放課後デート
「それで、デートってどこに行くつもりなの?」
「知らね」
「…」
この男……自分からデートに誘っておいてノープランなのかよ!
これだからイケメンは。好き勝手やってても女はホイホイ着いてくるってか!
「とりあえずファミレスでも入ろうぜ」
「そうね」
私たちは駅前のファミレスに入ることにした。このファミレスは私のお気に入りで、働いているウェイトレスに可愛い子が多くて目の保養になるのだ。
ウェイターもイケメンが多く、もしかしたらこの店の店長は顔でバイトを選んでいるのかもしれない。
「それで、今日は何で私を誘ったの?」
「付き合うふりしてんだから、周りに付き合ってるってアピールしたいじゃん」
「そう」
それもそうか。私たちは偽装カップルをするのだから、周り対する偽装工作もしなければいけないか。
「それで優子は何食べるの?」
「私、アンタの先輩なんだけど。その呼び方はやめて」
いきなり下の名前で呼ばれたからビックリした。
距離の詰め方おかしいでしょ。私たち出会ったばかりなのに。
「付き合ってるんだしよくね?」
「良くない。本当に付き合ってるわけじゃないから」
「じゃあ、代わりに先輩は俺のこと名前で呼んでよ」
「嫌よ」
「…」
「そんな風に拗ねても駄目よ…」
不覚だ……拗ねた表情をするコイツのことをほんの一瞬だけ可愛いと思ってしまったかもしれない。
「ま、今はいいや」
「この先も名前では呼ばないからね」
「そんなことよりも早く注文しようぜ。腹減った」
自由人すぎるでしょ…アンタが聞いてきたのにもうこの話題には興味ないんかい!
「ちょっと待って。私もメニュー決めるから」
今の時刻は16時過ぎ。昼食は学校で食べたけど小腹は空いている。
エビフライやチキンなんかのサイドメニューを頼むのもアリだが、ここはスイーツを頼むことにした。
「決めた?」
「うん」
「じゃあ呼ぶわ」
「お願い」
涼木がベルを鳴らしたことでウェイトレスが私たちの方に向かってくる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「先輩からでいいよ」
「そう。じゃあプリンとティラミスの盛り合わせでお願いします」
「俺はフライドチキンとカルボナーラとドリアで」
注文を繰り返し確認してからウェイトレスは去っていく。
「ちゃんと食べれるの?」
つい心配になって聞いてしまった。いくら男子高校生とはいえ食べ過ぎでは?
「平気。先輩はスイーツにしたんだ」
「うん」
「甘いもの好きなの?」
「好き」
「俺のことは?」
「普通」
「付き合ってるのに? 俺のことは遊びだったの?」
「だから。それは偽装でしょ」
さっきから何なのよコイツは……私たちの関係は偽物でしょ?
私のことからかって。今日の感じだと本当に私のこと好きみたいに見えるじゃない。
「今度のデートはケーキ食べに行こうぜ」
「どっかでね」
しかもナチュラルにデート誘ってくるし。しかもデート場所は私が好きだと言った甘いもの関連…流石にデートを取り付けるまでがスマート過ぎるでしょ。
モテ男怖っ。
「じゃあ今週の土曜日で」
「早くない? 別に今週じゃなくても」
インドア派の私としては、どうせなら家に引きこもってたい。
「クラスの女子に聞かれそうだし。週末何してたか」
「別に今日のことでも」
「週末にデートしてた方がカップルみたいじゃん」
「た、確かに…」
それはそうかもしれない。
「い、嫌というか…」
正直なところ、私たちは偽装カップルを始めたばかりなのだから、嘘だとバレない為にもデートはした方がいいと思う。
しかし、折角の休みをコイツと会うために使いたくはない。休日は家でゴロゴロしていたいのだ。
「じゃあ良いじゃん」
「でも。ほら、私ってあんまりお金がないから」
これは我ながらいい言い訳なのでは?
「じゃあ俺が出す」
クッ…そうくるか。即座にそんな返事をするということは、もしかしたら涼木は金持ちなのかもしれない。
「いや、それは悪いし」
「外でのデートが嫌なら」
「嫌なら?」
「先輩の家でお家デートする?」
「外でのデートでお願いします!!」