太陽とくもりさん
太陽さんは、大好きだった、お雪さんに告白をしました。
ところが「相性が合わないから……」と、断られました。
失恋です。
太陽さんは、あまりのショックで泣きそうになりました。でも、ぐっと涙をこらえます。
太陽さんには、天気界で決められた掟があるのです。
「決して涙を流してはいけない」と……。
だから、ぐっと涙が出そうになるのを我慢します。ああ、でも悲しくて悲しくて、とても辛いのです。
すると、その様子を見ていた『くもりさん』がやって来て、言ってくれました。
「私が、あなたの代わりに泣いてあげよう。だからもう、君が泣く事はない」
そして、くもりさんは可哀想な太陽さんのために、ザアザアと涙を流してくれました。おかげで、太陽さんの気分は晴れやか。とてもスッキリする事ができました。
しばらく経ったある日。
今度は、三日月さんに恋をしました。そして頑張って告白します。
ですが……「時間が、合わないから」と、断られました。
また、失恋です。
太陽さんは、またショックを受け、気持ちが沈んでいました。どうしよう、涙が出そうだと……。
落ち込んでいると、また、たまたま見ていたくもりさんがやって来て、「私が代わりに泣いてあげるから。落ち込まないで」と慰めてくれて、代わりに泣いてくれました。
太陽さんはニッコリ笑って、くもりさんに感謝しました。
「ありがとう。くもりさん」「いやいや、コレくらい。天気界の掟は守らなきゃね」
……それから数日後。
またもや、太陽さんは恋をしました。相手は、年下の嵐くん。決死の告白でしたが、まるで相手にされませんでした。
くやしさもありましたが、段々とやはり泣きたくなってきます。太陽さんは、くもりさんにお願いをしに行きました。
「ごめんなさい。また、私の代わりに泣いてくれませんか」
くもりさんはすぐ「いいですよ」と、ワアワアと泣いてくれました。太陽さんは気分が晴れて、お礼を言って帰って行きました。
そしてまた……。
次は、タイフーンさん、みぞれさん、お星さま……。
太陽さんはずうっと、恋をしては失恋し、恋をしては失恋し、を繰り返し繰り返し、そのたんびにくもりさんに代わりに泣いてもらいました。
泣き続け、泣き続け…………。
その総回数、101回失恋。
作者のネタも、尽きる頃。
下界の地上では……。
度重なる大雨・洪水・波浪・雷警報と身勝手な人間の行いのせいで、地表の陸はすべて、沈んでしまいました。
……くもりさん、いっそ太陽さんとお付き合いしてあげたらどうですか?
《END》
【あとがき】
101回目のプロポーズもダメだった、という話。
ありがとうございました。