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欲望が落ちていた夜Ⅲ

「せい!」


 引きずってきた夢魔サキュバスを川に蹴り落として泥を洗い流す。

 途中、水音を聞いたマーダー・クロコダイルが近寄ってきたが、ぶっ飛ばして追い返しておいた。


「こんなところかな?」


 泥が綺麗に落ちたところでサキュバスを引き上げ、地面へと寝かす。サキュバスはまだ気を失ったままだ。


「こいつがサキュバス……か」


 俺はそう呟き、まじまじとサキュバスを見る。

 服のなのか下着なのかは知らないが、水着のような露出の多い服を着ており、何故かは知らないがサキュバスは体中に傷だらけで、髪は銀髪。背中からは蝙蝠のようは翼が生えていた。

 肌は地黒なのか、ハリのある褐色をしており、髪の色と合わさり、どことなく前世での『ギャル』を思い起こしてしまう。

 この世界の美醜の基準は分からないが、前世基準に当てはめれば、エッチな映像作品の上位にランクイン出来そうなほどに顔は整っているようだ。

 だが、問題は…………。


「な、なんてけしからんおっぱいをしているのだッ!?」


 俺は「ゴクリ」と喉を鳴らす。

 そう、「大きいだろう」と予想はしていたが、このサキュバスのおっぱいは前世での巨乳アイドルが裸足で逃げ出すほどに大きいのだ。しかも仰向けになっているにも関わらず、形が崩れることなく天を目がけてそびえ立っていて、見ているだけでフラフラと吸い寄せられてしまいそうになる。さすがはサキュバスだ。

 断言しよう。前世なら間違いなくぶっちぎりでエッチな映像作品のトップに立てる。


(くっ、気を強く持たなくては……『喰われる』ぞ俺!)


 なんせ相手はあの夢魔ビッチなのだ。童貞チェリーの俺にはやや荷が重い。

 俺はサキュバスに『青い果実』を摘まれぬよう気を引き締め、サキュバスが目覚めるのを待つ。

 しかし……いっこうに目覚める気配がない。〈鑑定〉で見る限りは死んでいないのだが、やはりここは人工呼吸なり、し、心臓マッサージなりして応急処置する必要があるのだろうか?


「ふむ」


 サキュバス如きに俺のファーストキッスを捧げるのは気が向かないが、心臓マッサージぐらいはやってあげてもいいだろう。

 俺は「よし」と頷き、覚悟を決めると両手をわきわきさせながらサキュバスに近づき隣に腰を下ろすと、心臓マッサージをするために左おっぱいに手を――――。


『ん?』


 俺の伸ばした腕がレフトぱいに到達しようとしたその瞬間、サキュバスがぱちっと目を覚ました。

 このタイミングで目覚めやがったよこのクソビッチがとか思っていたら、サキュバスは素早く起き上り、俺から距離を取るように離れると、体中に魔力を漲らせ威圧してくる。


『なんだいあんたは? ……って、オークかよ? あたいも焼きが回ったねぇ。ガキのオークなんかに舐められるなんてさ』


 サキュバスは俺がオークだと分かると、すぐに魔力の放出をやめ、自虐的にそう呟く。

 どうやらサキュバスが話している言語はミャムミャムが話していた言葉と同じようだ。この世界の『共通言語』なのだろうか?


『ん? なんだいオークちゃん。ひょっとしてあたいに欲情しちゃったのかな? んふふ。あたいを抱きたいのかな? な~んて、オークに言葉が通じるわけがないよね。あたいバカみたい』


 サキュバスを見続けている俺の視線をサキュバスが勘違いしたのか、俺に向けてしなを作っては一人ボケツッコミをやっている。その内容も内容だ。さすがはビッチといったところか。

 それにこいつは俺が言葉を理解しているとは思ってもないらしい。ならば……どれ、ひとつこのビッチを驚かせてやるか。

 俺はサキュバスに一歩近づき口を開く。


『ずいぶんな物言いだな。それが死にかけていた貴様を救ってやった恩人に対する態度か? ふん。どうやらサキュバスという種族はずいぶんと躾がなっていないらしい』

『なっ……お、オークが喋った!?』


 サキュバスがあんぐりと口を開けて驚愕する。


『ふん。オークが喋ったら不都合でもあるのか?』

『ば、バカな……喋るオークなんて聞いたこともない。オーク・キングだって言葉を理解するだけで喋ることは出来ないってのに……』


 サキュバスの言葉を信じるのなら、どうやら『喋るオーク』というのは存在していないみたいだ。まあ、俺は特別な存在だからな。飴ちゃんよこせ。


『俺の名はガイア。貴様、名はなんという?』

『ガイアだと? ……オークのくせに名前まであるのか……』

『ほう。命の恩人である俺が名乗ったというのに、貴様はその相手に対して名乗りもせんというわけか?』

『…………カラナフィだ」


 サキュバス――カラナフィがそう言い、俺を警戒するかのように、いや、実際警戒しているのだろう。再び体中に魔力を巡らせ俺を警戒している。

 しかし――。


『くっ、』


 傷が痛んだのか、カラナフィが急にその場にうずくまる。


『貴様、なぜそんなにも傷だらけなのだ?』


 疑問に思いそう聞いてみる。底なし沼に沈んだだけではこうはならないはずだからだ。


『……ふふっ、オークのお前さんになんかに話したところで理解出来ないだろけどね……いいよ。教えてあげるよ。この傷はね……勇者との戦いで負った傷なのさ』

『勇者だと!?』

『そう。勇者さ。あたいたち魔族の敵、勇者。あたいは魔王様の命令でその勇者をろう落しようとしたのさ。……この体を使ってね」


 そう言いながら、カラナフィが自分の双丘を強調するかのように両腕でぎゅっと押し上げる。

 たわんとゆれるおっぱい

 それを見た瞬間、俺の体を稲妻が駆け巡った。


『なるほどな。サキュバスらしい考えだ。しかし、その傷を見るに勇者に返り討ちにあったというところか?』


 俺は震える体を無理やり抑え、体中を駆け巡った稲妻の終着地点である部分を覆う下着パンツをそっと脱ぎ捨てながらも努めてクールに振る舞う。


『ちょ!? なんであんたはパンツ脱いでんだい?』

『ちっ、感づいたか。気にするな。ちょっとした生理現象が起こったにすぎん。それより話を続けよう』


 俺はパンツを投げ捨て、先を促す。


『ま、まあいい。……えっとだな、そうさ。あんたの予想通りさ。勇者の奴はあたいの体にはまるで興味を示さず、逆に勇者のみが使える聖なる力であたいに傷を負わせたのさ。……あたいは逃げるだけで精一杯だったよ。そしてこの森の上を飛んでる時に気を失っちまったみたいだね。気づいたらあんたが――ガイアだっけ? まあ、あんたが目の前にいたってことさ』


 ダメージを負った状態で森の上空を飛んでいる時に気を失い、底なし沼に落ちたってことか。どうやら底なし沼で腕をバタバタさせていたことは憶えてないらしい。そのまま忘れていてくれると俺としてはありがたい。


『なるほどな。だいたい分かった。しかし……いかに勇者とはいえ、サキュバスの――貴様の誘惑に耐えるとはなかなかの意思の強さだな。さすがは勇者。といったところか』


 こんなエロい体を前にして、その誘惑に勇者とやらは耐え切ったのだ。

 それだけで強い意志を持っているのが分かる。


『ああ、あたいもそう思うよ。魔王様からは『勇者は生娘を好む』って聞いたから、夢魔族からまだ……け、経験のないあたいがわざわざ選ばれたってのにさ。これじゃ仲間のみんなに合わせる顔がないよ。……あんなガキに返り討ちにされるなんて……』


 ほう。こいつはサキュバスのくせに『処女』なのか。これは驚いた。なんせサキュバスはみんなビッチだと思っていたからな。

 だが、それよりも驚いたのが、「勇者がまだガキ」というところだ。きっとゲームやラノベよろしく十台半ばの童貞チェリーなのだろうが、思春期真っ只中なその歳でエロイ体の誘惑を振り切り、その上、高ステータスのサキュバスを撃退するとは末恐ろしい。

 これは是非ともその勇者とやらの情報も聞き出さなければいけないな。


『ガキに返り討ち……か。勇者の歳はいくつだったのだ?』

『ふっ……あたいを笑いたいのかい? まあいいさ、好きに笑いなよ。…………九歳だよ』


 カラナフィがそう言って自虐的に笑う。

 本人は九歳の子供すらろう落することが出来なかった自分を恥じているようだが…………、


『ふう。やれやれ、貴様はバカか?』

『な、なんだい急に!? なんであたいがバカなのさ?』

『バカだからバカと言ったのだ。九歳だと? そんなおティンティンのもう一つの使い方を知らないガキに迫ったところで誘惑出来るわけがなかろう! あと五年は早いわ!』

『そ、そうなのか?』

『当たり前だ!』


 勇者の年齢が九歳。

 そんな毛すら生えていないガキにおっぱいポロンしたところで、露出狂の変態としか思われなかったはずだ。勇者が『聖なる力』とやらを使えるのなら、返り討ちにあって当然だろう。


『うぅ。で、でも姉さまたちは『男は胸を見せればイチコロ』だと言ってたんだよ? あたい恥ずかしかったけど、が、がまんして胸出したのに……なんか勇者がピカーって光って、その光があたいの方に迫ってきて……クスン。あ、あたいだって頑張ったのに……』


 目に涙を浮かべ、悔しそうに拳で地面を叩くカラナフィ。

 なんだろう? 『ビッチ』と聞くと嫌悪感を抱くが、『処女ビッチ』と聞くと、けっこうアリなんじゃないかと思えてくるこの気持ちは?

 九歳のガキにおっぱい出して迫っちゃう、そんなおっちょこちょいなところも何だか可愛く思えてくる。


『まあ、生娘ならば男の扱い方を知らなくて当然だ。貴様は精一杯頑張ったのだろう』

『そ、そうか? やっぱりそう思うか?』


 カラナフィが顔を上げて嬉しそうに俺を見る。


『ああ。貴様には『経験』が足りなかっただけなのだ。誰も貴様を責められんさ』

『やっぱりそう――――』


 俺は自分の腰ひもに手をかける。


『経験というものはやっかいだ。どの世界でもそうだが、新入りが肩身の狭い思いをするのは経験者に比べ、圧倒的に経験値が足りないからだからなぁ』


 するりと落ちていく俺のズボン。


『…………おい。ちょっとま――』

『ならばどうするか? 答えは簡単だ。自分もなればいいのだよ。その経験者にな!』


 そして上着に手をかけ――、


『ちょっと待てぇーッ!! なんで……なんでお前服を脱いでんだよ!? なに全裸になってるんだよ? 服を着ろ―!!』


 カラナフィの絶叫が周囲に響き渡った。



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