第百一話
黒い筋が消えた先を辿るように、リンネはしゃがみ込んだ。
「……ここからか」
そう短く言うと、リンネは足を使って、土を慎重に探り始める。
そして、湿った土が少しずつ脇へ退けられていく。
シズクも隣で、どこからか、いつの間にか出していた小さなスコップを使い、警戒しながら地面を少しずつ掘る。
「あの筋が本当に地中へ続いておったなら……」
そうシズクが言いかけた、その時だった。
「……消え、た?」
リンネが土の中を見つめたまま呟く。
「え……?」
二人もリンネの方へと近づいていき、リンネの掘った場所を覗き込む。
さっきまで地面に続いていたであろう黒い筋は、途中で途切れていた。
そこからは、普通の土が続いていた。
「そ、そんな……」
どこにも続きはない。
シズクがスコップで無言のまま掘り進める。
さらに深く。
さらに広く。
それでも、黒い筋はもう現れなかった。
「色まで……消えてます……」
ミリスが息をのむ。シズクはしゃがみ込み、土を一つまみ持ち上げた。
「侵食する菌が死んだ……いや、違うの」
土を指で潰しながら、言う。
「偶然では、なさそうじゃが……」
三人の間に沈黙が落ちる。リンネは周囲をゆっくり見渡した。
木々。落ち葉。湿った地面。
どこを見ても、さっきまで黒い塊があったことを示すものは、もうさっきまで掘っていた浅い部分の土以外、何一つ残っていない。
答えはない。
森は何事もなかったかのように静まり返っている。
風が吹き、掘り返した土の上へ落ち葉が一枚、また一枚と舞い落ちた。




