クチナワ 11
つまり、そういうことだったのか。ユズリがクチナワにだけ妙に好意的だった理由。
(あいつも人並みに他人を好きになったりするのか……)
人のことを言えた義理ではないがやはり意外だ。
遊佐が困惑しながらも思考を巡らせていると、一度は消えていった方から足音が聞こえてきた。
小刀のようなものをいくつか抱え、重いのかよろよろと揺れる人影。ユズリだ。
「ちょっとクチナワー。あんたもやりすぎだって」
無数の小刀を強引に遊佐に持たせ、ユズリは微妙に青い顔でクチナワの前にしゃがんだ。
「大量でよかったじゃねえか」
クチナワは淡々と答える。
それに対しユズリは背中を丸めて重苦しい息を吐いた。
「……どんな火薬だが何だかを使ったか知らないけど、連中ほぼ五体バラバラだったんだけど」
「殺られる前に殺れ、が俺の営業方針でな。まぁここじゃ死なねえが」
とんでもない営業方針だ。そもそもそれは営業を前提の上に掲げるべき方針なのか大いに疑問だ。
「あーもう。そんなだから冥府にも目をつけられるのよ。折継じゃあるまいし、もう少し穏便に済ませてよ」
「穏便に済ませたらこっちが殺られるだろうが」
何でもないことのように言ってクチナワは煙管を口にくわえた。
「そりゃアナタ様が常日頃から他人の恨み買うようなことに首突っ込んでるからでしょ? もう少し自重したほうが身のためよ?」
「性分で」
受け流すようにクチナワは答えた。手にした煙管からは遊佐も知る煙草とは違った不思議な香りのする薄緑色の煙が漂っている。
「煙草もやめてよ」
ユズリが抗議するとクチナワは少ししてから煙草盆に煙管を置いた。
「これはお前らの世界のやつと違って特に人体に害のない嗜好品なんだけどな」