折継 9
「あんたが人を怒らせるようなことばかり言うからでしょ!? ……そうだ! あんた私が目をつけてた刀まで持って行ったでしょ!? あれは私が買うつもりだって言ったでしょ!」
ユズリの視線の先には折継の手にある大刀。
折継はあーと声を上げて自分の手元を見た。
「ユズリもこれが欲しかったのか。ごめんなーてっきり違うやつのことだと思って俺が買っちゃったよ。何なら譲ってやろうか?」
明らかに子供を相手にしたような態度に、ユズリは肩を怒らせる。
「っあんたのお情けなんていらないわよ!」
「え、そのためにここまで来たんじゃなかったのか?」
遊佐の呟きに、ユズリの殺気に満ちた視線が飛んでくる。
「違う! こんな奴のお下がりなんてこっちから断固拒否よっ」
「んー何かよくわかんねぇけど、ユズリは刀のために俺に会いに来たわけじゃないのか?」
「あんたになんて会いに来てないわよ! たまたま私の行き先にあんたが存在しただけ!」
「いや……手紙渡すんだろ?」
埒の明かなそうな会話に遊佐が口を挟むと、ユズリは手紙の存在を忘れていたのか一瞬固まり、折継は不思議そうに聞き返してきた。
「手紙? ユズリから? 珍しいな。ラブレター?」
「そんなわけないでしょ! 管理者からよ」
叩きつけるように手紙を渡し、ユズリは横を向いた。
「代表者達に渡すように頼まれたの」
「へぇ。師匠から」
折継は手紙を広げながら見世の壁に寄り掛かった。
「集会か。代表者全員強制参加って随分物々しいなぁ」
「嫌なら代表者なんてやめちゃいなさいよ。私がその後釜についてやるから」
離れた所から憎まれ口を叩くユズリに、折継は楽しげに目を細める。
「ユズリにはまだ荷が重いだろ。ま、俺が管理者に昇格した後は代表者にしてやってもいいけどな」
ユズリのこめかみがぴくりとひきつる。