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広い円型のリング、コロッセオを思わせる場所に人々が溢れかえっていた。
中央には均された土の開けた場所、そこを囲う様に階段状の席が並ぶ。中央の上空には青白いモニターの様な物が立体的に浮かぶ。席は満席で熱気が伝わる。ガヤガヤと少し騒がしいが皆が皆待ちきれない様に落ち着きが無い。すると他とは異なる来賓席の様な場所から女性の興奮した声が上がる。
「皆様お待たせしました!これより゛闘争者達の宴゛内に置ける…最大の対人大会!唯一への挑戦券を懸けたチャレンジカップの準決勝を行いたいと思います!!」
「「「「ウオオオオオオォ!!!」」」
異様な興奮と熱気が場を包む。
「それでは登場していただきましょう!まずはワールドランク二位!血盟名[魅鬼]の副盟主!対人では不遇とされる刀の使い手!その最高峰の実力者!知らない者は居ないでしょう!カガリ選手の入場です!」
再び怒号と歓声が上がり、龍の装飾が美しい門から男が表れる。
首まで届く黒髪は顔の右半分を隠しており、分け目から半分は左耳に掛けている。切れ長の目、瞳の色は緑だ。茶色のズボンを履いており深翠のコートを羽織った男の腰には青い鞘に収まった刀が見える。
歓声が収まらない中、女性が続ける。
「そしてそんな現行二位に挑む、勇気ある者の名は!現行三位!所属レギオンは無し!馴れ合い等不要とでも言うのか!こちらも不遇と言われる格闘で参戦!セイラ選手です!!」
歓声と拍手が沸き、場のボルテージが上がる中、虎の装飾が美しい門から男が表れる。
耳に掛かる程度の黒髪、流行りの顔では無いが顔立ちは悪くない。黒い瞳に闘志が灯る。黒いタンクトップは喉元も覆い、白いベスト型の胸当てには美しい模様が刻まれている。同じ色合いのズボンの腰からはコートの様に美しい布がヒラヒラと広がる。
中央で対峙する両者、カガリが口を開く。
「久しぶりだね、元気にしてたかい?」
「余裕ですね」
「一応、君より上だからね」
「今日で終わりにします…いや、終わりにしてやるよ」
ニイィっと両者の口が歪んだ様に感じた時
「それでは!互いの誇りを賭けて!バトル!」
同時に飛び出し中央で激突、セイラの拳をカガリが鞘で受け止める。同時に弾かれるとセイラが一瞬輝き、右拳、左拳、右足で連撃を放つ。キン、キン、キンっと音が聞こえセイラが少し後ろに擦れた。カガリが腰に携えた鞘には刀が収まったままだ。
「人のWSを通常で弾くかね…」
呆れた様にセイラが呟く。
「フフ…まぁ最高峰らしいからね?」
カガリが前に踏み込み、キン、キン、キンと音だけが聞こえる。
そしてセイラからは三回の斬り傷、そこへ一瞬輝いたカガリがもう1歩踏み込む。セイラの後ろに刀を抜いたカガリが立っていた。刀を鞘に収め、キンッと音がする。
ズシュンッとセイラから大きな血飛沫が上がる。
「流石二位…んじゃ準備運動終わりって事で…闘神術!」
「お互い本気で…楽しもう…!刀神術」
「「「ウオオオオオオォ!」」」
歓声が上がる。闘いを愛し他と競い争う者達の歓声が。