設定3 ブレイブさんはお尋ね人
NPCなのに名前が付きました。
ってかNPCって表現するの難しいw
と思った回でした。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
あたしは飛び起きた。
「ウィリアム・マーはおるか!!」
扉の向こうで、ドンドンという音とともに大声がした。
馬は鹿に目配せをした。鹿は途端に、うん、と頷きながら、あたしをもう燃えていない暖炉の中へと連れていき、そのまま静かに暖炉の扉を閉めた。
煙突の中に、梯子があった。きっと掃除用のものだろう。あたしはそこを少し上って、そのまま息を潜めた。
「マーは私ですが」
「この者をこの辺りで見てはおらんか!?」
煙突の口から思いのほか、外の声が聞こえる。
「誰ですねん? ……『ブラ』?」
「ブレイブだ! 見つけたら殺せとブラネさまに言われておる」
「ブラさんがブラさんを探しとるんですか。そら面白い!」
「違う!! ブラネ様がブレイブ・ハートマンを探しておるのだ!!」
「そうは言うても、我が家にはおりまへんけどねえ」
馬、いや、ウィリアム・マーさんののんきさとは裏腹に、あたしは心臓の嫌なバクバクが止まらない。
ブラネって。ブラネって……!! 周人じゃないの!! 何で周人が……。 よりにもよって周人が、勇気との結婚の前に、またあたしの前に現れようとしてるなんて……。
だからあたしはさらわれたんだ。
いや、正確には、あたしじゃない。中の人は今は勇気だ。それを、ブラネ、つまり中の人の周人は知らず、あたしだと思っている。そう思うのも無理はない。キャラクターの姿かたちはあたしなのだから……。
これは、非常に面倒なことになった。
「とにかく!! こいつを見つけたら、すぐ我々に知らせるのだ!! そうすればブラネ様よりたんと褒美が貰えるぞ!! 分かったな!!」
「まー」
マーさん、「まー」とか言ってる場合じゃない!!
馬車なのか騎兵隊なのか、とにかくそのようなものが、ガラガラガシャガシャと去る音がした。
しばらくして。マーさんと鹿がそっと暖炉の扉を開けた。
「もう大丈夫やで」
とマーさんは、暖炉の中を覗き込みながら、声に出さない声で言った。あたしはそれを受けて、梯子を音をたてないように降りる。
「すみません、あたしのために、怖い思いさせて。鹿さんも。ありがとうございました」
あたしは小さな声でお礼を言った。
「鹿じゃなくて名前はウェンディや。ブラネ様ちゅーんが、あんたを探してるて。あんたお尋ね人やなあ」
「聞きました」
「誰なんや?」
答えようか迷った。でも、マーさんたちは助けてくれたし、答えることにした。
「あたしの、元彼です」
「あ、ブレイブさん、あんたオトコやけどオトコが好きなんやな?」
「違います」
あたしはぶんぶんと両手を左右に振った。大事なところなので否定する。
「うん?」
「あたし、婚約者と姿かたち入れ替わってるんで。あたし、女の人です。中の人」
「中の人?」
マーさんはますます、分からんというように首を振った。
「あなた、この人本当は女の人みたいですよ?」
やっと、鹿、いやウェンディさんが口を開いた。それでマーさんが、ポンと脚で床を叩いた。
「お、そういうことか。すんまへんな。気づかれへんで。婚約者さんのことも」
「あ、いえいえ、めっそうもない」
「それで、行く当てはあるんか?」
言われて、しばらく考え込んだ。……あ、そう言えば!
「昨日、変なおじいさんに『トランプのJOKERの力を取りに行け』と言われましたが、それがさっぱりどこにあるのかわからず……」
「うーん」
3人して唸ってしまった。いや、「人」はおかしいか(2度目)。
しばらくして、マーさんが立ち上がると、干し草を漁り始めた。そして、何か袋を掘り出す。
「あんたはこのベラリー山を下りて、『アタコンペ』という街に行った方がええな。そこなら武器も売ってるし、宿屋も、教会もあるからな。これは少ないが餞別や。まずは、教会に行ってみることや。ご神託があるかもしれん」
そう言って、マーさんは小さな麻袋をあたしに握らせた。中を見てみると、金貨だった。
「ありがとうございます、マーさん」
こうしてあたしは、山を下りることにしたのだった。
目的地であったアタコンペの教会で、勇気の秘密が待っているとは知らず……。
最後までお読みいただきましてありがとうございました!!




