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早苗先輩


「さてと、図鑑整理するか」

 リリーは選択肢とスマホの図鑑アプリを使って能力のある女の子を集めて、教授の研究の手伝いをしてる。


「加奈子、能力は不明。……何でなんだろうな。

 魅杏、能力は支配力。人を支配できる。

 千景、能力は化学力。化学技術の能力。

 ふむ、一体能力が何の役に立つのかわからん」

 ちなみに、リリーの能力は選択肢。選んだものが現実に起こる。ただし、例外有り。

「しかし、ここの地方で成績を上げて、カントー地方に復帰するには何が必要なんだ? そもそも成績を上げるって? 教授と言われているから、何か単位とかが必要なのか? うーん」

 リリーはあれこれと考えながら、放課後の校舎を歩き回っていた。







「~♪」


 屋上へと続く踊り場。

 使わない机が乱雑に置かれた、人一人通るのがやっとのような場所である。

 屋上に繋がる扉は普段なら施錠されているのだが、今日は開いていて誰かが屋上にいることを知らせる。

 扉は完全には閉まっておらず、わずかのすき間から陽の光と透き通る女の子の声がする。

リリーは気になり、そっと扉に手をかける。

 扉の先に広がるのは青い空、白い雲。

 遠く霞み行く空を眺めるその時、一陣の風が吹いた。

 

──白とライムグリーン


 長く背中まで垂れた青みがかった黒髪が揺れる。ポニーテールとシュシュ。リリーほどではないにしても日本人女性の平均より背の高い少女。風になびかれ短い丈のスカートから縞パンが見える。

 エロい人は言いました。

『風を感じたくば、女性の髪とスカートを見よ』


「──あっ…………」

 リリーがその姿に見蕩れる。その時。



【選択肢】


①『今、歌ってた?』


②『歌、上手なんだね!』


③『耳障りよ!』


④『耳障りよ! それにあなたは目障りだ!』



 ……なーんで、こういうときに出るのかなぁ。こんないいシチュエーションなのに。③、④はバカか? こんなガールミーツガールのときに耳障りなんて言って、いい関係なんて築けるか! 「お前さぁ、コンクリートロードはやめた方がいいと思うぜ?」ばりな出逢いがあると思うかぁ? 

 とりあえず、無難だが①、②だろうな。①もいいけれど、これ事実確認だよな。そこら辺に転がっている男子にでもできる。

 だったら、②の褒める方がいい。女の子は褒められると弱いものだ。多くの男子たちは照れ臭くって褒めやしないが。だが、私は女の子。女の子同士なら褒めても下心なんてない。……と思ってくれるだろう。



「歌、上手なんだね!」


 リリーが目の前の少女を褒めると、くるっとこちら側を振り向く。

 胸には三年生だと表す色をしたリボンが見える。

 リリーは魅杏と加奈子と千景と同じ学年同じクラスだ。理事長である魅杏の采配により配属された。しかし、リリーは中学二年生という年齢ではない。そのことはリリー大して気にしてない。

 仮にもリリーが年上であっても、目の前の少女は先輩だ。後輩らしく、リリーは敬語を……。


「それに、君はかわいい。名前は何て言うの?」


 ……使わなかった。


「早苗」

「さなえ?」

「そうよ。あなたは?」

「リリーだ。勇者だ」

「……勇者?」

「ああ、そうだ。ところで……」



【選択肢】


①『それ、なんていう曲?』


②『歌が好きなの?』



「それ、なんていう曲?」

「なんていう曲でもなんでもないわ。ただ、ハミングしてただけ」



【選択肢】


①『早苗が作った曲なの?』


②『早苗は曲作るんだ?』


③『それ、誰かのために作った曲だったり……』


④『作曲もできるなんて……早苗先輩ってステキ……』



「作曲もできるなんて……早苗先輩ってステキ……」

 リリーはぽうっと顔を赤らめる。

「い、いきなり、後輩面してきたわね……。別に作曲してたわけじゃないから」


「でも、きれいな歌声だったよ」

「……練習よ。練習」

「練習?」

「……私、演劇部だから」

「ボイストレーニング?」

「そうよ」

「ということは、女優志望!? いや、歌声もいいから歌手やアイドルもいいなぁ」

 リリーがあれこれと早苗の将来を妄想してると、早苗はふっと天を仰ぐ。


「いや、声優志望よ」


「声優になりたい……の? 声優養成所とか行ってるの?」

「いや、行ってはいない」

 早苗はそう言ってうつむいた。

「声ナレ(声優になろう)のジュニアコースなら、小四から中三まで入れるぞ。週一のレッスン。初回二万円。月謝七千円。安いと思うが」

「……そういうわけじゃないのよ」

「じゃあ、どういうわけ?」

 リリーが訊くと早苗はまっすぐ見る。


「……あなた、ちょっと演劇部の部室に来てみる?」






「はいっ、これ読んで」

 リリーは早苗はに連れられ演劇部の部室に来た。演劇部と言えど三畳しかなかった。まるで、独居房のよう。それもそのはず、もともと演劇部の部室はただの更衣室だった。

 人気の部活には人が集まり部員が100人は越える。その部活の部室は100人も入れるような部室ではない。例えば、野球強豪校なら、野球部の部室の他に専用の球場、トレーニングルーム、雨天練習場、シャワー室、レギュラーに入れない有象無象野球部員の更衣室などが完備されている。統御学園もその例に当たる。


「これは?」

「台本よ」

「なぜ、私に台本を?」

「……ちょっと、演劇を体験してみない?」


 早苗の渡した台本の内容は、異世界転生チーレム無双物だった。

「台本見ながらで構わないから、私は悪役するから、あなたは勇者役ね」

「お、おう」

 リリーは台本を見ながら、早苗の相手をする。



【選択肢】複数可


①『とうとう、追い詰めたわよ! 悪魔大王キングダークボース』


②『……の抱える(複数時)四天王の一人、アンタードッグ!』


③『……の忠実なる右腕(複数時)、イエローモンキーターン!』


④『……の擁する常勝軍団の(複数時)軍団長、ヒッキーマウス!』



 何だこれはッ! 無駄に作り込んだ設定だな。というか、複数可? つまり、複数選べるのか!? 太っ腹だな。今回の選択肢は。なら全部選ぼう!



「とうとう、追い詰めたわよ! 悪魔大王キングダークボースの抱える四天王の一人、アンタードッグの忠実なる右腕、イエローモンキーターンの擁する常勝軍団の軍団長、ヒッキーマウス!」


「よくぞここまで来たな。勇者よ。だが、我は以前戦った時より256倍強くなった!!」

 行き過ぎたインフレだッ!! 早苗はどんな脚本してんだ。


「望むところだ! ヒッキーマウス! 貴様を倒せば、崩壊したビルも死んだ仲間も全て元通りになる!!」

 早苗よ、ご都合主義だな。


「デュハハハ! 戦う前に教えてやる! 我はお前の姉であり、妹であり、母であり、祖母であり、乳母であり、娘だ! だからお前の技は何も通じない!」

 変な笑い方だなぁ、おい。それといろいろな血縁関係だなぁ、勇者と軍団長は。


「なんて、皮肉だ。だが、みんなのために貴様を倒す! あと、言ってなかったけど、私には究極技がある!!」

 早苗よ、なんだこの台本。台詞をしゃべっててなんだが、意外と割り切ったな。あと、後付け設定が……。


「くらえ! ドラゴンスネークビーム!!」

 究極技はビームか。まぁ、痛々しくないけども。


「デュハハハ! 効かん! XEXEXゼクセクスXEROXゼロックスーーーーッ!!」

 えーーと、早苗。そんなにXが好きなの?



「……どうだった? 面白かった?」

 早苗は嬉々とした顔でリリーに訊いてきた。

「あ、ああ。面白かった」

「でしょー」

 早苗はまるで子供のようにはしゃいだ。

(あぁ、そうか。演劇が楽しいんだ。早苗は)

 リリーがそう結論付ける、その時。



【選択肢】早苗は……


①『友達だ』


②『演劇部だ』


③『恋人だ』


④『妻だ』


⑤『セフレだ』


⑥『妾だ』


⑦『声優志望だ』


⑧『どうでもいい人だ』


⑨『先輩だ』



「先輩っ! かわいいですね♡」



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