設定1 あたしは貧しい青年兵
設定2です。
妙なおじいさん登場。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
あたしはゲームの中にダイブした。
途端、ズキズキと頭が痛みに襲われた。
「いったあー……」
と思わず口を突いて出た。
自分の髪を触る。現実のあたしのものよりはるかに短い。
あたし、やっぱり「勇気」だ。いや、ゲーム中ではブレイブ・ハートマンか。そこは確信を持った。
ならば、「あたし」である勇気は、いやゲーム中はトモ・サーワ姫はどこにいる? 探さなくちゃ。
周りを見回した。夜のとばりが降りようとしている。ここは、森の中?
と来たら、まずは泊まれる場所を探さなくちゃ……。 お金は持ってる?
まだ座り込んだまま、いろんなことを考えた。
ポケットらしきものは、この服にはない。麻布でできた服は、泥や血で上下とも汚く、つぎはぎだらけだった。
勇気と相談して、キャラクターデザイナーであるあたしが決めたファッションとは言え、現実出来てみるとこれはない、と思ってしまった。あまりにもみすぼらしい格好ゆえ、ゲームの他のユーザに嫌われるかもしれない。
しかも、さっきの夢の中の騒動で、武器らしきものは皆気絶している間に盗られてしまったらしい。
貧しくも優しい青年兵という設定だったはずなのに、武器を取られていては「兵」ですらない。ただの「貧しい青年」じゃん!!
お金もない。武器もない。でも夜はどんどん迫ってくる。そうこうしているうちに闇深くなってきた。
遠くでカラスが鳴いている。あたしのお腹も鳴いている。
「参ったわね……」
あたしは頭をかいた。
とりあえず立ち上がって、今夜の寝床となるような場所を探そう……。
あたしは歩き出す。
その時だった。誰だかわからないおじいさんのような声がした。
「青年、青年よ……聞こえるか……。今、わしはそなたの頭に直接語り掛けておる……」
「きゃあ!!」
あたしは思わず大声を上げて、びっくりしてその場にへたり込んだ。頭の後ろに圧を感じる。
「そなたはブレイブ・ハートマンか?」
「いや、違うし!」
「……おかしいな。この世を救う最後の勇者、ブレイブ・ハートマンに語り掛けておるはずなのだが……」
と、おじいさんは言った。
『この世を救う最後の勇者』だあーーー!?
シナリオ担当は勇気だ。でもあたしだってその設定は知っている。
このゲームはあくまで、異世界転移してスローライフを楽しむためのものであったはす。それが、どうして……?
「あのお、このゲームって、スローライフを楽しむためのものですよね?」
「ゲーム? 何じゃ、それは?」
おじいさん、ここがゲームの世界だっていう自覚なし。ちょっとやばい。
「とにかく、そなたはブレイブ・ハートマンじゃろ?」
ああもう。説明するのが面倒くさいので、
「はい」
とあたしは言った。
「よかった。なら、『ジョーカ』の力を取りに行くのじゃ!!」
「浄化? の力? ですか?」
と思わず訊いた。
「JOKERじゃ。トランプの」
とおじいさんは言った。
ますます訳が分からなくて
「はあ」
と応えるしかなかった。
「ほっ。嫁が来るでの。わしゃ、眠ったふりをする。それじゃ!」
眠ったふりをするとか、知らんわ。と思っていると、頭の後ろの圧が無くなった。おじいさんの声もそれきり聴こえなくなった。
あたしはまた、独りにされてしまった、見た目、貧しい青年。
この後、分かっていたが勇気が用意したとんでもない設定に、次々と四苦八苦することになるのだった。
最後までお読みいただきましてありがとうございました!!




