身体測定
「はい、男子は教室。女子は体操服を持って更衣室へ行け」
3時間目、リリーが教室に帰ってきた時に教師は男女別れることを指示した。
「なんだ?」
「身体測定よ」
「魅杏もやるのか? 理事長が」
「私は理事長でもあるけど、生徒でもあるのよ」
「そうか」
リリーはふむと納得し教室を見渡す。男子はすでに制服を脱いで体操服に着替えている。まぁ、男子なんてどうでもいい。
女子は体操服が入った袋を持ち廊下へと出る。その中には、魅杏や加奈子や千景までいる。同級生なのだから当然だ。
「いいね」
リリーはそう言うとアホ毛をピンッと勃たせた。
更衣室は体育館棟の上の階と部室棟と教室棟の空き教室の階とある。一日を使って全校生徒が身体測定を行うので女子たちは各々の更衣室へ振り分けられる。リリーのクラスは体育館棟の5階の更衣室に振り当てられた。
「おお」
リリーは目の前の光景につい、声をあげる。
「あら加奈子、可愛らしいブラね」
「えっ、ぅん。あ、ありがとう」
魅杏が加奈子の薄いピンク色のブラを褒める。それに見習いリリーも千景にちょっかいを出す。
「ふひひひ。ち、千景、可愛らしい脚だね」
「? まぁ、ありがとう。脚は変わらないけど」
統御学園の体操服は男女別である。つまり、男子は短パンで、女子はブルマである。
「お、おお」
リリーはその官能さについ、声をあげる。
「千景の脚があられもなくあらわに」
千景は制服のスカートを履いたまま、周囲の誰にもパンツを見せることなく、体操服の紺色のブルマを履く。それは普段スカートの中にブルマを履いてないことを表す。通常、女子はスカートの中に体操服のズボンを履いて、下着の存在を隠す。それは、もし風のいたずらによってスカートが捲れた際にパンツが思春期真っ只中の異性に見られたら恥ずかしいからだ。女子はその羞恥的事態を避けるべくスカートの中に体操服のズボンを履いているのだ。それはいつの時代でも変わらない。昭和の頃はブルマ。平成はスパッツもしくわハーフパンツ。統御学園は昭和の頃からブルマで今現在もブルマのままである。保守的な人物のおかげで今もなおブルマである。もちろん、統御学園でもハーフパンツの導入も考えたこともある。ハーフパンツはブルマやスパッツといった裾がピッチリとしていない。ブルマは厚手のパンツと呼ばれるほど脚を大きく露出する。運動をすると、はみパンと呼ばれるパンツがブルマからはみ出すことが起きる。だが、ブルマの裾はパンツは許しても肌色は許さない。ゆったりとしてはおらず、外気が入らないからそれ以上の肌色は許されてはいない。同じくピッチリとした裾にスパッツがある。スパッツは本当に臀部のラインやパンティーラインがくっきりと見えるほどに密着する。男子なら運動中にアソコをぶらつかせないために履くのだが、女子は違う。ブルマにも言えるがスパッツは身体にピッチリと貼り付く。つまり、空気抵抗の軽減と動きしやすさである。例えば、女子陸上のトラック競技である100メートル走ではほとんどの選手はセパレートタイプである。もし、上半身がスポブラタイプではなく、タンクトップタイプであったなら、空気抵抗により0.0何秒と遅くなる。短距離走はわずかでも命取りになる。故にタイムを意識するならセパレートタイプを選ぶ。だから、女子陸上選手たちをエロい目で見てしまう。オリンピックレベルまでなるとムキムキだが、小学生、中学生、高校生、大学生レベルの大会なら腹筋もバキバキではなく、少しぽちゃっとしている。それがまたエロい。学生の女子陸上大会がオススメである。スパッツとは運動性を重視した運動着である。それはブルマも同じ。ブルマも真面目に運動性を考えた運動着なのだが、フェミニズムなババアのせいで駆逐された。フェミニズムなババアたちが考えた案が男女共有のハーフパンツだ。制服とスク水のデザインは男女別なのになぜか体操服だけ男女共有にするとは、甚だ疑問である。その疑問であるハーフパンツは必ずしも悪いというわけではない。確かにハーフパンツは肌色面積は少なくなった。運動性も格段に落ちた。しかし、完全にエロさがなくなったわけではない。ブルマもスパッツもハーフパンツもエロさと萌えがある。ハーフパンツのエロさを言うならばあの裾である。ハーフパンツの裾はブルマやスパッツと違ってピッチリとはしていない代わりにゆったりとしている。それは外気が入るように設計されている。物にもよるがスリットも入っている。それが風にゆらゆらと揺れるとどうだろうか。ふわりとハーフパンツの裾がわずかに上がり徹底的に厳しい肌色を見せ、さらにスリットによりもっと肌色を見せる。出血大サービスだ。ブルマ時代を知っている者ならその程度で興奮するなんて童貞かと言われかねないが、それでもいいものはいい。ハーフパンツはいい。しかし、統御学園の大物保守は首を縦に振らなかった。故に統御学園は今もブルマである。そのブルマは通常なら体育に使われるのだが、多くの女子は日常的にスカートの中に履く。対して千景は違う。通常の学園生活において、スカートの中に体操服のズボンを履くなんてしない。それを今日、リリーは知りこれから千景を見るたびにスカート捲れないかなぁと思いパンツの色を想像することになる。千景はブルマ履くとスカートのチャックを下しぱさっと床にスカートと落とした。リリーは千景の脚に見蕩れていた。ブルマからすらっと伸びる白く細い脚。ピチッと締め付けるふくらはぎ丈の白いハイソックス。ブルマの体操服でないと見られない美しく官能的な光景だ。リリーは千景の脚に見蕩れるあまり、その間に千景がセーラー服を脱いで体操服に着替えているところを見逃した。見逃してもなお、リリーが千景の脚に釘付けになっていると、その可愛らしいあんよがリリーに近づいてくる。
「着替えないの?」
「はっ!?」
千景の声かけにより、リリーは我に帰る。
「そ、そうだったね。ははは」
リリーはすぐさま、セーラー服とスカートを脱いで下着姿になり、体操服をすぽぽぽんと急いで着替えた。
「ぉ…………」
その時、千景が何か言いたそうであった。
「ん? 何?」
「お…………おっぱい……大きいね」
千景が顔を少し赤く染めながら言った。
「そう? ありがとう」
リリーは自分の胸を見る。長身で巨乳。それに対して千景は低身で貧乳。まぁ、千景は中学生だ。リリーは中学生とは言えない。無理やり魅杏に入れてもらったのだ。
「リリー、行くわよー」
魅杏が加奈子と一緒に更衣室の出入り口に立って言う。そろそろ行かないと。
「行こう。千景」
「うん」
「うわぁ、いっぱいだ」
リリーたちは体育館に来た。男子たちはそれぞれの教室で測定するが、女子たちは体育館で芋を洗うように一斉に測定する。
体育館にはそれぞれ衝立がありそこには、身長、体重、胸囲と張り紙が張ってありそこに並ぶ。
「まずは、身長から並びましょ」
魅杏がそう言って、千景、加奈子、魅杏、リリーの順に並ぶ。目測でもこの並びが背の順になっていることがわかる。
「身長伸びてるといいね」
「もう、私の成長期は終わった」
「諦めてるの!?」
「もう、期待しない。期待すると傷付くから」
加奈子と千景が他愛ないもない話をする。千景は自分の低身長と貧乳を気にしており、あまり人に言われたくない。それに対して加奈子は一般的な女子中学生レベルの体格であった。千景にとっては加奈子は羨ましく思っており、自分も普通の体格だったらなぁと思っている。リリーはちっちゃくても可愛いのになぁと思っているが、千景はリリーの身長を寄越せと思っている。
「なぁ、魅杏。身長どのくらい?」
「160代くらいかしら」
「ふーん」
「何よ、その素っ気なさは」
リリーは特に気にもせずボーと周りを見渡す。すると、休み時間に助けた一年生、彩香を見つけた。
彩香は身体をうつむかせ胸の前に身体測定の紙を持ち、目立たないようにしていた。
「なぁ、魅杏」
「何?」
「あの娘、知ってる?」
リリーは彩香を指差した。
「あぁ、知ってるわ」
「いじめられているのか?」
「……そうだと言える。けど、それはいじめっ子たちの懇願だと思う」
「はっ? どういうことことだよ。いじめに正当性なんかがあるのかよ」
「……絶対に秘密にして。リリーは勇者だから言うけど……」
魅杏はリリーの耳を寄せて小声で言った。
「彼女の家…………父親は……ヤばめな人なの」
「…………もしかして、城東会に関係あるのか」
「そこまで踏み込んでないけど……ここの地方なら関係ないとは言えない」
「しかし、そんな娘をいじめるなんてバカがやってるのか。それとも知らんのか」
「……父親はカタギにはなるべく関与しないわ。娘のためにと思って。入学式にも父親ではなく母親が来てたわ。だから、いくらいじめようとも父親は来ないと思っている。そのいじめはお前もヤばい血を受け継いでいる。だから、お前が学校にいるだけで緊張が走る。そいつと友達になったら本気でヤばいと。出てってくれ。この学校から」
「な、なんだよ……それ」
リリーは拳を握り震わせる。
「ヤクザが近くにいると周囲に緊張が走る。それまではわかる。しかし、娘は違うだろ。だからって懇願のいじめに正当性なんてない」
「……そうね。理由はどうあれ、いじめなんて許されない。間違ってるわ」
「魅杏は、どう思う。どうする」
「今のところどうにも……よ。教師レベルでなんとかなる。そりゃ訓戒や停学までおよべるだけれど……私が今、関与なんてできない」
「…………そうか。根気よくか」
「はい、次」
千景は保健委員に用紙を渡し、身長計に乗る。身長計に乗るとき少しかかとを浮かしたが残念ながら教師が注意した。
「はい、141cm」
千景はしゅんとした。
次に加奈子が身長計に乗る。
「はい、156cm」
加奈子は少し伸びたと言い。小さくガッツポーズをした。
次に魅杏が身長計に乗る。
「はい、162cm」
魅杏はまぁ、こんなもんよと言った。
次にリリーが身長計に乗る。
「はい、179cmっ!?」
一同ざわめく。リリーは女子の中で最長となる身長を叩きだした。
「すっすごいね」
「私にも身長くれ」
加奈子と千景がそれぞれ言う。四人は体重の列に並んだ。
「ありがとう。あげることはできないかな」
千景はむうと頬を膨らませた。
身長の時と同じく、千景、加奈子、魅杏、リリーの順で並んだ。千景は目測でもわかるくらい軽量だ。それに対してリリーは高身長で筋肉質であり、体重を聞いただけで男どもはテブかよと言われるほどそれなりにある。
「体重…………減ってると……いいね」
「どうしたの? 加奈子」
「いや、成長期かしらないけどそれなりの増加が……」
「徐々に女の身体になっているんだと思う。……それに比べ私は終わった」
「諦めてるの!?」
「もう、期待しない。期待すると傷付くから」
「なぁ、魅杏」
「何?」
「加奈子の両親って知ってる?」
「…………事情は。でもどこにいるのかは」
「でも、事情は知ってるんだよな」
「……父親は本当に知らない。母親はどこかに別居という形で出ていったとしか」
「そうか」
リリーは加奈子から両親を探して欲しいと頼まれ、それを快諾した。だから、リリーの仕事に加奈子の両親探しがある。といっても、魅杏の聞く通り今は何にもわからない状態だ。どう行動に出たものかわからなければ意味ない。
四人が体重を済ますと今度は胸囲だ。
「………………」
「………………」
「あなたたち口を閉じたわね」
千景、加奈子は口を閉じた。それを魅杏が指摘する。
「リリーは……あれっ? リリー?」
「早苗、身長いくつ?」
「167cmだけど」
「そうですか。じゃあ」
「えっ、何?」
「彩香、身長いくつ?」
「えっ、あの……152cmです」
「…………」
「あの、何ですか?」
「私のこと呼んで、彩香」
「……お、お姉さま」
「彩香ー」
「きゃっ、いきなり抱きつかないでください」
このあとリリーは胸囲測定を勝手にパスし、平気な顔をして更衣室に戻った。
「さて、加奈子の両親どうするかな」
【選択肢】
①『父親を探す』
②『母親を探す』
③『教授に聞いてみる』