序章~大陸の過去と現在~
この物語は地球ではない、こことは違うある世界でのお話。
”ミュール大陸”、彼らが住む大陸はそう呼ばれていた。
この大陸でも、当初は『科学』による文明があり、非常に栄えていた。
地下に都市を築き、空に人口の浮遊大陸すら建造するほどの技術が存在していた。
しかし、『科学』文明が最盛期を迎えた頃であろうか。
突如、都市という都市に”光”が降り注ぎ建物を、人を、草木を焼きつくした。
後に生き残った人々が”裁きの閃光”と呼び恐れた災害であった。
この災害で生き残った人々は少なく、失われた知識や技術は数知れなかった。
事実上、この時を境に『科学』文明は崩壊したのである。
・・その後、長い年月を経て人々は慎ましいながらも穏やかに文明を再建していった。
その過程で、『科学』に代わって人々が利用するようになった力があった。
『魔術』、全ての生命が持つマナを利用する新たな力であった。
この時になると人々は、共通の年号として”法暦”を用いて暦を数えるようになっていた。
人々が魔術を用いるのが当たり前になり始めた頃になると、人口も増加して複数の国を誕生させるに至った。
『科学』文明時代の黄金期が、再現されようとしていたのである。
この時、法歴215年。新たな繁栄と平和が続くかに思われ始めた時であった。
だが、人は忘れる生き物である。国が増えることによって争いも増えていった。
小国が統合を繰り返し、飲み込まれては分かれてを散発的に繰り返すようになっていった。
そして、それが頂点に達したのがそれから50年後。
法歴265年。
大陸を真っ二つに分けた『東西戦争』が起こったのである。
この時期になると、ミュール大陸には6つの大国が幅を利かせるようになっていた。
大陸北部の軍国、「シャナル帝国」。
大陸中央の商業国家、「カサルバ」。
大陸東部の魔術先進国、「フィルサイド公国」。
大陸南部の部族統合国家、「ギレイト連邦」。
大陸西部の技術立国、「アリアス王国」。
大陸北西部の山岳国家、「ドルワナ」。
この6カ国が、西と東に分かれて争った。・・云わば日本の関ヶ原と同じようなものであった。
なお、簡単に分けると以下のように分かれたわけである。
西軍:「アリアス王国」、「ドルワナ」、「ギレイト連邦」
東軍:「シャナル帝国」、「カサルバ」、「フィルサイド公国」
まさに、この大陸での関ヶ原である。
だが、問題であったのはこの戦争が10年間続いたことであろう。
しかも、たがいに引こうとしなかったために犠牲は増えるばかりであった。
戦いを有利に進めるために技術立国であるアリアス王国は復活させたばかりの技術を戦場に用いるようになった。
『科学』技術、その一つである鉄砲。
長年の研究と山岳地帯で出土した遺跡物をもとに復元・量産したものであった。
ただ、これは私たちの世界でいう火縄銃であったため連射などの効率は良くなかったが。
だが、善し悪しはともかくこれが再び『科学』が大陸に芽を出した瞬間でもあった。
そして、多大な犠牲を払いながらも法歴275年に東軍が勝利することで10年にわたる戦争は終結した。
だが、長期戦争で失われた時間は大きかった。
西軍諸国家は、独立は維持できたものの過大な賠償を背負わされ、復興支援すら行われなかった。
一方、勝ったはずの東軍も戦後になって隷属していた国々の分離独立が相次ぎ、国力が大幅に低下することになったのである。
その独立した小国の中に、『シルバニア公国』といわれる国があった。
そして、舞台は法歴285年。
戦争終結から10年という月日が流れようとしていた頃、そのシルバニア公国が物語の始まりの地。
ミール・アルガデスという少年による物語の。
こんにちは、光帝といいます。処女作ですので誤字・脱字があるかも知れませんが、読んでいただければ幸いです。