加奈子 ゲットだぜ!
主人公がしゃべらないRPGこそ本当のRPGなのだろうか?
選択肢でしかしゃべれない主人公が本当のRPGなのだろうか?
いいじゃないか。雄弁の主人公が選択肢を使い、RPGしても。
「うおおおおッ!!」
女勇者のリリーは刺突の構えをし、敵の胴に向け刺す。
「くらええええ」
「さぁ来い。リリーイイイ。実は俺たち三兄弟は、まとめれば一回刺されただけで、死ぬぞオオ!」
リリーは、中ボス三体の胴をまとめて刺した。
「グアアアア!」
「ゲアアアア!」
「ゴアアアア!」
「「「こ、このザ・フジミと呼ばれる、イバラキ、トチギ、グンマーが……こんな小娘に……」」」
リリーは中ボス三体の胴を刺し、その勢いのまま後ろへと飛ばされる。
「バ……バカなアアアアアア グアアアア」
「イバラキ、トチギ、グンマーがやられたようだな」とチバが言う。
「フフフ……しょせん奴らは、カントー軍の中でも最弱のキタカン三兄弟」とサイタマが言う。
「人間ごときに負けるとは、カントー軍の恥さらしよ……。我々カントー三羽烏は違う」とカナガワが言う。
「くらええええ!」
リリーはキタカン三兄弟を刺し、そのまま後ろへと飛ばされ、部屋が開き、カントー三幹部をまとめて串刺しにした。
「「「グアアアアアアア」」」
リリーはキタカン三兄弟を倒した。リリーはカントー三幹部を倒した。
「やった……ついに幹部を倒したぞ……」
リリーはハアハアと肩で息をする。そのとき、部屋の奥の扉が開かれる。
「よく来たな。ソードマスター リリー……待っていたぞ……」
「!!」
開かれた扉の部屋にいたのは、玉座に座わる魔王だった。
(こ……ここが、魔王城だったのか……! 感じる……魔王トウキョーの魔力を……)
「リリーよ……戦う前に一つ言っておくことがある」
「何だ」
「お前は私を倒すのに『覇王ニューヨーク』『国王ロンドン』『花王パリ』の力が必要だと思っているようだが……」
リリーは魔王の言葉に耳を傾ける。次の言葉を待っている。
「別になくても倒せる」
「な、何だって!?」
「そしてお前の両親は痩せてきたので地方の田舎へ解放しておいた。
あとは私を倒すだけだな。クックックッ……」
「フ……上等だ……。私も一つ言っておくことがある。
この私に生き別れた妹がいるのような気がして、カントー中を探し回ったが、別にそんな奴はいなかったぜ!」
「そうか」
リリーは剣を上段に振り上げ、魔王トウキョーに斬りかかろうとする。
「ウオオオいくぞオオオ!」
「さぁ、来い。リリー!」
リリーは袈裟斬りで魔王トウキョーを斬りつけるが、……効かない!
「なっ、何故!?」
「フフフ、私は他のカントーを搾取している。チートスキル『一極集中』でな。このスキルのおかげで、魔王軍4260万人。GDPも1.6兆ドル。世界最強のメガシティだ」
「くっ、トウキョーはチートだ」
「フアハハハ。トウキョーとはそういうものだ」
「魔王トウキョー。チートすぎる」
「くらえ、トウデン水蒸気爆発ッ!」
魔王トウキョーはリリーの身体を掴みの手から水蒸気爆発をする。
ゴオオと、爆音がする。
「グアアアア!!」
リリーは悲痛な叫びを上げ、爆死した。
「ぐぐぐ」
リリーは魔王トウキョーとの戦いに敗れ、死亡した。死亡したあとリリーは何もない空間に漂っていた。全てを懸け、全てを失った。リリーはこのまま煙のように消え去るのだろうかと思ったその時。
「チカラが欲しいか……」
「っ!? 誰っ!?」
「我は、教授。女勇者よ、力が欲しいか? 今なら生き返れる……つまり、転生することができる」
「な、何!?」
リリーはその言葉に疑いを持つが……。
「…………欲しい。私は力が欲しい!!」
「よかろう。貴様には、選択肢の能力をやる」
「いや、転生する能力をくれ! そんな能力はいらん」
「いや、よく聞け。女勇者よ。貴様には選択肢の能力をやる。ちゃんと転生もする。それから、このスマートフォンという携帯端末もやる」
「いや、そんなにいらない。転生する能力だけで……」
「いいからッ!! もらえッ!!」
「お、おお。……そんなに言うなら…………わかったよ」
リリーは渋々ながらも承諾し、選択肢の能力とスマートフォンを手に入れた。
「よく聞け、女勇者よ。貴様は選択肢とそのスマートフォンを使って少女達を集めるのだ」
「はぁ?」
「そのスマートフォンを少女にかざすと、ステータスなどの説明が出る。少女たちをいっぱいゲットし、我の研究を手伝え」
「はっ? 研究って何!?」
「我の研究では、この世に能力を持った少女たちは151人いると思う。他の研究者は251人だの、386人だの、493人だの、649人だの721人だの言っておるが、我はそうは思わん」
「はぁ、そう。……で、私は能力を持った少女たちをこのスマホを使って集めるのね」
「そういうことだ」
「まぁ、生き返れば別にいいけど」
「それじゃあ、よろしく」
「あっ、ちょっと待って!」
「何だ?」
「選択肢の能力って何なの?」
「その名の通り、選択肢が出る。一つ選べ。選択肢が出てる間は世界の時間が止まる。選ばない限り、世界の時間は止まったままだ。選べばその選択肢通りのことが起きる」
「そう。わかったわ。これで生き返れば、魔王とのリベンジができる……」
「あぁ、それは難しいぞ」
「えっ?」
「貴様が転生する場所はカントー地方ではない。とある地方だ。まぁ、左遷だ。隠れ栄転にしたければ、そこで成績をあげることだな。そうすれば、いずれカントー地方に戻ることができるだろう」
「はぁ!? ふざけるな!? カントーに戻せよ!!」
「それは、無理だ。じゃあもう、転生するぞ。ほれっ」
教授は無理やり話を切り上げ、何もない空間に時空の歪みを生み出した。ここの穴に放り込まられると、リリーはどこかの地方に異世界転生する。
「おい! ちょっと待てよ! 辺境とかに飛ばすなよ! おいっ!」
リリーが教授に向かい叫ぶが教授の耳に届いてるかはわからない。姿形がないからだ。
時空の歪みは大きく膨らみリリーを包み込む。
「おい! うっうわあああああ!!!」
リリーは時空の歪みから出されるとそのまま自由落下により落ちる。
「うわあああああ!! 私は落下系ヒロインかよおおお!!」
リリーはドボーーンと大きな音をたてて川に落ちた。
「ぐわぁぼおぼぼぼ」
リリーはもがきながらなんとか水上に顔を出そうとするが、川の流れが早くリリーは溺れる。
「ぐっ…………がはっ…………」
リリーの必死の頑張りもむなしく力尽き、気を失った。
「あ……あの……」
「う…………ううん…………」
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「ん…………はっ……」
リリーは起き上がり、周りを見渡す。どうやら川岸に流れ着いたようだ。
「よかった……また死んだかと思った」
「あ、あの…………」
リリーは声のする方向へと見る。少女だ。リリーの目の前に少女がいる。リリーは教授に言われたことを思いだしスマホを少女にかざす。すると、
「加奈子」
「えっ……何で……私の名前を……」
スマホにはこの少女の名は加奈子と書かれていた。
「何だこの、図鑑アプリはめんどくせえな」
「あ、あの…………聞いてますか…………」
リリーは、あぁ聞いてるよと、言うおとしたその時。
【選択肢】
①『「ありがとう。君のおかげで助かったよ」と言い、握手する』
②『「え? 何だって?」と聞き返す』
③『「いやぁ、ハイジャックしたら、機長に突き落とされちゃったよ」と言い、おどける』
④『「ふええ。怖かったよぉ」と言い、女の子に抱きつく』
リリーの能力、選択肢が出てきた。
何だこれは!? えっ、これが私の能力!? こんな選択肢が出てくるの? …………うーん、どれを選ぼうか。
②はあきらかに難聴主人公だよな。私、あいつ大っっっ嫌いなんだよなぁ。となると、爽やかな①が普通だな。しかし、教授は選択肢も使って少女達を集めろって言ってたな。なら、③のボケより④の方がいいな。よし、④を選ぼう。
「ふええ。怖かったよぉ」
リリーはそう言って加奈子に抱きついた。
「ひ、ひやぁあああ」
加奈子は顔を真っ赤にして驚いた。どうやら、抱きつかれるのに免疫はないようだ。
くんくん。いい匂いがする。
「あ、……あの……」
「あぁ、ごめんごめん。あまりにも怖かったもので、つい抱きついてしまったよ」
リリーは加奈子から離れ立ち上がる。
「そ、そうだったんですか。怖い思いをしたんですね」
ふむ、加奈子って娘は優しい娘なのかな?
「……ところで、君はここで何を?」
「あの、ただ通りすがっただけです」
「そうか。なら訊くが、君は何の能力だ」
「えっ? 能力? 何のことですか?」
…………この反応を見るとどうやら本当に知らなさそうだな。
「いや、なんでもない。こちらで処理する」
リリーがそう言い、スマホを取り出し、加奈子にかざそうとするその時。
「うおおお。ねぇちゃん。ここにいたんかね」
「きゃっ」
いきなり、川岸に黒服が現れ出てきた。その黒服を見て加奈子は身体を震え出す。
「一応、伝えとかないかんね。明日のことわかってるかんねぇ?」
「……は、…………はい」
加奈子は声を振り絞る。そこには恐怖で怯えてる声色があった。
「じゃあ、よろしゅう」
そう言って黒服はその場を立ち去った。
「大丈夫か?」
「え、ええ」
「ヤクザか?」
「…………はい」
「言いたくなければ、言わんでいいけど……君のような可愛い娘に、何故あんなヤツが?」
「…………私の家に付いてきてくれますか?」
【選択肢】
①『はい』
②『いいえ』
ここは、一択だろ。
「ああ、もちろん。君のためなら」
「みかじめ料?」
「はい。商売をしたかったら金を払えと」
リリーは加奈子に連れられ加奈子の家に来た。加奈子の家は古びてはいるが工場と自宅を一緒にした家だった。
「なるほど、つまり明日が期限ということか」
「はい。でもうちには払えるお金はありません。見ての通り、今は休業しています。もし、明日払えなかったら……この工場は……」
「担保か。まぁ、土地をぶん取る気だな。でもまぁ、こっちもぶん殴ればいいだけだが」
「そっ、そんなことできませんよ!」
「私ならぶん殴れる」
即答だった。リリーは女勇者だ。数々の戦闘経験はある。何度も死線をくぐったし、今さらヤクザごとき大したことない。
「でも、因縁をつけられてきたら…………」
「その時は私が守るよ。君もこの工場も守るよ」
「あっ…………」
加奈子はリリーの即答を聞いて赤面する。カッコいい。リリーがカッコよく見える。
「なら…………」
「ん?」
「助けてください」
加奈子は畳の上で手をつき頭を下げた。
「もちろん。私は勇者だ。君を守ることが仕事だ」
「あっ……ありがとうございます」
「……ところで、お礼が欲しいな」
「えっ? お礼?」
「君を助けた時のお礼さ」
「そっそれは、どんな…………」
【選択肢】
①『毎日、君の作った晩御飯を食べさせてくれないかな』
②『君のパンツをもらおうかな』
③『トイレ貸して!』
④『君にキスしてもらおうかな(イケボ)』
⑤『100万円はもらわないとなぁ(ゲスボ)』
⑥『この工場を私にくれないかな』
…………なんで、こういうときに出てくるんだよ。
しかし、言おうと思ったことが選択肢にない。
うーん、どれにしようか。流石に⑥は無理だろう。③も論外だし。①が無難か。それにしても②は変態だな。……よし、決めた。チャレンジとして、⑤をやってみよう。ここの地方に飛ばされて、今金ないし。
「100万円はもらわないとなぁ(ゲスボ)」
「えっ!? 100万円!!? むっ無理だよ。言ったでしょう。今はお金はないって! ……100円じゃダメ?」
「ダメだなぁ(ゲスボ)」
リリーはチャレンジしてみるものの失敗。おもっいきり値下げされてもリリーは断り、結局破談となる。何がしたかったんだ。
うーん。選んだが、またしても選択肢が出てきた。今度はさっき選んだ⑤はなくなった。じゃあ、加奈子との好感度上げるために…………④を選ぼう。
「君にキスしてもらおうかな(イケボ)」
「えっ!? キス!?」
……どうだ。
「……う…………うん……わかった。………………お礼に…………キス…………して……あげる」
加奈子は顔を真っ赤にしながら言った。
翌日。
「起きて、ねぇ起きて」
「う、うーん」
「今日は……やって来る日なのよ」
「何? 女の子の日?」
「ちっ、違うわよ! 取り立て屋さんが」
そのことを聞いてリリーは飛び起きる。
「あぁ、そうだった。ヤクザが来るんだったな」
「もう、忘れないでよ」
リリーは昨日、泊まる場所がなく、加奈子の家に泊めさせてもらった。おかげで加奈子に起こしてもらうとは、羨ましい。
「はいっ。これ朝ごはん」
「おっ、ありがとう」
加奈子はリリーにおにぎり二個を渡した。
(まぁ、今は金がないからな。仕方ない)
リリーは、はむっはむっとおにぎりを平らげ、来るときを待つ。
正午前。
「おう、ねぇちゃん。覚えてますかぁ。今日ですよ」
黒服は玄関のドアをドンドンドンドンと激しく叩いた。
「加奈子、私が出る」
リリーはそう言って、ガラガラっと玄関の扉を開けてた。
「おう、金は用意してあんだろうな」
「お前にやるのはこれだ」
──すっと、リリーの拳が黒服の顔面にめり込む。
「ふげらぼっ!」
黒服は不意に殴られ、後ろへと殴り飛ばされる。
「おう、聞こえるか。加奈子にもう二度と近づくな。でなければ死ぬぞ」
「う、うおおおお!!」
黒服はすぐに立ち上がり、リリーに向かい突進する。が、
「はあああああ」
リリーは弧を描くように黒服のこめかみに上段蹴りをお見舞いした。
「べらぁぶぉ」
ふたたび、黒服は地面にダウンをする。
「残念だな」
一発。
「ぐぁぶぉ」
また、一発。
「ぶぉべぁ」
リリーが黒服の顔を殴る。顔の形が変わるんじゃないかと思うくらい殴った。殴りに殴った。一発、一発の重さが身体に響き、悲鳴をあげる。
「まっ待て、待て。金をやろう。なんなら幹部のポストにもやる」
「ああ?」
黒服が命乞いに交渉する。その時。
【選択肢】
①『富を選ぶ』
②『名声を選ぶ』
③『加奈子を選ぶ』
…………こんなときにも出てくるのか。私の能力は。
こんなの選ぶまでもない。
「そんなもの、いらんッ!! 私は加奈子を選ぶッ!!」
「ひいいいい。ふぎゃっ」
リリーの拳が黒服の急所に当たった。黒服は大ダメージを受け。
「ひっひいいいい」
黒服は脱兎のごとく逃げ去った。
「ありがとう。助かったわ」
加奈子はリリーの拳を手に取りお礼を言ったのだが。
「お礼はわかってるんだろう(ゲスボ)」
「う……うん…………」
加奈子は顔を真っ赤に染め蚊の鳴くような声で言った。
「なんなら、私からキスしようか」
「いっいいよ。……私が……する」
加奈子はぴんっとおもいっきり背伸びをし、リリーの唇に幸せのキスをした。
「あっ………………っ………………」
加奈子は顔を真っ赤に染める。女の子が女の子にキスするなんて……なんだか……恥ずかしい。
「じゃあ、私からお返しに…………」
「いいっ。いいよ。返さなくていいよ」
「そうか、残念だ」
リリーが自分からキスできなかったことを残念がる。その時。
【選択肢】加奈子は…………
①『友達だ』
②『幼馴染みだ』
③『恋人だ』
④『妻だ』
⑤『セフレだ』
⑥『妾だ』
⑦『哀れな人だ』
⑧『どうでもいい人だ』
⑨『玩具だ』
ふっ、選択肢が多いな。まぁ、こういうときはこれだろ。
「加奈子」
「なっ何?」
「君は……」
「うん」
「私の……玩具だっ!」
こうして、加奈子はリリーの玩具となった。
スマホの図鑑アプリにも、新たに加奈子が加わった。