4話『強い』
あの後、アオスの死体をサターテは自分の魔力で別の空間に隠した。
しかし、マアリの妹ディビーにとって自分は敵なので他の仲間と一緒に殺しに来るのではと考えていた。
「まずいなあ、このままだとマアリの妹とその仲間まで殺しかねないぞ、どうしよ、このままマアリとの恋愛フラグまで潰れるとか嫌なんだが、どうしようか」
マアリから借りた布団の中でサターテは転がりながら唸っていた。
そして次の日
マアリは朝早くに仕事に出かけていた。
サターテに朝食が用意されていた。
そこに紙があり、ちゃんと食べてね! と書いていた。
「おっおう、結構量あるな……」
そこにはごはん山盛りと目玉焼きとウインナーと納豆と野菜があった。
「俺いつも朝はコーヒーのみだからな、その後徹夜でゲームするかとかで今日も寝るのは1週間ぶりだな、久しぶりに寝たら結構スッキリしたぜ、人間は毎日寝てるやつもいれば3日寝ないやつもいるしな、まあその間ゲームのレベルと腕も上がって優越感に浸れるけど、さて朝食にするかな、そのあとネトゲでもするか!」
そして、サターテはマアリが用意した朝食を食べてネトゲをしようとした。
が、
「えっ、嘘でしょパソコンがない! こいつどうやって生きているんだ! なかったら死ぬぞ!」
とサターテの顔は青ざめた。
すると、
ピーンポーン
チャイムの音がした。
「うん? 誰だ、誰か来たのか?」
そう思い扉を開けるとそこには金髪のセミロングの髪で碧い眼をしていた女が立っていた。
「えっと、誰でしょうか?」
「私は、マアリ・ガーレの妹のディビー・ガーレっていうの、お姉ちゃんは今仕事かな?」
「あっはいそうですけど……え」
サターテは震えてた
(まずいまずいまずいまずいまずいまずい、まさか次の日に来てしまうとは、びっくりするほどの速さ、てか外国に住んでんじゃないのかよ、なんだよこの現実の設定をガン無視したような速さ、おかしいだろ!)
「安心して、別に殺しにきたんじゃないから、ここで立ち話もあれだから早く入れてくれると嬉しいんだけど」
「っ! あっはい分かりました」
そうして、サターテは部屋に案内した。
「どうぞ、お茶です、お姉さんからここのお茶を飲むようにと言われていたのでこちらでよければ」
「ありがとう」
そしてサターテはディビーと向かい合って座った。
「えっと、殺そうとしてないって言ってたけど、一応俺事故ではあるが君の敵だと思うがいいのか?」
「まあ確かに事故とはいえ殺したのは君だけどだからと言って、アオスがあなたをいきなり殺そうとしたのは間違ってると私は確信している、たしかに君はサタンの息子で危険な悪魔なのは分かる、だけど間違ってることは間違ってるって言い合うのが私とアオスのやり方なのお互い遠慮なく意見が言えるって素敵だと思うしね」
「はあ良かったあ~、もし襲ってきたら誤って殺しちゃうかもだから結構不安だったんだよー、それに一人で来たからもしかして、こいつは私の獲物だとか、本当は仲間がどこかで見ていて俺が安心したところで襲うのかと思ったよ、違うよね?」
「大丈夫だから、あんた悪魔なんだから心とか読めるんじゃないの? 私が倒してきた悪魔たちは普通にそれ使って戦ってたみたいだし、まあなんか本当に読めてるのか分からない動きしてたけど」
「いや心読めるのは上級悪魔だけだぜ、多分お前らに嘘言って動揺を誘っただけだと思うぞそれ」
「ああやっぱり、なんか読めてるにしては私たちの攻撃が普通に届くと思ったよ、ただたまに上手く避けるから本当に読めるのかと思ったよ」
「まあ、運良く当たんなかっただけだろうな、まあ心読んでいいなら読むわ」
サターテは心を読んでディビーが本当のことを言っているのかを確かめた。
「確かに嘘はついてないようだな、良かった~」
「てか不意を打ってもアオスは君を倒せなかったんだから君には不意打ちは通じないでしょ、そんなことで死人を出す方がバカのすることだよ、でも一つだけ教えてアオスはエクソシストの中でもトップの実力なの、なのになんで抗戦でなくて反射的に殺したの? あなたたち上級悪魔は私たちとどれほどの力の差があるの? 今後のために聞いておきたいの」
「え、いいよ」
「いいの!」
「うん、だって殺せるわけないし、それに知ってた方がお互いにとっていいかなと思うし、それに君は俺を殺さないと言ってくれたから逆に安心できる」
「そう、ありがとう」
ディビーは笑いながら言った。
「さて、まあこの家に一応ハエが入り込んでたみたいだからそれを見ててみそ」
「うん、そのハエだよね?」
「いくよ」
するとサターテが近付いてハエはいきなり破裂し粉々になった。
「……え、まさか魔力を使って殺したの?」
「いや、手で払っただけだよ」
「うそ! だってて動いてなかったじゃない」
「いや、俺が上級悪魔だってこと忘れてる? そんなん人間の視覚で追えるわけないじゃん、聖剣もって力を引き上げても上級悪魔と戦うなんて勝負にすらならないぞ」
「マジで!」
「マジマジ、そもそも人間じゃ聖剣で自分の力を引き上げるだけで聖剣本来の力を出し切ることはないよ、あんなのほとんど神と天使が人間に奇跡だとか言ってほとんど悪ふざけで落としたものだと思うぜ。そりゃ人間が人間と戦えば普通の剣より強く作られてるんだから勝てるよ、悪魔倒せても中級の下の悪魔ぐらいだぜ、確かに聖剣を使ったら俺らの命がやばいから俺たちも本能的に攻撃するけど、まあお前らの知らない世界だってあるってことだよ」
「なんかそれを聞いてすごく自分が弱いと思ったよ、なに私たち結構強い悪魔倒したと思ってたけど、中の下の悪魔だったの? 前に戦った悪魔が強くて仲間が何人も殺されて何とか倒したんだけど名前がベルーラとか言ったやつだけどあいつはなんなの?」
「え、あの坊主死んだの? マジで?」
「え?」
「え、ああまあ下級にしては上の方だけど、まあ強いッちゃ強いよ下級の中じゃ」
「え? あれ下級悪魔なの、私たちかなりヒイ、ヒイ言ってやっと倒せたのに下級……マジか」
ディビーはかなり落ち込んだ。
「まあ、確かあいつ俺より年下で、俺の友達がパシリに使ってたことでついにキレて、人間界で強くなって見返してやるって言ってたけどああまあ死んだのか、俺がまだ魔界にいたら賭け金もらえたと思うと何もったいないなあ」
「賭けてたのかよ! しかも死ぬ方に!」
「え、うん」
「……はあ」
「もうちょっと早く知ってればなあ」
「せめて励ましてよ」
「でもこれで分かったろ、人間じゃあ上級に勝てないってことだ」
「ええ……まあ」
ディビーはサターテが励ます気がないこと悟り無理やり納得することにした。
「でも気になるんだよなあ、なんで聖剣が近付いていたのに気付かなかったんだろう、初めて人間界に来て魔力がないことでの影響かな?」
「いや、アオスは悪魔を感知する能力が優れているうえに、聖剣から溢れる力を一時的に消すことが出来るんだよ、それに自分の殺気も完全に抑えることが出来るからそれで気づかなかったんじゃない?」
「それでか、てかそいつがいればあいつぐらいすぐ殺せたんじゃないの?」
サターテはさすがに疑問に思った。
「その時あいつ他の仕事請け負ってたから、確かナルーラルーラとかいうやつかな、もしかしてそいつも下級?」
「ああ、いや確かあいつは中級の中ぐらいだぜ、てかすげえな、人間でそいつ殺せるとか聖剣があったとしてもかなり強いんじゃね? まあ人間にしてはだけど」
「なんかあいつだけは本当に凄かったんだな」
ディビーは自分の婚約者がすごいと改めて感じた。
「まあ逆に人間として優秀すぎてこんな結果になっちまったんだろうな」
サターテもさすがに哀れんだ。
「確かに、あんたサタンの息子だしその魔力のせいで逆に不意を打ってでも殺さないと判断したんだろうね」
「ま、最後の最後に殺気と聖剣の力が出てバレてしまったところからやつも結局人間ってことだからな、仕方ないか、俺これでも子供の中じゃ2番目に強いし、たとえダメ悪魔でも危険であることには変わりなかったんだろうな」
「そうだね、そう思うとあんたを殺せるのって誰くらいなの?」
「神様ぐらいじゃね? もしくは一番強い666番目の兄弟とサタンの親父、天使でも兄弟の中で24番目に強いやつしか殺せなかったし」
「24番目に強いやつ殺されたの!」
ディビーはびっくりしたように聞いた。
「うん、まあそうだね、24番より弱いやつは戦ってないから死んでないけど、23番目に強い兄弟は普通に天使殺したよ」
「そっそうなんだ」
「まあ、それ以来お互い干渉しないようになって神様も悪魔もお互い殺し合わないようになったんだけど、まあそれに人間は含まれてなかったからね、まあそういうことだから俺が死ぬことはない」
「わかった、そういうことね、後あんたは魔界から追い出されて人間界に来たって聞いたけど、本当に人間界を滅ぼそうとしたり、人間に危害を加えようとは思わないわよね?」
ディビーは念入りに聞いた。
「大丈夫だよ、人間と契約することはあるけど、危害は加えたりしないから、契約の場合お互い同意した上でのことだからいいよね」
「ええ、それなら別にいいよ、それに悪魔を倒すために悪魔と契約するエクソシストだっているくらいだし」
「それも変な話だよな、いや変ではないか、自分のことしか考えてないやつならあり得るか」
「君も相当だけどね」
ディビーは呆れるように言った。
「照れるな」
「褒めてない」
そういうやり取りをしているうちにサターテは気になったことを聞いた。
「そういや俺を殺しにきたアオスってどんな奴なの?」
と聞いた。
「良い奴だよ、優しくて、必ず約束を守ろうとする奴で、その時にどのように行動するべきかが変わる奴だったよ、ホント良い奴だったよ……何で、何で帰って来るって言ってたのに約束破ったんだよ! どうして、約束したのにいいいいい! うわああああああああああああああ!」
ディビーはアオスとの最後のやり取りを思い出し泣き出した。
「……」
(殺した俺が慰めるのは、違う気がする、だったら見てやることしかできないよな、やっぱり)
サターテは何も言わずただディビーが泣いているのを見ているだけしか出来なかった。
数分後
ディビーは泣き止んだ。
「少しは落ち着いたか?」
「うん」
すると
グウウウウウウウウウ
「腹減った、飯おごるから行こう」
とディビーは言った。
(さっきワンワン泣いてたのに、切り替え早いな、女って強いんだな)