3話『やってもたああああ!』
とある教会で男は剣を装備していた。
男の持っている剣は名をエクスカリバーという聖剣の一つである。
男は教会を出ようとしたとき
「どこへ行くの?」
一人の女が話しかけてきた。
女は金髪のセミロングの髪で碧い眼をしていた女であった。
「すまない、急遽しないといけないことが出来た」
「急遽ってもしかして悪魔を倒しに行くの? 私もあなたと同じエクソシストよ、私も聖剣を持って一緒に行くわ」
女は男に言った。
「いや、今度の悪魔は手ごわい、だから俺一人で行く、仲間と協力するのも大切だが、二人で行って勘付かれたら、二人とも何もしないで殺される。だから、私一人で行ってそのリスクを無くしておきたい、だから一緒に来てはダメだ」
「もしかして、死ぬ気!」
「絶対に死なない! 必ず帰るから!」
「でも!」
「大丈夫、危ないと思ったら、すぐに帰って報告に戻るつもりだから、危険は冒さないよ」
「本当でしょうね、嘘じゃないわよね」
「嘘じゃないよ」
「はあ……わかったわよ、でも、絶対に帰ってきてね! お願いだから!」
「ああ、分かってるよ」
こうして、男と女はキスを交わし、男は教会を出た。
サターテside
結局サターテはマアリの家に居候することになった。
「いやあすまないね、俺が住むとこないから居候させてもらえるなんて、いやあめっさテンション上がるわあ、絶対恥ずかしいこと言わしてやる!」
「? いったい何を言ってるのかわかりませんが、私は構いませんよ、一緒に生活するなんて妹が海外へ行く前以来だから、海外に行ってからたまにしか会えないし、寂しかったの、だから遠慮せずに暮らしてくれてもいいのよ!」
「マジか! いやあ、ありがとうね! 本当にありがとね!」
(悪魔サターテ女と一つ屋根の下で過ごす日が来るとは、なんてリア充、今からワクワクが止まらないぜ、とにかくこれからどんどんとパラメーターを上げて行って恋愛モードへ突入させるぜ!)
サターテはそんなことを思いながらマアリについて行った。
「すみません、買い物をしてから帰るつもりだったんで付き合ってもらってもいいですか?」
「おう、いいぜ!」
(フッ、まるでデートみたいだぜ!)
そう思いながらサターテは買い物を手伝った。
「そういえば、サターテさんはどうして魔界を追い出されたんですか?」
「えっ、童貞だからだがどうしてだ?」
「え……! どういうことですか?」
「親父が拉致してくる女を抱かずにコスプレさせて写真で納めてるだけだから呆れられちゃってさあ、酷くない! 俺無理やりプレイは親父や兄貴、弟のを見過ぎたせいで興味失せたって言うのにさあ、クソしょうもない理由で追い出すとかさ、引くわあ、マジ引くわあ、それで魔界から投げられて人間界に着いたってとこかな」
「そっそんな理由で子どもを捨てるなんて酷すぎます! 実の子ですのにあんまりです」
マアリは悲しいそうな顔で言った。
「でしょ~! 俺可哀そうな悪魔なんだよねえ! だから愛情に飢えてんだよ! ねえお姉さん俺を一杯甘やかしておくれ、膝枕をしたり一緒にお風呂入っておくれよ~」
「膝枕はいいんですけど、お風呂は銭湯ですので、サターテさんは男風呂ですよ」
「え……っ! まあいいか野郎の風呂に入るのか、うんまあいいかそれで、膝枕はあるし別にいいか、うん別にいいよな」
サターテは少しがっかりした。
「どうしたの? 少し落ち込んでるみたいですけど、何か嫌なことでも思い出しましたか?」
「いえ、クソしょうもないことでがっかりしたなと思ってね」
「……そうなんですか、何かありましたらいつでも相談に乗りますよ」
「あっはい、ありがとうございます」
サターテは腑に落ちない感じでお礼を言った。
「そういえばサターテさんは人間界初めてですか?」
「そういや、20年前に言って以来かな?」
「20年前って私がまだ4歳の頃ですか? ずいぶん長いこと人間界に言ってなかったんですね」
「アニメグッズとかは、親父の部下に買って貰ってたからな、俺があまり出ることはなかったんだよ、昔は契約のために出たこともあったんだけど、思ったよりやる気でなくて1人か2人ぐらいとかしか契約してないし、まあ俺ほど無害な悪魔はいないんじゃないかと思ったくらいだ」
「契約って?」
「聞いたことぐらいはあるんじゃないかな? 魂の契約を悪魔がするって、俺ら悪魔の中では契約は死んだあと魂を魔界に送って自分の部下にすることなんだよ、まあ俺の契約者はまだ死んでないみたいだけどね?」
「そっそうなんですね、悪魔って普通どれくらいの契約を持つんですか?」
「まあ、上級悪魔だけが契約できるんだけど、1年で100人と契約するくらいが普通らしい、俺は違うけど」
「そっそうでしたか、悪魔にも色々あるんですね」
「引くなよ、そういうもんなんだから、てか俺の話よりお姉さんの話を聞きたいぜ妹がいるときたが、両親はどうなんだ? お姉さんと同じく忌々しい神の信徒なの? あっ、忌々しいは俺たち悪魔にとってはなんだからいちいち気にしないでね」
「父と母は、幼馴染らしくて結婚を約束するくらい仲が良かったらしいんですけど、親や親戚が認めてくれなかったみたいで当時好きだった日本に移り住んで結婚したそうです。私と妹が生まれて楽しく暮らしてたのですが、妹が物心つく前に交通事故で死にました。両親の親や親戚は引き取ってもらえなかった為、児童養護施設で妹と暮らしていました。そしてその児童養護施設でキリスト教の神様を信じるようになったのです」
マアリは懐かしそうに思いながら言った。
「ほへえ、色々あるんだね、すげえよくありそうな思い設定過ぎるが……、そういや仕事って何やってるの?」
「妹はエクソシストをやっていて、私は妹とはぐれたときたまたま通りかかった女の人に助けてもらって、その人が楽しそうに幼稚園の子ども達といるのを見て憧れて、幼稚園の先生を今はやっています!」
マアリは楽しそうに答えるが
「おっおう、幼稚園の先生はいいけど、えっ待って妹さんエクソシストやってんの、えっ何俺殺そうとしてたの、めっさこえええんだけど」
とビクビクしながらサターテは聞いた。
「いっいえ、そういうわけではありません、ごめんなさい怖がらせるようなことを言って、大丈夫です、妹が帰ってきたときあなたが殺されないようにするため、今日一応話すつもりなんですがもしあなたを殺すになってもあなたを逃がそうと思っております、それに妹は結構融通が利きますので、私にエクソシストと言う極秘の職業もばれなきゃ大丈夫っと言って教えてくれましたし」
「うっうん分かった、まあそれならいいかな、面白い妹さんだな、まあ人間に俺を殺すのは無理だけど、俺これでも強い悪魔だしいざってときは、手加減できないし」
(もし嘘なら心読んだとき分かるし大丈夫かな)
サターテはマアリの心を読んでいたので嘘ではないことは分かっていた。
「ごめんなさい驚かせてしまったみたいで」
「ホントだぞ、もし俺のような紳士的な悪魔でなければ殺されてたぞ、口は災いの下だから気をつけろよ」
「はい、気を付けます」
そうこうしてるうちに買い物も終了マアリの住んでいるマンションに到着した。
「じゃあ、今からご飯作りますから、待っててくださいね」
「え、俺食べなくても大丈夫じゃね? 人間界では知らんけど大丈夫だとお……」
「ダメです! そういう油断は悪魔であっても許しません、ちゃんと健康的な食べ物を食べてください!」
「心得た」
「では、待っててくださいね」
こうしてサターテは食事を待った
そして食べ終わると銭湯に行くことになった。
「あっ、すみませんお風呂の前にまず妹に電話だけ済ませておきますね」
「了解でっす! 外で待っとくぜ!」
そして、サターテは外で待ちマアリは妹に電話した。
「もしもし、ディビー今大丈夫?」
「もしもし、久しぶりじゃない、大丈夫だけどどうしたの」
「うん、実はね今うちに魔界から追い出された悪魔の子供と一緒に今日から暮らすことになったの」
「うん? ごめんなんて言ったもう一回言って」
聞き間違いだと思いディビーはもう一度聞いた。
「だからね、魔界から追い出された悪魔の子供と一緒に今日から暮らすことになったの」
「聞き間違えじゃなかった!」
「ごめんなさい、でもあの子お父さんに捨てられたらしいの、それにいい子そうだし私に危害は加えないと思うのだからね、お願い」
「いや悪魔の子どもって、ホントに大丈夫なの? そもそも悪魔としてどれくらいの悪魔? 下級悪魔の子供とか?」
「サタンの子どもって言ってました」
「すぐに追い出そうか!」
「だっ駄目よ! そんなことしたらあの子一人ぼっちになっちゃう、私たちは二人いたけどあの子は今親も兄弟もいないのよ、そんなの見過ごせないわよ」
「……はあ、わかったよ、お姉ちゃんでも何かあったら必ず電話してね、絶対だからね、すっ飛んでくるから」
「ありがとう、心配してくれて」
「いいよ、もう慣れたしお姉ちゃんの善人には」
二人が電話で話していると
「あっあのすいませんでした。 やってしまいました」
サターテが気まずそうにドアから覗いていた。
「どうしたの、外で待ってるはずじゃ」
マアリは、覗かしてるサターテに近づいた。
すると
「……! えっ!」
サターテは血で濡れていた。
「どっどっどっどうしたの! 何で血が!……」
「ごめん、ちょっと来て」
そういってマアリはサターテについて行った。
着いた先に首だけであたりが血まみれの状態で男を見つけた。
「……!おええええええええええええええ」
マアリは初めて人が死んでいるところを見てしまい、嘔吐した。
「おい、大丈夫か?」
「……っ! そんなどうして、殺したの! 何で!」
マアリはサターテに泣きながら聞いた。
「いや、わざとじゃないんだこいついきなり俺に聖剣で殺そうとしたから、反射的に手で払ったらこんな有様で、とにかく証拠は隠滅したほうがいいかなっと思って」
「なっなにを言ってるんですか! 罪の意識はないんですか!」
マアリはさすがに起こったが、
「おい! ちょっと待て! 考えてもみろよ、いきなり襲われてびっくりするのはしょうがないだろ! しかもこいつはいきなり俺を殺そうとしたんだぞ! 明らかに事故だろう! っ……! すまん、少し声を荒げてしまった、しかし人間で例えたとしてもいきなり刺そうとした奴に抵抗したらその刺そうとした人が死んだのは本当に死なせた人のせいか? そもそも刺そうとしなければそんなことも起きない、よって俺も普通の観点から見ても悪いとは言えないだろ、それにこいつは明らかにエクソシスト、こいつのことがばれるのはあちら側からしても不都合のはずだぜ、なら考えられる手は証拠隠滅ぐらいだぜ」
マアリは何も言えなかった。
「お姉ちゃん、ちょっとその悪魔の子に代わって、なんとなく電話越しで聞こえたから状況は分かった、私もさすがに今回はその悪魔が悪いとは言えないと思う。エクソシストでもいきなり悪魔を襲うんじゃなくて実害がありそうな悪魔を倒すのが目的だからもしかしたら過激なエクソシスト組織の可能性あるし、やっぱりその悪魔の言う通り、証拠隠滅はしないといけないの、お姉ちゃんの気持ちも分かるけど、これは仕方ないことなの」
「……ごめんなさい、わかったわ、悲しいけど私には何もできないのね、ごめんなさいサターテさん私あなたにひどいことを言ってしまったわね」
「いや、まあ君は善人だからね、悪魔の俺は人の死ぬのを何とも思わないような奴だから君が怒こるのも無理はない、ごめんな、こんな悪魔で」
サターテは申し訳なさそうに言った。
「いえ、いいんです、でも殺そうとした人とはいえあなたはその人を殺してしまったんです、あなたが一方的に悪くないのは分かりますし悪魔だからそういうことに鈍いのも分かりました。それでも、すみませんが謝るくらいはしたほうがいいと思います」
「うっうん、謝るのはいいけど死体に?」
「そうですね、私も謝りますから」
「あれ、君も謝るの! なぜに! まあいいか、すみませんでした、不意に殺してしまいまして!」
「ごめんなさい、サターテさんも殺したくて殺したわけじゃないので許してあげてください」
(あれっ! 死体であるこいつが俺に対しての謝罪はなし? まあ無理か、しょうがねえ、謝罪はないが殺されたわけじゃねえし許したるか)
「ごめん、お姉ちゃんもうそろそろ変わってくれる? そろそろ証拠隠滅しないと誰か来るかもしれないし」
「そっそうね、ごめんなさい、じゃあ後はお願いするわ」
「あいよ、もしもし悪魔さんお名前来てもいいかな?」
「僕、サターテ」
「そうか、サターテ君っていうのか、私はディビーっていうんだ、突然のことでつらいと思うけど、こっちのエクソシストでも色々とごまかさないといけないからちょっと協力してくれるかな?」
「うん、サターテ平気、強い子、だから協力する」
それを聞いていたマアリが
「あの、本当に反省してるのですか?」
と聞く。
「当たり前だろ、この顔を見ろよ!」
サターテは真面目な顔をした。
「ならいいんですけど」
「じゃあ、サターテ君その人男の人かな? 女の人かな?」
「男の人」
「そうかあ、じゃあその人首賭けをかけていたと思うんだけど、どこかに落ちてない?」
「えっと……、あった! これかな、番号書いてるの!」
「そうそれ、ごめんだけどそれお姉ちゃんに教えてもらえるかな?」
「わかった、言うよ! 2331132133って書いてあるよ!」
「……え、待って、ごめん聞き間違えかな? もう一度言ってくれる?」
「? いいけど、2331132133って書いてあるけど」
「……えっ、嘘、まさか、アオス? 嘘よ、そんなの絶対嘘! だって絶対帰って来るって言ってたよ、そんな、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うわっ、びっくりした。 えっ、何どうしたの?」
突然ディビーが電話越しに悲鳴のように声を上げた。
「どうかしたんですか?」
「いや、いま番号言ったら、なんかアオスがどうちゃらこうちゃら言って泣き始めた。えっ、なにこの人アオスっていうの? 知り合い?」
それを聞いたマアリが目を見開いて言った。
「えっ、この人が!」
「えっ何! どうしたの、てか知り合い?」
「……はっはい、確か妹の婚約者のはずです、顔を見たことがないので分からないですけど、多分そうだと思います」
サターテは一瞬止まった。
電話から聞こえるディビーの悲鳴のような泣き声がまだ響いていた。
そして、サターテは我に返りこう思った。
(やってもたあああああああああああああああああああああ!)