可愛いからって何でも許されると思うなよ
Xの企画「朝チュンで始まる全年齢物の短編」で書きました。
腰元で怪しく蠢くモノの存在にぼんやりと意識が浮上する。温かくて柔らかいそれは次第に動きを激しくし、私は渋々寝返りを打った。
「……どしたの? もう起きちゃった?」
そっと頭を撫でてやると、甘えたように擦り寄ってくる姿は可愛いけれど。
「ね、まだ早いよ。もう一回寝よう?」
カーテンの外はまだ薄暗く、夜も明け切っていないのが分かった。スマホの画面をタップすれば、今は午前4時……流石に早すぎる。
昨日も夜中まで、布団の中で散々暴れていたのだ。付き合わされたこっちも疲労困憊だし、申し訳ないけれど私は寝不足なのである。
「ほら、こっちおいで。ぎゅうしてあげるから」
抱き寄せた身体は熱くて、ペロリと唇を舐められる。フフっと笑って私も鼻先にキスを返し、ゆっくりと瞼を閉じた。
◇
「──ああっ! シロ、また布団で漏らしちゃったの?!」
だからさっき教えたでしょ、とでも言いたげな顔でちょこんとおすわりしているシロは可愛い。偉い。うちの子一番。
「念の為に防水シーツにしといて良かったぁ」
すっかり朝日が昇りきり、今日は天気も良さそうだ。洗濯物もこの調子ならすぐに乾くだろう。
バタバタと動き始めた私を横目に、まだ温もりの残る枕の上でくるりくるりとポジションを探るシロ。ついでにホリホリして、ガリガリして、クンクン匂いを嗅いでからペタンと伏せをする。
朝ごはんの時間まではもう少しあるのだ。それまではここでゆっくり寝て待とう……といったところだろうか。全く身勝手な犬である。
「あっ、こっちも汚れてる。っていうかさぁ、この状態でアナタ、さっき私の顔面踏んでいったの? わざと? わざとでしょう! このっ、このこのこの~っ!」
わっしゃわっしゃと毛をかき回してやれば、満更でもなさそうな顔をして舌を出しヘソを見せてくるのだからたまらない。
「んもう~っ! 悪い子は、こうしてこうだっ!」
柔らかい腹を吸い、頬をぐりぐりと擦り付ける。ナッツのような、ポップコーンのような、癖になる香ばしい匂い。
どんなに悪戯をされても、このふわふわした生き物の笑顔ひとつで幸せになってしまう。
ただ……換毛期の犬の腹に顔を擦り付けると大変なことになるからやめておいたほうがいいと、身をもって知ることになるのだった。
ほぼ実話です……!




