合コン
「優子」
「何?」
「アタシ合コンに行ってくるわ!」
「合コン?」
「そう! 隣のクラスの友達が誘ってくれたの!」
綾香が嬉しそうに笑顔で報告してくる。
合コンって言ったら大学生とか大人がやっているイメージだったけど、高校生でも合コンとかやるんだ。
まあ、高校だろうが大学だろうが社会人だろうが前世の私には全く縁のないイベントだったけど…
「良かったじゃん。相手は分かってるの?」
これで綾香に理想の彼氏が出来たら私も嬉しいけど、前世が非モテだったからか、私は合コンに対していいイメージがない。
だから、チャラいヤリモクの男たちが来るんじゃないか心配だ。
「T大の人たちが来るんだって!」
心配だから綾香に合コン相手を聞いたのだけど……相手が男子大学生と聞いて余計不安になってしまった…
「大丈夫なのそれ。なんか危なくない?」
悪い男にお持ち帰りされないかな心配だ。
「お昼にファミレスに行くだけだから平気! それに1人だけ写真を見せてもらったんだけど、イケメンだったから楽しみ!」
「良かったじゃん。頑張ってね」
「うん!」
凄く心配だけど、私が止めるような事でもない。私は彼女の親ではないし、もし綾香がこの合コンで失敗したとしても、いい人生経験になるかもしれないし。
どのみち大学生になったら合コンに参加することなんてあるだろうし。
とは言ったけれども…やっぱり気になるもので…
「それで俺を呼んだの?」
涼木を呼んで合コンの様子を見ることにした。
「そうよ」
「それでどうするの?」
「合コンが行われるファミレスに潜入するわ」
「どのファミレスか知ってんの?」
「場所は知ってるわ。綾香が言ってたから」
「へー。でも俺たちが近づいたら先輩の友達にバレるんじゃない」
「大丈夫よ。変装するから」
「あー、だから先輩いつもと髪型違うんだ」
「少しでもバレないようにする為に変えたのよ」
このあとさらにマスクと伊達メガネをつける予定で、私だけじゃなく涼木にもやってもらうつもりだ。
「いつものストレートヘアもいいけど、ポニーテールもめちゃくちゃ可愛い」
ああ、可愛いなんて言われなれてるはずなのに……なんでコイツに言われるとより嬉しいと思ってしまうんだろう…
「そ、そう…ありがとう」
「あと今日の服もすげー可愛い」
本当になんでコイツは恥ずかしげもなく異性を褒められるのか?
嬉しけど、そんなにサラッと連続で言われると恥ずかしくなってくる…
「そう…」
ちなみに今日の私の服装は黒のロングパーカーに白のデニムというシンプルなもので、わりかし使う頻度が多い。
前世の時からパーカーと黒色が好きだった影響もあるのだろう。
パーカーは着やすいし、黒色はカッコいいから好きだった。
「それと…」
待って…まだレパートリーがあるの…?
「もういいから! 早く行きましょ!」
たまらず私は逃げ出した。
「照れてる先輩も可愛いね」
「うるさい」
「どこ行くの? ファミレスにいくんじゃないの?」
「まずは目の前のカフェで偵察をするわ」
まずはカフェで様子を見てからファミレスに乗り込む予定だ。
「了解。ねぇ、先輩」
「何?」
「貸し一つだからね」
「…私に何をさせるつもり?」
「まだ考えてない。いきなりだったしすぐには思いつかない」
「分かったわよ…あくまでも常識の範囲内だからね?」
「ほーい」
こうした私と涼木のスニーキングミッションが始まった。




