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who am i?  作者: 蓮根
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can you tell me about me?

 好みは無い方、でも嫌いな物はある。いろいろ、それが食べ物だったり人だったり。朝子ちゃんは嫌いじゃない、好きかと聞かれたら少し考える。なんでか?やっぱり同性愛者と勘違いされたくなというのもあるけど、私の『好き』がよくわからないのも理由の一つである。とりあえず、朝子ちゃんは普通のたぐいに入る。

 『好き』って何?『嫌い』は明確にわかるのに『好き』という感情には素直になれないでいる。それに比べて、朝子ちゃんは『好き』『嫌い』がはっきりしているし、またその変化とかもはっきりしている。私とは正反対。『好き』とか『嫌い』とか正直あまり考えたことなかったんだよ。幼なじみの子が転校しちゃうときも、周りのみんなは涙を流して見送った。だけど私は涙が出なかった。あぁ〜行っちゃうんだ程度。悲しいとか、寂しいとかあまり感じなかった。幼なじみとは仲は悪い方ではなかった。と思う。嫌いではなかった、でもこういう部分が気に食わないとかはあったな。そのもそも悲しいとか寂しいとかも正直わからない。私は実を言うと何にも執着が無いのかもな。あと、そんな感情をもちあわせていたとしても、それを表現するのに私は言葉とかが足りなんだと思う、それと表現ができない、考えれば考えるほどなんかよくわからなくなってきた。まぁどうでもいや。何にも興味が無いけど考えるの嫌いじゃない。これだけわかれば十分な考察結果だろう。そもそも私がどうしてこんなことを考えているかというと、こないだ珍しくテンションが高かった私は、お化けが嫌いな朝子ちゃんにおぼけのふりして驚かしたら、大泣きされたあげく「茜なんて大っ嫌い!」と叫ばれたのがきっかけだ。驚いたときの顔を思い出すと今でも少し笑える。私、驚かすことが嫌いじゃないってことがわかった。これも昔の私からすれば大きな変化と見てもかまわないと自分で自分を考察していて思う。

 

 某月某日、進路についての集会が学年であった。進路を決める際、いろんな考えがあるだろう。安定した生活が送れる職につくためのための有利な学科に入るとか、自分な好きなことや、やりたいことを追求して行くとか、自分のなりたいものになるための勉強のための学部とかなどなどあげればきりがない。配られたアンケートに私は白紙で出すのもなんなので、適当に自分の得意な教科のことを少し書いて提出した。一方まだ語学が微妙な朝子ちゃんは隣にいる私を頼りたいようにしているが、こないだの暴言を気にしているのか話かけたそうだけど、話しかけてこようとしない。私はあえて声をかけなかった。こういうことに私は遭遇することが滅多に無いのでどうすればいいのかわからなかったのが本音だ。


 進路についての集会後しばらくたって、私たちの仲もなんとか戻りつつあるとき、私は朝子ちゃんとの会話で彼女の逆鱗に触れてしまった。

「朝子ちゃんは大学とか決まってる?」

朝子ちゃんはは少し考えた後に首を横に振る。少しいつもより機嫌があるそうだ、なんで機嫌が悪いのか私には皆目検討がつかない。私はこれ以上は話しかけないように自分のベットに座ってパソコンを開き適当なニュースの記事を見る。しばらくすると朝子ちゃんの方から話しかけてきた。

「茜は、行きたい大学決めたの?」

「ん〜まだかな、なりたいものがないから決められないっていうか。正直、勉強なんて頑張っても意味ないし」

「なんでそう思うの?」

今の時期はちょうどテスト期間中だ。少し朝子ちゃんの気に触れたかと思ったが私は特にかまわず言葉を続けた。

「今度のテスト頑張ったてもう私単位十分あるし、なんでかしらないけど。勉強なんてつまらないし、しても意味無いかなって。いつも朝子ちゃんもだるいっていってるじゃん」

朝子ちゃんは黙り込んだ。珍しいこの現象に私は少し続きが見たくなった。私は興味本位で蜂の巣をつついてみた。

「別にいいよ、人が違うんだから考えも納得いかないのは当たり前なんだから、思うとこがあるのは間違ってないよ」

空気をもとから読むのがうまくない私は自分の口から出た言葉の内容を理解しないでいた。しばらくすると、朝子ちゃんからいつもと違う雰囲気が包んだ。

「じゃぁ、言わせてもらうけど。私は茜じゃないから茜の気持ちも苦しみもわからないよ、それと一緒で私の気持ちなんてわからないでしょ!?わからなくてもさ、わからないなりに言葉選ぶとかないの?正直いつもいつもあんたは一言多いの!私も茜を知らず知らずのうちに傷つけてるかもしれない。こんなのただの八つ当たりかもしれないけど、茜のそういうところ大嫌い。なんでもっとあいての気持ち考えられないの?」

人を怒らせたのはいつぶりだろう?そして人に説教されたのはいつぶりだろうと真っ先に考えてしまった私はやっぱり朝子ちゃんの嫌われる要素がある人間なのだろうか?私は思わずこらえきれずに笑ってしまった。

「何がおかしいの?」

わからない、私でもわからない。朝子ちゃんは気持ちの消化不良のままシャワーのため部屋を出て行った。私はベットに転がって先ほどの出来事を思い返す。やっぱ、謝った方がよかった方がいいのかな?考えてみたら100パーセント近く私に対する嫉妬だということがわかる。でもそれを理解しないで火薬庫に火をぶち込んだのは私だ。あぁこの感じなんだか新鮮。朝子ちゃんは本当に面白い、私の観点がおかしいのかもしれないけど、彼女は今までであってきた人の中ではまともな方。だけどなぜだろう彼女といると、何かを見つけることができるような気がする。そういえば、彼女と会う前と比べてもうずいぶんと屋上には行ってないな。少なくとも彼女と出会ってから私は退屈していなということがわかる。やっぱり謝った方がいいのかなこれからも多分同じ部屋で生活して行く訳だし私はそんなことを考えながら朝子ちゃんがシャワーから帰ってくるのを待った。

 だけど就寝時間が近くなったにも関わらず朝子ちゃんは帰ってこない。すねて違う人の部屋に潜伏しているのかとそんなことを考えながら私は、心あたりがある部屋を手当たり次第探してみることにした。だけどどこにもいなかった。念のためシャワールームも見に行ったがいなかった。心当たりのあるところを手当たり次第探したが、どこにも朝子ちゃんはいなかった。私はあきらめて部屋に戻ったがそこにも朝子ちゃんの姿は無かった。心配を通り越して、少しどうでもよくなった私は普通に床についた。


 翌日は休日でみんなのんびりしている。朝、朝食に行っても朝子ちゃんはいなかった。周りの人々も何も気にしていな様子だ。もしかしたら今まで私といた朝子ちゃんは幻でお化けだったのかもしれないと考えてる私はだいぶ混乱している。私らしくない、わかっているけどなんだか少しだけ心がざわつく。こんなこと、初めてだ。私は朝食が終わると同時に寮の自分の部屋に戻り朝子ちゃんがいないかを確認した。やはり朝子ちゃんはいなかった。私は、理由はわからないけど自然と体が屋上へと向かっていた。久しぶりに訪れる屋上の重い扉のドアノブに私は手をかけた。そしてそっとそれに力を入れてドアを押すと朝日と一緒に冷たい風が入ってきた。少しを遠くを見ると朝子ちゃんがいた。

「朝子ちゃん?」

私は彼女の名を呼ぶ、だけど彼女は私に気がつかないのか無視し続ける。私はそっと彼女に歩み寄る。手の届く範囲まで近づくと朝子ちゃんは私を見る。

「何してるの?」

いつもの明るい雰囲気が無い、今の彼女からは何も感じない。いや感じることができない。

「この状態を、言葉にするなら。現実、逃避かな」

言っていることが少し前に自分に似ているので、私はまさかと思う。でも、まて。たかが進路の話でここまでこなくでもいいのではないか。確かに全学生にとって進路とは誰もが通る高くそびえ立つ登竜門だが、彼女はそれから逃げようとしているむしろ自身の人生から逃げようとしている。私は思った。少し前までの私がそうだった。生きることが何の意味が無いと思っていた。何にも興味が無くて『夢』が無くていつ死んでもかまわないと思っていた。でも彼女とであってから私は自分自身に初めて目を向けた。そのとき、初めて好奇心という物に少し触れたような気がした。『私は誰』なのだろうとはじめて思った。きっとこの答えは彼女無しでは答えを出せないだろう。それを教えてくれた彼女が今目の前から消えようとしている。彼女が進路に対してどのようなトラウマがあってそれでどれほど苦しんでいるかどうかなどわからない、私は今の彼女に生きていて欲しいと思っている。

「やめて」

とっさに出た言葉がこれだった。朝子ちゃんは顔色一つ変えない。

「逃げないで、戦ってよ。敵前逃亡なんて、私が知っている朝子ちゃんにはらしくないと思う」

「その言葉そっくりそのまま返すよ」

私ははっとなり、その場に立ち尽くす。朝子ちゃんは私に近づいてきて私をそっと抱きしめた。私は朝子ちゃんを抱き返すことができなかった。数秒間か私を抱きしめた朝子ちゃんは私の顔を見て笑顔で部屋に戻って行った。私はなぜだかその場で座り込んでみた。空を見上げるといつも通り雲が流れていた。そして朝子ちゃんが言っていたことを思い出す。そしてなぜだかわからないけど、凍っていた涙の氷が溶け出したかのように、涙の雫が私の頬を伝った。

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