第弐拾弐話 復興
南方諸国はガザンツ帝国がカウスマン帝国によって滅ぼされたときに南へ逃げてきた貴族がバラバラに国家を形成したのが始まりである。メルクス朝サクテルミーニの前身国であるオルクス朝サクアから独立したベルリア連邦共和国が治めていたが今では南に追いやられてしまっている。
そしてガザエル領に隣接する二つの国家の元首がガザエル領・領都ベネチアに集まっていた。
「ポーラー殿にライオット殿よく来てくれた」
ガザエル領領主エゲルト・ガザエルは元首二人を出迎えた。
「何、ガザンツ帝国復興とあっては駆けつけぬわけにはいくまい」
ゲルニア公国元首のネバタ・ポーラーはそのように言った。
「全くだ。ガザンツ帝国復興はライオット家の悲願でもある」
バックス国元首のベル・ライオットも続く。
ポーラー家にライオット家はガザンツ帝国に最後まで仕えた忠臣の貴族で他のガザンツ帝国貴族と違い王や皇帝を名乗ったものはいない家系であった。
「それで?陛下は中に?」
「ああ、二人の到着を心待にしている」
ポーラーの言葉にガザエルはそのように答えた。
「ならすぐに向かわないとな」とライオットは言って屋敷の中へ入っていく。
二人はガザエルの案内のもと屋敷の地下へと下がっていく。やがてひとつの扉の前で止まった。
「この中だ」
ガザエルはそう言って扉を叩く。
「陛下、ガザエルです。ポーラー殿とライオット殿をお連れしました」
ガザエルの言葉にすぐに返答があった。
「分かりました。入ってください」
声変わりのしていない子供のような声が部屋から聞こえてきたがガザエルは「失礼します」と仲にはいった。二人も続く。
「ようこそ、私はミラル・ド・ヘル・ガザンツともうします」
そのように答えたのは一人の少女であった。
銀の腰まである長い髪を揺らし清楚なドレスを着たその少女は可憐と呼ぶに相応しかった。
ポーラーもライオットもその姿に見惚れるがすぐに態度を改めて挨拶をする。
「ガザンツ帝国貴族のネバタ・ポーラーともうします」
「同じくベル・ライオットともうします」
二人は優美に頭を下げる。
その二人にミラルは声をかける。
「この度はガザンツ帝国の復興の為に集まっていただき感謝しております」
「いえ、我らはガザンツ帝国の貴族です。陛下のご命令とあれば命を懸ける所存であります」
ベル・ライオットはそのように答えた。
「陛下は一つ命じていただければ直ぐに実行に移しましょう」
エゲルト・ガザエルも続く。
ミラルはその様子を頼もしそうにみた。
「…ありがとうございます。ガザンツ帝国滅亡から早三百年。あの時の栄華を知るものはもう一人も残っておりません」
ミラルは悲しそうに言う。それを三人は黙って聞いた。
「我が家は当時分家の家系のため祖先は逃げ切ることに成功しましたがそこからは辛い日々だったそうです。私の父は昨年病気で亡くなりましたが死の間際まで言っておりました。"ガザンツ帝国を復興させたい"と」
「私はそれは無理だと思っていました。ガザンツ帝国の貴族はほとんどがカウスマン帝国やマグサ王国に仕え一部も南方に国家を作っていたのですから」
しかし、とミラルはエゲルト・ガザエルを見て答える。
「エゲルト殿から手紙を受け取った時はとても驚きました。まだガザンツ帝国に忠義を尽くしてくれるものがいたのですから。そして私の前には更に二人の方がいます」
ミラルは息を整えて三人へ名を下す。
「…これは私からの"命令"です。ガザンツ帝国を復興させてください」
「「「了解しました」」」
エゲルト・ガザエル、ネバタ・ポーラー、ベル・ライオット声を会わせて返事をするのであった。




