八卦院 6
「や、遊佐が勘が良すぎるんだって」
そんな二人のやり取りを見ていた遊佐の頭にひとつ考えが浮かぶ。
「もしかして八卦院は狐か狸なのか? いや、白いから狸というよりは狐か? そう言えば白狐は商売繁盛がどうのこうのとか……」
「ユーズーリー」
眉間にしわを寄せ、八卦院は子供には不似合いな凄みのある低い声を発した。
さすがのユズリも焦ったように弁明する。
「ち、違っ。これは本当に遊佐の勘が異常なの! 普通の素人だったらそこまで考え及ばないって!」
「ああ、その様子だと本当に白狐なのか」
「! ほら、八卦院がわかりやすすぎるんだよ!」
ユズリはこれ幸いと八卦院に言い募る。
「もっとポーカーフェイスで上手いことぼかしちゃえばよかったのに、あからさまに怒ったりするからいけないんじゃない」
八卦院は一瞬言葉に詰まったかと思えば、開き直ったように胸を張った。
「黙れ。そもそもお前が余計なことを言ったから流石の俺も動揺したんだ。どうしてくれる」
「うわー責任転嫁。大人げない」
形勢逆転したユズリは嫌みったらしく言う。
「そんなだから代表者の中で一番わかりやすいとか言われるのよ」
「なっ」
八卦院は悔しげに顔を歪めた。その様を見て、ユズリは勝ち誇った表情で武器の物色に戻って行った。
後に残された遊佐は横目でそっと八卦院の様子を伺った。怒りに燃えているのではと思いきや、意外にも彼は悪童を見守る大人のような顔でユズリを見ているだけだった。
「……俺、余計なことを言いすぎたか?」
遊佐の問いかけに八卦院は顔を上げずに答えた。
「いや。お前はただ賢くて勘が良かった。それだけだ」
あっさりとした口調で八卦院は言った。そして遊佐を見上げた。