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第七話 村から脱出せよ

 ジュディの手を引き森の中を駆ける。

 時折立ち止まっては臭いを嗅ぎ、聞き耳立てるのも忘れない。


「村が……燃えてる……」


 ジュディの呟きを聞き後ろを振り返ると、村のあった辺りは炎によって煌々と夜の闇を照らしていた。

 幸いにもこの森は常にどんよりと湿った空気に満ちているので山火事になることはないだろう。


「火の勢いが強い。村は……おそらく焼け落ちたな」

「うぅ……パパぁ……ママぁ……」


 俺の言葉にジュディはポロポロと涙をこぼし、音を立てないよう声を押し殺して泣いている。


「行くぞジュディ」

「……うん」


 嗚咽を漏らしまくっているジュディの手を引き森の奥へと駆ける。



 俺自身、夜の森に入るのは初めてのことなので、昼間とは違う森の姿に警戒しながら進む。

 なんせ、ブサ男が言うには夜の森には夜行性の危険なモンスターが出るらしく、よほどのことがない限りは入ることは禁じられていたからだ。

 しかもどうしても入らなければならない場合であっても数を集め、けっして単独では入らないように言われていた。


 憶えのない臭いや獰猛なモンスターの臭いを嗅ぐたびに迂回しながら進み、気づくと川辺へと出ていた。


「ふう……。ここで一休みするか」

「うん」


 腰を下ろして一息つく。一時間ぐらいずっと走り続けていたのでひどく疲れた。

 隣ではジュディが顔面ごと川面につけてグビグビと喉を鳴らしながら川の水を飲んで喉を潤していた。


「あまり飲みすぎるなよ。走れなくなるからな」

「ごきゅ、ごきゅ……プファ! ん、分かった!」


 俺の忠告に手の甲で口を吹きながらさわやかな表情でそう返してくる。


「ふわぁ~、走ってたらお腹空いたなぁ……」


 昼間ゴブリンを貪り食っていたのにもう消化したのかお前は? というかもうパパとママのことはいいのかよ?


「あ、お魚さんだぁ!」


 川で泳ぐ魚を見つけたジュディは、俺が制止する間もなく派手な水しぶきを上げながら川へと飛び込んだ。


「音を立てるな!」

「へへへ、ゴメンゴメン。待ってて、いまあたしがガイアの分もお魚さん獲ってくるから」


 そう言って魚を追い、川に潜る。

 やれやれだ。まあ、俺のために魚を獲ろうとするその気持ちは素直に受け取っておくか。

 とか思っていたら……。


「きゃああー!」


 ジュディの叫び声が聞こえ反射的に振り向くと、ワニのようなモンスターがジュディに噛みつこうとしているところだった。おそらくはジュディが立てた水音を聞きつけてやってきたに違いない。

 しかも水中に潜って近づいてきたため、臭いを感知することが出来なかったみたいだ。


「ジュディ!」

「助けてガイア!」


 ジュディがこっちに向かって逃げてくるが、下半身が水に浸かっているためその動きは遅い。

 俺は素早く〈鑑定〉を使いワニのステータスを確認する。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 種族:マーダー・クロコダイル LV.2

 HP    300/300

 MP     0/0

 体力     52

 筋力     66

 魔力      0

 敏捷性     7

 知性      1

 物理防御   26

 魔法防御   15

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


(なかなかの強敵だ……だが、しょせんは『ワニ』でしかない!)


 マーダー・クロコダイルが大きく口を開けジュディに噛みつこうとする。


「きゃ!」


 水に足を取られ体勢を崩したのが幸いし、間一髪でワニの牙から逃れることが出来た。


(今だ!)


 俺はマーダー・クロコダイルの口が閉じた瞬間を狙って川へと飛び込み、マーダー・クロコダイルの突き出ている上顎と下顎を抱え込むように抱きつき、全力で締め付ける。


(ワニと同じなら、噛む力は強くても口を開ける力は弱いはずだ!)


「ジュディ、俺の剣で……俺の剣でこいつを殺るんだ!」

「え? あ……う、うん! 分かった!」


 ジュディが俺の腰からショートソードを抜き、俺を振りほどこうと暴れるマーダー・クロコダイルへとそれを突き立てる。

 俺のショートソードを握ったジュディは何度も何度もマーダー・クロコダイルへそれを突き刺していき、俺は暴れるマーダー・クロコダイルに逃すまいと締める力をさらに強める。


 やがて、血に染まった水面にぷっかー浮かんだマーダー・クロコダイルが、川の流れに従い流れる様を二人で見送った。ちなみにこの時、ジュディが「もったいないなぁ」と言っていたような気がしたが気のせいだとしておこう。


「はぁはぁ……ふぅ。ケガはないかジュディ?」

「うん。ガイアが守ってくれたからケガはないよ。ありがとね。あと……ごめんなさい」

「過ぎたことは気にするな。それより……もう少し休んだらここを離れよう」


 川辺に座り込んでそう言った時だった。


「おおっとぉ、こっがら逃さねぇど」


 突然の声に振り向くと、そこには昼間殴り飛ばしたゴブリンが綺麗な顔して立っていた。しかもそいつだけではなく、何匹もぞろぞろと森から出てくるではないか。


 どうやら水音を聞きつけたのはマーダー・クロコダイルだけではなかったらしい。


「ちぃ! 気づけなかったか!?」

「ふえ~ん。いっぱいいるよぉ」


 すぐにジュディと一緒にこの場を離脱しようとする――が、


「クソ……囲まれたか」


 そう、新たに現れたゴブリンたちによって俺たちはいつの間にか包囲されていた。

 前方にはゴブリンの群れ、後方には川。きっと川には他にもマーダー・クロコダイルが潜んでいるはずだ。

 俺が悔しさから歯ぎしりしていると、他のゴブリンより二倍は大きい赤黒いゴブリン――『ホブゴブリン』が一歩前へと進み出る。


「ゲハハハハ、元気なガキんちょ共だなぁ。……ここで殺されるかぁ、オラたちに捕まんかぁ、好きなほぉ選ぶべさぁ」


 こうして、俺とジュディはゴブリン共に捕らわれてしまったのだった。

ヘルニアになってしまい更新ペースが落ちてしまいます。

すいません。

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