配属
頭の中にガンガンと音が鳴り響いている
「あ~頭が痛い…」
「初めてでしたのでしょうがないちゃしょうがないよ」
「曹仁もそうだったのか?」
「うん、ボクも最初は加減が分からなくて二日酔いしてたよ」
「そうなのか」
朝、鮑信さんに起こして貰ったらやたら音が響いて頭が痛いのをその場で訴えたら二日酔いと判断された
食堂での曹仁との朝ごはんも俺は二日酔いによく効くお粥を食べさせられてる
「昨日で華鬘や薇猩と仲良くなったみたいだね」
「ああ、2人ともいい人だし、気が合いそうだからな」
「それはよかった」
2人とは真名を交換したし、気が合いそうだからそれなりに仲良くはなったはず
俺の勘違いではないよな?
数少ない将の人と仲が悪いとかしゃれにならないし
まあ、嫌われては居ないはずだから大丈夫でしょ
「それで今日から曹純は銀狼の下で働いて貰うからね」
「ああ、鮑信さんってどんな事をやってるんだ?」
「一軍と内政を任されてるでしょ」
「たしかそうだったな」
「だから調練はもとより兵糧や武器の管理、街の警備に事務処理なんかの雑務とかをやってるよ」
「聞いてみると多いな」
「確かに多いけど兵糧や武器の管理は担当者が居るからまとめ役なだけだから聞いた分よりはいくらか少ないはず」
「そうですね、私が直接やってるのは調練と事務処理くらいですからね。あとは街の警備のたまに巡回するくらいです」
「へ~、俺もそれを手伝うんですか?」
「はい、調練と巡回には参加していただきます」
「事務処理はやらせなくていいの?」
「事務処理には文字を書いたり読んだりしますので」
「もしかして文字が読めない?」
「残念ながら読めないぜ」
「ですから曹純殿には同時に文字の修練もやってもらいます。文字の修練がある程度行いましたら事務処理もやってもらおうかと」
「うへ~、曹純やること多いね」
「マジで!?」
「マジ?」
「マジは本当って意味だよ、だから本当か?って意味」
「へ~、じゃあ、マジでマジで。これで使い方あってる?」
「あってる」
「ふむふむ、なるほどね。それで何故大変かっていうと、朝からお昼にかけて兵の調練と曹純自身の調練をやる。昼に休憩が入って、そのあとは街の巡回をするでしょ。夜は文字の修練をしないといけないから大変だね」
「マジかよ…」
「大体こんな感じでしょ?」
「そうですね、大体そんな感じでしょう。文字の修練と武の修練は私が直接教えます」
やること多いな、文字の修練って勉強の事だろ。文字覚えるの苦手なんだよ…
英語も漢字も成績悪かったし
しかも武の修練まであるのか、鮑信さんみたいな美人に教えて貰うのは嬉しいけど厳しいのかな…?
朝から夜までみっしり詰まってるし俺死ななければいいんだけど…
「それじゃあボクはそろそろ行くから死なないように頑張ってね」
「ああ、そっちも頑張れよ」
曹仁は昨日と同じように食器を片付けて仕事に向かっていった
「少しは二日酔い治まりましたか?」
「はい、最初より大分楽になりました」
「それでは私たちも兵の調練に行きましょうか」
昨日の様に食器を片付けて鮑信さんについていく
昨日試験で使った第二訓練所に向かって歩く
「第二訓練所を使うんですか?」
「はい、基本的に私の軍は第二訓練所で調練しています。たまに野外演習や合同演習などがあります」
「この時間帯から始めているんですか?」
「大体この時間帯ですね。熱心な兵は先に来て始めてますよ」
「凄いですね」
こんな朝早くから集まっているとは凄いよな。感覚的には部活の朝練と同じかそれよりも早い位なのに
ま、命かけてんだから部活の朝練と同じにしたら失礼か
「集合がしますので、曹純殿の紹介から始めたいと思います。言葉を考えといてくださいね」
第二訓練所に着くと兵が沢山居た
あの広い第二訓練所を見渡す限り兵、兵、兵である。第二訓練所の広さを見たとき多分東京ドーム2個か3個くらいあったよな
ってかこんな広いのが3個もあるのかよ。それで地方の小規模都市とか中国本当に凄いな
1人の兵がこちらに気付いて近寄ってくる
「おはようございます、鮑信様」
「おはようございます、曹純殿も」
「あ、おはようございます」
「おはようございます。それでそちらの方は?」
「今日から私が指導する事になった曹純殿です」
「曹純です、宜しくお願いします」
「この鮑信隊で副長をやらせて貰っている王双です、宜しくお願いします」
「では始めたいと思いますので集合を」
「了解しました。全員集合」
王双さんのかけ声に反応して直ぐ様兵が集まって整列する
速いな、よく訓練されてるんだろうな。あ、あの辺は少し遅れてる新兵かな
「そろったな、それでは朝会を始める。欠席者はいるか?居ないな、ならば昨日の…」
王双さんが朝会を進める
ホームルームみたいな感じで欠席者や連絡事項を確認していくんだな
「毎朝朝会をやります。いつも最後に私が話をするのでその時に曹純殿を紹介します。明日からは曹純殿も話をしてもらいますので」
マジか、毎朝話さないといけないのか、どんな事を話せばいいのだろうか?
「質問はありますか?」
「どんな事を話せばいいんですか?」
「何でもいいんですよ、私は調練で気を付ける点を言います」
何でもいいのか
「因みに調練の最後にも同じことをやりますので。他に質問はありますか?」
「これって何人くらい居るんですか?」
「私が率いてる軍は1000人、曹純殿に率いてもらう兵が500人ほどなのでこの場に居るのは合計で1500人です」
「これで1500人…
って俺500人も率いるんですか!?」
「そうです、500人と言ってもほとんどが新兵なので一緒に成長してください」
「はあ」
「因みに薇猩や華鬘も1000人率いていて、唯が1500人なので、全体の十分の一を率いているので」
「全体の十分の一…」
「私の目に狂いがなければちゃん率いられますよ」
「以上で連絡は終わり、最後に鮑信様からどうぞ」
鮑信さんは前に出て行く
「今日は私の方から紹介したい人がいます。曹純殿前へどうぞ」
呼ばれたので鮑信さんの横に行く
「この方は曹純殿です。将でありますがまだまだ未熟なので私が指導する事になりました。曹純殿には新兵を含めた500人を率いてもらいます。では曹純殿挨拶をどうぞ」
「紹介にあった曹純です。将として全くと言っていいほど未熟ですので学ぶべき事が沢山ありますが、宜しくお願いします」
「それでは調練を始めましょう。新兵も居るので基礎から始めます。曹純殿に率いられる人は途中で呼びますので来てください。それ以外の人はいつも通り調練を行ってください。王双任せました」
「は、それでは開始、まずは二人一組になって格闘訓練から」
王双さんが号令して調練が始まった
「曹純殿はこちらへ、今日は貴方への調練はしません。部隊の指揮の仕方などを教えますので覚えてください。これから3日に1日は部隊の運用や兵法、兵糧などをこの調練の時間に講義します。それと曹純殿が率いる500人の調練の内容を考えてもらいます。こちらについては期限を2日後までにします。」
「やること多いですね…」
「頑張ってくださいとしか言えませんね、曹純殿なら出来ると見込んでいます。では最初に部隊の指揮を教えます。まず…」
「…となります。大体分かりましたか?」
「い、一応、うる覚えの事沢山がありますが…」
部隊を指揮するってやっぱり凄い事なんだな、覚える事が沢山あるよ
小説とかで突撃しかしない人を馬鹿じゃねえのって思ってたけど、突撃しか出来なさそうだよ…
「最初なので大丈夫です。これからしっかり覚えていきましょう。では、いい頃合いなので曹純殿の部隊を集めましょうか。王双」
大きめの声で鮑信さんが王双さんを呼ぶ
「は、何でしょう」
「曹純殿の部隊を集めてください」
「了解しました。調練一旦中止、先ほど教えた部隊は集合、部隊長は前へ」
そうすると駆け足で人が集合してきた
「部隊集まりました」
「ご苦労様です。貴方がたはこれより曹純殿の指揮下に入ってもらいます。今日の調練は終了でいいですから曹純殿と顔合わせしてください。特に部隊長達は直接命令を受け取るのでっかりと」
「「おう」」
「曹純殿任せました」
「はい」
息を一息吸いゆっくりと吐いて深呼吸をする
「指揮をとらせてもらう曹純です。新兵が大半と聞いてますが、自分も新兵みたいなもんです。ですから一緒に成長して強くなりましょう」
「「おう」」
部隊長を中心に顔合わせを始めた
鮑信さんが率いる部隊の調練が終わるまで部隊長の名前と顔を覚えたりたわいもない話などをして親交を深めた
そのたわいもない話の中でみんなから若と呼ばれることが何故か決定した
「部隊の方はどうでしたか?」
「なかなか楽しかったですよ。部隊長の顔と名前は覚えましたし険悪とはならなかったので多分大丈夫だと思います」
「そうですか、それはよかったです」
鮑信さんと食堂で昼飯を食べながら調練の話をする
「この後は街を巡回するんでしたっけ?」
「そうです、街の巡回は新兵の仕事なので曹純殿の部隊でやってもらいます。私は事務処理をやっていますので任せましたよ」
「はい、わかりました」
昼飯を食べ終わり鮑信さんと別れて部隊の奴らと街を巡回する
「若はこの街は来てから3日目何ですよね?」
「ああ、そうなんだよ。だからまだ街の構造を覚えてなくてさ」
「じゃあ、巡回ついでに俺らが案内しますよ」
「それはありがたいな」
「一回も街を回ってないんですか?」
「いや、昨日鮑信さんと軽く回ったよ」
「え、鮑信様とですか?」
「ああ」
「いいな、俺も一回でいいからあんな美人な人と街を回りたいよ」
「お前には無理だって」
「あ~?お前も無理なくせに」
「何だって~」
「はあ~またこれか、若は曹仁様とは面識があるんですよね?」
「ああ、牛金と史渙とは真名でよびあってる。鮑信さんと曹仁とも真名は交換してるよ」
「そうなんですか」
話をしていると広場に着いた
ここは子供達の遊び場のようで沢山の子供が居た
「子供が多いな」
「ここは遊び場ですからね」
「うわ~巡回の人たちだ~」
子供がこちらに気付いて近寄ってくる
「おうおう、今日は新しい人が来てるからな」
「あ、本当だ」
「この人は我らの大将である曹純様だぞ」
「曹純様~」
「曹純様~」
曹純様~という声が鳴り響く
「今日から将になった曹純だ、宜しくな」
「「わ~い」」
子供たちが飛び付いてきた
「遊んで~」
子供達に飛び付かれていて遊んでとせがまれて動けず困っていたら
「若、遊んであげてください」
「巡回の方はやっておくので」
「すまないな、よ~し遊んでやるぞ」
「「やった~」」
子供達と一緒に遊んであげた
「ふう~、少し休憩させてな」
そう言って少し離れた所に座って休んでると女の子が1人寄ってきた
「曹純様はお城に住んでるの?」
「ああ、そうだよ」
「やっぱり、唯様が言ってた通りだ」
「曹仁が俺の事を?」
「うん、新しく入ってきた人が居るから仲良くしてって」
「そっか」
よくよく考えてみればまだ来てから3日しかたってないのによく子供に俺の事を伝えたな
「私ね、将来お城で働くんだ」
「へ~、凄いな。でも何でお城で働くんだ?」
「私の家がだいだい将としてお城で働いてるから私も働くの」
「え、そうなのか。因みに君の名前は何て言うの?」
「夏候恩だよ」
夏候恩って言えば曹操に仕えた夏候惇や夏候淵の一族じゃないかよ
しかも結構有名な人だし
って夏候恩も女の子なのか、華鬘とかに聞いた所有能な将は女の人って聞いてる。劉邦や項羽達も女の人って聞いてるから、この世界では有名な人は女の人になるのか。それだったら華鬘や薇猩はどうなるんだ?
「じゃあ、これからよろしくな夏候恩ちゃん」
「苺」
「え?」
「苺でいいの、ちゃんづけもいらない」
「それって真名じゃないのか?」
「そうだよ」
「初対面の人に真名を呼ばせるのはどうかと思うよ」
「いいの、曹純様は信頼できるって唯様も言ってたから大丈夫なの」
曹仁さんや、何処に信頼できる要素があったんですか…?
「それだけで真名を預けるのは」
「曹純様だって唯様に初対面で真名を預けたじゃん」
「うぐ、それは…」
「それとも私を真名で呼ぶのは嫌い?」
そんな泣きそうな顔で見られたら断れねえよ
「わかった、俺の真名は柳梨だ。これからよろしくな苺」
「うん、よろしくね柳梨様」
満面の笑顔で返された
日が落ちてきた時に巡回してた兵たちが戻ってきた
「若~、巡回終わりましたよ」
「そろそろいい時間なので城に戻りましょう」
「ああ、そうだな」
子供たちに別れを告げて兵の所へ行く
「曹純様じゃあね~」
「また明日~」
「おうよ、また明日な気を付けて帰れよ」
「それにしてもあっという間に人気になりましたね」
「そうか?」
「そうですよ、城の方で鮑信様が待っていますので早めに行きましょう」
「そうだな、鮑信さんを待たせる訳にはいかないか」
兵に言われた部屋に入る
「曹純殿お疲れ様です、巡回の方はどうでしたか?」
「お疲れ様です、巡回の事なんですけど正直あまりちゃんと出来ませんでした」
「それは何でですか?」
「広場で子供たちと遊んでいたからです。すみません」
「ふふ、もう子供たちと仲良くなったんですか。民にふれあうのも巡回の一環ですから問題ありませんよ」
「ありがとうございます」
「ですが遊んでばっかしだと困りますからね」
「はい、そこは気を付けます」
「それと一週間後に会議がありますこので街の改善点などありましたら報告してください」
「一週間後ですか、頑張って探してみます」
「文字の修練は今日からやりたいのですが問題ありませんか?」
「問題ないです。あ、あの」
「何ですか?」
「ご飯は何処で食べればいいですか?やっぱり食堂ですか?お金は持ってないので外では食べられないので」
「でしたら今日の仕事は終わりですのでご飯を一緒に食べに行きましょう。奢りますよ」
「すみません、ありがとうございます」
ご飯を一緒に食べた後に城に戻り鮑信さんの部屋で文字を教えて貰った
やっぱり言語を覚えるのは大変すぎだろ…
ほとんど覚えられなかったよ。これが毎日続くのか、兵法も覚えないといけないから頭が死ぬな
明日からは鮑信さん直々の武の修練があるのか
うん、とりあえず死なないために早めに寝ようと