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迷い夜話  作者: 初瀬 泉
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八卦院 2

 少年はしげしげと遊佐を眺め、「ユズリの相手じゃ大変だろう」と言ってきた。

 まったく少年の言うとおりだったので素直に頷くと、ユズリに後頭部を軽く小突かれた。

「あんた達二人して、それどういう意味よ」

「そのままの意味だ」

 子供らしからぬ落ちつき払った態度で少年は言い、仕切り直すように膝の上に頬杖をついて遊佐を見た。

「それで小僧の名前は?」

 小僧というのは遊佐のことらしい。明らかに自身より年少なのだが、この町では当たり前の常識など通用しないということを遊佐もいい加減良く知っている。なのでわざわざ少年の小僧呼ばわりに反発したりせず答える。

「遊佐」

「あんた、どう見ても子供に小僧呼ばわりされてるんだから、そんなに素直に答えるのもどうなのよ?」

 案の定ユズリは一般常識の範囲で遊佐を測ろうとするが、遊佐自身はそこまで常識人ではなく、また順応性も高いほうだと思っている。むしろそう言うユズリのほうが自分よりもよほど常識的なのかもしれない。

「でもこの子供は子供じゃないんだろ?」

 遊佐がそう言うと、少年は金色の両目を大きく見開いてからまるで猫のように笑ってみせた。

「へぇ。お前はまだこの町に通って日が浅いんだろう? それでよくお前たちの世界の常識から外れて考えられるな。ユズリより見所あるぞ」

「ちょっと。何で私よりこいつのほうが見所あるのよ。失礼なこと言わないでくれる?」

 ユズリの不平にも少年はどこ吹く風だ。

「この町では常識を捨てることが上手くやっていくコツだからな」

「完全に常識捨てたら残るは無法だけじゃない」

 不満げに言うユズリの言葉を大人びた笑みひとつで軽く流し、少年は改めて遊佐を見た。

「俺は八卦院はっけいん。この町で金物屋を営んでいる。ありとあらゆる金属を扱っているから、小僧も何か金物が要り用ならうちに来い」

「八卦院はこんなナリしてもう数百年単位でこの町にいるらしいわよ」

 まだ顔に不満の色を滲ませながらユズリは言った。

「私たちと同じ世界出身だしね」

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