表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷い夜話  作者: 初瀬 泉
50/65

六条 7

「まぁ……要領が悪くないのは認めるんだけどさ。さっきも大男が落ちてきたんだけど、あれあんたでしょ?」

「大男?」

 六条は頬に右手を添えて小首を傾げてみせた。覚えがないと言わんばかりに不思議そうな顔だ。

「上半身裸で、お腹のあたりに傷を負った男。……どう見てもこの塔から落ちてきたんだからあんたしかいないでしょ」

「ああ」

 六条は声を上げて手を叩いた。

「上半身衣服も纏わずに此処まで昇ってこられた無粋な方のことかしら。ええ、それなら覚えがあってよ。何せあの風体ですでしょう? 変質者かと思って咄嗟に自己防衛に走ってしまいましたわ」

 自己防衛で人を十二階から突き落としたのか、この女は。

 彼女もやはりまともではなかった。

「まったく婦女子の前で服装も整えずに……ああ、恐ろしかったですわ」

 わざとらしく六条は身震いしてみせる。

 恐ろしいのか。それは突き落とされたというあの大男こそが言いたい言葉だろうに。

 いや……突き落とされ?

 そうだ。あの三メートルはあるだろう大男は突き落とされたんじゃなかったのか。その上腹の横一文字に刻まれた傷からは出血していた。それも彼女が、どう見ても腕力があるようには見えない六条がやったと言うのか。

「自己防衛であれだけの手傷を負わせて突き落としたら普通は過剰防衛になるわよ」

 ユズリがぼそりと呟く。

 それと聞いて六条はにこりと艶やかに微笑んだ。

「問題ありませんわ。わたくしは普通ではありませんもの。この町における様々な特権を与えられるからこそ代表者などを務めておりますのよ?」

「いくら代表者がある程度免罪特権があるからってやりすぎな気も……」

「六条ーっ! いるかぁ!?」

 硝子の扉が開かれると同時にドスの聞いた声が辺りに響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ