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始まり


「すいません。落としましたよ」



「あー、あざっす」



「今の涼木くんじゃん!」



 目の前でハンカチを落とした生徒に落とし物を渡したら、何故だか隣にいる友人が食いついてきた。



「知ってるの綾香?」



 彼女の名前は木下綾香。私、佐伯優子と同じ高校2年生だ。



「逆に知らないの優子?」



 信じられないものを見るような表情で私に問いかける綾香。



「知らないわ」



 綾香がこんなに反応するということは、今の男子生徒は有名人なんだろう。

 まあ、私は男に全く興味がないから彼が誰なのか全く分からないけど。



「マジで!?」



「マジで」



「さすが優子。涼木くんを知らないとは…」



「で、誰なの?」



「滅茶苦茶モテてるイケメン1年生」



「へー」



「聞いてきたのに興味なしかよ!」



 会話の流れで聞いただけで、別にイケメンとかどうでもいいし。



「うわ、本当にモテモテじゃん…」



「そりゃそうよ。あのルックスなんだからモテるに決まってるじゃん」



 私の目の前には、朝から女子に囲まれる涼木とかいう1年。



「うちの高校で1番カッコいいって言われてるからね彼。朝から凄い人気じゃん」




 うん、朝から女子に囲まれてチヤホヤされるイケメンとかムカつくから滅びればいいのに。

 


「あー」



 ただでさえ朝からイラッとする光景を見て嫌な気分だったのに、さらに見たくないものを見てしまった…



「どうしたの?」



「これが下駄箱に入ってた」



 そう言って取り出した1枚の手紙を綾香に見せる。



「ラブレターじゃん。今月で何枚目よ?」



「5枚…」



「うわ、面倒臭そうな顔…」








・・・







「佐伯優子さん。好きです! 俺と付き合ってください!」



 屋上に呼び出された私は、男子生徒に告白されていた。漫画のように果し状を渡されるなんていう展開もなく予想通りの結果だ。



「ごめんなさい」



 私にとって告白されるという行為は嬉しさ3割。面倒臭さ7割と言ったところだ。



 私は目の前にいる相手を知らないし、もちろん面識もない。

 初対面の彼が私に告白したのは、内面が好きとかではなく、私の整った顔面に一目惚れしたからだろう。



 でも、それは逆に嬉しい。なぜなら、それだけ彼が私のビジュアルを評価してくれたと言うことだからだ。



 自分が長所だと思っいることを人に褒められるのは誰だって嬉しい。



 とはいえ、相手の告白を断るという行為は億劫だ。

 しかも、告白される回数が多いとなればだんだんと嫌にもなってくる。



 いったい私は卒業するまでに何回屋上にこなければいけないのか?



 彼氏でも出来れば、男に言い寄られる回数も減るかもしれないが、そもそも私は男と付き合う気なんて微塵もないのだ。






 だって私の前世は男だったのだから。男とイチャイチャするなんて考えられないし、この超絶美少女ボディーは私だけのものだ。




「理由を聞いてもいいかな?」



 理由?


 そんなこと聞くなよ。

 結果を聞けたんだから満足してくれ。



 そもそも何で初対面の相手に告白して振られないと思ってるの? どんだけ自分に自信があるのよ…



「他に好きに人がいるから」



 とりあえずこう言っておけば大体の男は諦める。



「そっか。じゃあ、お友達からお願いしてもいいかな」



 そう言ってポケットからスマホを取り出してくる男…



 いやいや、良くないから。とっとと引き下がれよ……コイツマジで面倒くさいな。

 



「ダメに決まってんだろ」



 告白してきた男のしつこさにうんざりしていると、今度は知らない男が乱入してきた…




 いや、本当に誰よ…?



「涼木光!」



 そしてお前は知ってるんかい。



 というか、よく見たら朝のムカつくイケメンじゃん。



「俺の女だからその人」



「そうなの佐伯さん?」



 違いますけど。

 でも、この面倒くさい男を諦めさせるには良いのかもしれない。



「はい。だから私のことは諦めてくれると」



「証拠は?」



「え…?」



「君を潔く諦めるためにも証拠を見せて欲しい」




 何言ってんのこのナルシスト…何で私がそんなことしないといけないのよ。

 


「いいよ」



「は?」



 思わず心の声が漏れてしまった。慌てて乱入してきた男の方を見れば、いつの間にか私の目の前には整った顔があり、頬にキスをされてしまった。



「な!」



「もういいだろ、さっさと行けよ」



「く…! お幸せに!」



 私たちのキスシーンを見たナルシストは、絶望したような表情を浮かべたあと、泣きながら屋上から去っていった。



「何してくれてんの!?」



「キスだけど?」



「勝手にキスしておいて開き直るんじゃないわよ!」



「それじゃあ明日からよろしく先輩」



「何が!?」



「付き合うんでしょ?」



「は!?」



「先輩は男避けとして俺を使えばいいじゃん、

俺も女避けに使えるし」



「いやよ! 何でアンタなんかとカップルのふりしなきゃいけないのよ!」



「でも、明日には俺たちが付き合ってるっていう噂が学校中に広がってるかもよ」



「そ、それは…」



「どうせならお互いにこの状況を利用した方が便利じゃない?」



「…」



 確かにこの男の言う通りにしてもいいかも知れない。噂を火消しするのも面倒くさいし、別の男から告白されるのもかったるい。



 それに、よく見ればこの男はイケメンだ。男避けとしても優秀だろう。



「分かったわ。それでいきましょう」



「じゃあよろしく先輩」

 


 


 

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