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チート能力もらって転生したらオークだった  作者: 霜月緋色(腱鞘炎発症→安静中)
OO93(オークさん) BUTARDUST MEMORY 編
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第二十八話 カラナフィ、星の海へ その2

 夢魔族すべてを引き連れ、魔王城を出る。

 この提案は、カラナフィを大いに驚かせた。


「逃げるって……そ、そんなっ!? いったいどこに行くっていうのさっ?」

「どこでもいい。貴様たち夢魔族にとってこの城から――ドライゼから離れることこそが重要なのだからな」

「……あたいたち夢魔族が?」

「そうだ」


 俺は頷き、視線をおっぱいに固定しつつ説明をはじめた。


「ドライゼが旧エギーユ勢力をまとめ上げるには、まだ暫く時間がかかるだろう。力こそが全てとはいっても、貴様のように前魔王、エギーユを慕っていた者も多いだろうからな」

「……ちょっと、どこ見てるのさ」

「ならばこそ、一族ごと城を出る好機は今を置いて他にない!」

「……おい、聞いてるのかい?」

「幸いにもサイサリス軍と戦争中だ。八魔将であり、先の戦争で一番の手柄をあげた貴様が、『一族を連れてサイサリス軍を偵察してきます』とでも言えば、地盤を固めたいドライゼとしては喜んで許可を出すだろうよ」

「……まったくぅ」


 ベッドに腰かけているカラナフィが、掛け布団代わりの毛皮を掴み、胸元を隠す。


「チッ」

「いま舌打ちした? ねぇ舌打ちしたっ?」

「黙れ。それよりどうだ俺の提案は? このまま魔王城に残り、ドライゼに貴様の実力がバレでもしてみろ。貴様のせいで夢魔族全てに迷惑がかかるぞ」

「…………うん。わかってるよ」

「フッ、どうだか」


 俺は肩をすくめ、さりげなくカラナフィの隣に座る。

 視線を遮られたのなら、次は触感で楽しもうと思ったからだ。

 俺は考え込むフリをして腕を組み、肘先をおっぱいに向けた。


「王座の間での発言から考えるに、ドライゼは『力』を重要視しているようだな」

「ああ、ドライゼ王子は昔から『力ある者こそ王に相応しい』っておっしゃっていたからね。『力ある者に従うのは当然のこと』とも」

「それはつまり、弱い者には何をしてもいい、ともとれるな」

「…………」

「フッ、当たりか」


 俺はやれやれとばかりに首を振り、ついでに肘先でおっぱいをつつく。

 カラナフィは思いつめた顔をしているだけで、俺の戦術にはまるで気づいていなかった。


「カラナフィ、貴様は俺のおかげで今の地位を得ているだけにすぎん」

「そんなこと……そんなことっ、あたいだってわかってるよ!」

「だが地位を得た以上、責任もある」

「……ああ」

「選べ。このまま魔王城に残り、夢魔族をドライゼのオモチャにさせるか、それとも夢魔族の尊厳とか命とか、あとなんかいろいろを護るため、夢魔族を連れてここから飛び出すか。さあ、選ぶがいい!」

「うぅ~~~……」


 長い長い長考の後、カラナフィは決断を出した。


「……わかった。あたい、夢魔族を連れて魔王城を出るよ……」





 カラナフィがドライゼに、


「さ、サイサリス軍を偵察してきます!」


 と進言したところ、


「カラナフィよ、先の戦ではサイサリス六魔団長の内、四人までを打ち倒したそうだな?」

「は、はひっ!」

「我は強者を好む。それが強い女ともなれば……猶更な」

「ははは、はひっ!!」

「ククク、いいだろう。夢魔族を連れて偵察に行くといい。貴様ほどの猛者が行けば、サイサリスへのけん制にもなるだろうからな」

「は、はひっ! がんばりゅまっちゅ!」


 といった感じで許可が出だ。

 まあ、カラナフィは噛み噛みだったがな。


「それでお前さん、次はどうするんだい?」

「食料を集めれるだけ集めろ。なぁに、新魔王の許可があるのだ。過剰なまでに集めてやれ」

「わかったよ!」


 カラナフィは部下に指示を出し、いくつもの馬車がパンパンになるほど食料を集めさせた。

 他にも野営道具や騎獣なども限界一杯まで集めさせている。

 こんなにも自由に物資を集められるのは、主に俺の活躍で六魔団長をボコったからである。

 

 夢魔族の総人口が八百人ほど。

 八百人分の食料などを五日で集めさせ、俺はその間にジュディとエリーにいくつかの指示を出しておく。


『頼んだぞジュディ、それにエリーも』

『まっかせてよガイア!』

『あたすとジュディでなんとかやってみるよぉ』

『ありがとう。無理だけは……しないでくれよ』


 俺は二匹の手を握り、眼に涙を浮かべる。

 本心では無理どころか死んでも必ずこなせぐらいは思っているのだが、それを顔に出すほど愚かではない。


『そんな悲しそうなしないでよ。大丈夫、あたしはガイアのところに戻ってくるわ。そうでしょエリー?』

『んだ。あたすとジュディはぜってぇにガイアのとこに戻ってくるから、待っててけんろ』

『……わかった。俺はふたりを信じて待ってるからな。だから……だから絶対に戻ってくるんだぞ! 絶対だからな!』

『ええ!』

『任せてけろ!』


 二匹が俺に抱き着いてくる。

 しばしの苦悶。

 やがて、俺の体から離れたジュディがビッチェルに顔を向けた。


『ビッチェル、ガイアのこと頼んだわよ』

『かっかっか。まかせんしゃい』


 俺の密命を受けたのはジュディとエリーの二匹のみ。

 ビッチェルは万が一の時を考え、俺の護衛(身代わり)として共に行動する予定だ。

 そして、太陽が顔を出しはじめた早朝。


『じゃあ、気をつけてな』

『すぐに合流するわ。待っててねガイア』

『んだば、行くっぺジュディ』

『ええ!』


 俺は二匹を見送り、その日の午後にはカラナフィとビッチェル、それに夢魔族を連れて魔王城から出ていくのだった。

 新たな魔王、ドライゼから逃げるようにして……。

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