羽や爪や牙を縁取ったモノ。そしてなにより…
「荒い…」
一昔、いや、二昔前のと思うくらいの荒いポリゴンで作られたドラゴン。これでもかと謂うくらいにTHEポリゴン。
そのドラゴンが咆哮を上げる。
「ガオオオオオオ!」
「いつの時代だよ!」
思わず叫びながら通常状態を解除する。
「ガオオオオオオって!ガオオオオオオって!」
゛闘争者達の宴゛に置いて装備品、何気ない風景、1つ1つの特殊発光、その全てが美しかった。中でも冒険者の敵となるモンスター達は圧巻、確かにそこに存在するというほどのリアル感。
それらとはかけ離れた欠陥品が今、自分に襲い掛かってきている。
「バグかウィルスか…どっちでも良い、ぶっ潰す!」
どのくらいの危険示唆が分からない。が、
「前哨戦、軽く全力と行きますかぁ!」
瞬時に覚醒を選択、【解放】発動。向上系特有の力が溢れる感覚。
【臨界集中】右手に全てを破壊するであろう力の奔流。そして奥義と呼ばれる必殺技をコマンド入力。全てが流れるようにドラゴンの胸の辺りに右手が触れる。
「神塵」
シンッ…音が無くなる。瞬間、規格外のエネルギーを帯びた青白い閃光が竜を貫く。ただいま、とでも言うように有るべき場所に還って来た轟音が真っ白な空間を埋める。
竜は、ドラゴンだったものは光の粒子と共に消失していた。
「よっわ…」
何も得られないままセイラはその真っ白な空間を歩き出す。
アクション部分の精進を心掛けて行きたいです