決戦前日
金曜日の放課後。リリーは魅杏、加奈子、千景、彩香を理事長室に呼んだ。
そろそろ四人が理事長室に集合する頃だろうと、リリーは向かう。が、その道中にリリーのスマホが鳴る。
「もしもし」
「俺だ。明日のことを話す」
アニキがリリーに電話する。明日のことと言うのは、加奈子の父親と土地や工場の権利書を賭けたババ抜きのことだ。
「難しい条件だったがなんとか取り付けた」
「ありがとうございます」
「その代わり、遠藤を倒せ。内通者にはケジメをとらさなければな」
「それで、明日の夜に四人対戦の……」
「いや、違う」
「え?」
「四人対戦ではなく、八人対戦となった。俺とシゲタと遠藤とヤスのチームとお前らのチームでの対戦だ」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。私たちは四人が必要なのか」
「ああ、そういうことだ」
「何で、そんなに増えたんだ」
「遠藤はチーム総得点形式を要望しそれが通った」
「チーム総得点形式?」
「つまり、順位によって得点が得られる。一位なら八ポイント。二位なら七ポイントとかな。そうやってチームが得た総得点で勝敗をつける」
「それって、普通のババ抜きだろ? ジョーカーアガリのババ抜きじゃなかったのか!?」
「遠藤の野郎が、直前になって言い出しだ。通常なら、ジョーカーアガリのババ抜きをやって来たんだがな」
「……くそっ」
「それと、場所は燕雀旅館に決まった。明日の夜、燕雀旅館に仲間を連れてこい。以上だ」
「あっ、ちょっと待て」
リリーがまだ言いたそうにしたが、すでに電話は切られた。
「私と魅杏を含め、あと二人。集めなけゃならんのか」
「みんな、実は………………」
リリーは理事長室に入り、加奈子、魅杏、千景、彩香の前で明日のことを話した。
本当なら、リリーと魅杏だけで行くつもりで、その事をみんなに知らせるだけだったのだが。
「……そ、…………そんな」
その話に一番衝撃を受けたのは、加奈子だった。
「つまり、私とリリーのほかにもう二人必要になったわけね」
「そうだ」
リリーが答える。相手は城東会だ。黒服たち四人。そんな相手に、か弱い女子中学生たちを連れていくのは……リリーにも複雑な思いが出る。
加奈子を助けたい。だが、それのためには三人の女子中学生たちを巻き込まなければならない。
「…………私、行く」
「え?」
「ババ抜きでしょ。チーム戦の。なら、大丈夫」
「しかし、千景。相手は城東会だぞ。暴力団だ」
「あなたが……。あなたが助けてくれるんでしょ。きっと、また…………」
「千景…………」
「……じゃあ、私とリリーと千景に決まったということで……」
魅杏は、彩香と加奈子を見る。あと一人。あと一人をこの二人のうちで決めようとしているのか。
「いや、魅杏。待ってくれ。ここで残りの人を決めようとはしていない」
「リリーの言うこともわかるけど、四人でチームだから……」
彩香と加奈子は黙ってしまった。無理もない。相手は城東会だ。どういう組織か彩香は十分にわかっているし、加奈子は十二分にわかっている。
「…………私が…………私が行きます」
「っ!? 彩香!?」
「私は、城東会総長の娘です。絶対に手荒なことはさせません。だから、リリー先輩。私を連れてってください」
「…………彩香」
彩香の眼には炎が灯っていた。
加奈子の父親のこと、母親のこと。
それに、放火や権利書の窃盗。
許しがたいことだ。
父親の部下たちのことだ。
だが、彩香は自分の償いと思い参加する。
「じゃあ、これで四人が揃ったわね。いいわね」
魅杏は、リリーと加奈子に訊く。
リリーがチームの人数調達に消極的なあまり、魅杏が仕切っていた。
「……わかった。千景と彩香の気持ちは受け取った」
リリーが答える。それに対し、加奈子はうつ向いたままだ。
「くっ」
「加奈子!!」
加奈子は理事長室を飛び出した。
「リリー。行って! 加奈子を追って!」
「わ、わかった」
リリーも理事長室を出て、加奈子を追っていった。
「はぁはぁはぁ」
「はぁはぁ、まっ、待ってくれ。加奈子!!」
加奈子は理事長室を出て、そのまま校舎を出る。それをリリーが追いかけ、ついには中庭に辿り着く。
「加奈子!!」
「私、私…………」
加奈子は中庭の池の前に足を止めると、感情を吐露した。
「みんなが、みんなが、あんなにしてくれるとは思わなかった」
「……え?」
「私の家のことなのに。みんなには関係ないのに」
加奈子はまわりに迷惑をかけたくない。故にリリー以外の人間には遠慮などをしていた。けれど、
「私、嬉しいの。でもどうしたらいいのかわからなくて」
「加奈子…………」
【選択肢】
①『背中から声をかける』
②『背中から抱き締める』
「加奈子」
リリーは後ろから加奈子を抱き締めた。
「何か危なくなったとき、仲間に相談しよう。
魅杏も千景も彩香も君の仲間だ。友達だ。みんなが助けてくれる」
「うん……うん……」
「さて、戻ろう」
リリーは加奈子から離れると、理事長室に戻ると促した。
「う、うん。でもみんな心配してるよね。…………」
「戻りにくい?」
「う、うん」
【選択肢】
①『大丈夫。私も一緒に行くから』
②『池に飛び込む』
「とおっ!!」
バシャーンッ!! リリーは池に飛び込んだ。
「きゃあああ!! 何やってるのよー」
「た、助けてーー! この池、意外と深い」
「私の腕に掴まって」
「あ、ありがとう」
リリーは加奈子に助けられ、なんとか池から生還した。
「もう、何やってるのよ」
【選択肢】
①『急に池に飛び込みたくて。えへへ』
②『君に、笑顔になりたくて。えへへ』
「急に池に飛び込みたくて。えへへ。( ̄∇ ̄*)ゞ」
「もう、バカぁ!!」
「だって、君に、笑顔になりたくて。えへへ」
「も、もう、バカぁ(//////)」
「ぶるる。さ、寒い(>_<)」
「もう、どうしてこんな時期に飛び込むのよ。風邪引くわよ」
「やばい。加奈子、一緒に銭湯に行こう。身体が冷える」
「ええ!? そ、そんなの、む、無理」
「じゃあ、一緒にソープランドに行こう」
「なんで、そうなるの!?」
「ソープランドもお風呂じゃん」
「あんなところはお風呂屋さんとは言いません!」
「加奈子」
リリーはずぶ濡れになった制服をしぼりながら言う。その姿は加奈子にとっては艶かしいものだった。
「何?」
「実は、柳井社長と再建計画を約束した」
「柳井社長って、あのアパレルブラック会社の!?」
「お、おうそうだ。まぁ、ブラックなのは間違いないけど。それで、その……話を受けてくれるか?」
「もちろんよ」
「っ!? いいのか」
「あなたなら、信用できる。それに、迷惑をかけたくないって……ちょっとはき違えていたみたいだしね」
「加奈子。じゃあ、すべてが終わったら……」
【選択肢】
①『結婚しよ』
②『えっちしよ』
③『ソープランド行こ』
「ソープランド行こ」
「もう! なんで、そうなるのよ!」




