8話 初めてのダンジョン
「これが...ダンジョン!?」
ベリルに連れられて到着したら、エンサーからそこはダンジョンだと伝えられた俺は驚愕する。
「なんか...なんかすごく地味じゃない?」
"小規模のダンジョンならこんなもんですよ"
当のダンジョンの入り口は、小さく狭く、何も装飾がついておらず、パッとみればただの洞窟と判断して素通りしてしまうだろう。
だが、これがダンジョンだと思える証拠はあった。
「ダンジョンだから、なんかすげえ嫌な感じがする...冷たい風に背中をそっとなぞられたかのような...」
身震い混じりの俺の発言に、エンサーは反応する。
"普通はこの程度のダンジョンの魔素を探知できるものは少ないのですが...恐らく魔力を宿していないのが原因でしょうね、そのせいで周囲の魔素に敏感になっているんだと思います"
「魔素に敏感ねぇ...なんかちょっと強そう」
「・・・」
「ッ!?ワヒャン!? ベリルか...何やってんだこのヤロー...」
突然膝裏に強い衝撃を感じた俺は、すぐに跳び退いて、バランスを崩しつつもその原因を探った。
みればベリルの体から少し突起が出て、そこから魔力を出したのか、光をポワポワと漂わせてた。
"現在の様に、裏を返せば現在のままだと周囲の魔力に、強い影響を受けやすいということです。魔法に対する耐性もないので、被弾したら良くて重症、悪くて即死です、気をつけてくださいね?”
「おっといきなり緊張してきたぞー?」
「何だか...結構明るいんだな、ダンジョンって。もっと薄暗いもんだと思っていた。」
入って通路をしばらく歩いてみたが、照明が周囲に見当たずとも、ダンジョン内はやや明るく、思っていたよりも行動しやすい、最初は魔素が何かしらの発光現象を起こしてるんではないかとは思ったが、それにしては魔素による過敏な感覚というか、そんな感覚を感じれない。
(魔素じゃないとしたら...なんだ?)
”教えましょうか?”
「いや、それだとなんか悔しい。 どれが光源になってるんだ?」
周囲を見てみても、床は石畳、壁天井には土や岩石がむき出しになっており、丈の低い植物や、苔が周囲の壁にびっしりと張り付いている。
「ヒカリゴケ...?いやでもn ”正解ですね” ...ありゃ?」
突然正解と言われ、戸惑う俺に、誤答に反応したエンサ―が解説を続ける。
”この苔は、主にダンジョンなどの洞窟によく生えており、周囲の魔素を吸収して栄養にしています。発光しているのはその魔素吸収時に生じる現象ですね。”
「...ま、まあ、そうだな!さすが俺!よくわかったな、ガーッはッはッは!」
「・・・?」
”...あれ、まだ分かっていなかったんですね?”
エンサ―から発せられたその言葉は、俺になかなか効いた。
「ん?」
”どうかされましたか?”
「なんかこの床の石変じゃない?」
俺はしゃがみ込み、石畳の中で一つだけ変色した一つの石レンガをつつく。
「軽く触っただけで結構沈み込むな...もしや所謂トラップ?」
警戒しつつ、その石畳をヒョイと飛び越え、鼻で笑う。
「馬鹿め、誰があんな罠に引っかかるかい」
そう言って余裕の一歩を踏み出す。
カチッ
その床から発せられた音を認識した瞬間には、床はきれいに二つへ別れ、中央の空白に立っていた俺の身体は落下し始めていた。
「チッ...クショウ!」
俺は咄嗟に両腕、両脚を壁へ伸ばす。
金属質な両腕が壁面を削って食い込み、ギャリギャリと音を立てながら縦に引っかき傷を伸ばしていく。
指先が削れ減っていく感覚はするが、もう剣山は目前まで迫っている。
剣先が胸に触れたところで、ギリギリ俺の下降は止まった。
「た、たすかった~...」
"バカですね"
「んだとゴルァ」
”まあ、怪我の功名ですね...前を見てください”
「おん?おお!!」
剣山から目線を外し、顔を上げるとそこには、いかにもな壁の穴の奥に、隠し宝箱が堂々と佇んでいた。
”早いとこ回収して、前へ進みましょう”
「あー、そのことなんだが...」
"はい?"
「両手足、体を支えるので必死なんだけど...どうやってこっから動けばいい?」
”...アハハ”
「ハハハ」
その後、彼を見たものはいなかった...
「何てことは無く、ってね」
あの後ベリルは体が小さく、剣山の間に入れることを活用し、下から風魔法で押し上げられたうえで、ついでに宝箱を回収してもらった。
「まじでベリルありがとう!!ホント愛おしい!!」
「・・・♪」
感謝を体現すべく、俺は両手でモチャモチャとベリルを撫で続けた。
”...ファザコンと言いますか...何と言いますか...”
「別に愛でるぐらい良いだろ? そんなことよりも宝箱の中身よ!」
さてさてと、俺は手を擦り合わせ、金の装飾の入った宝箱の上部に手をかけ、鍵がかかっていないことを確認してから、思いっきり蓋を開ける。
「硬ってえ、なぁ 開いた!! ...お?」
中に入っていたのは、俺の想像した金銀財宝や、強そうな武器などではなく、やや大きな箱には似つかない、拳サイズの濁った水晶だった。
「なにこれ...占いでもしろってことか?」
命をかけさせられた報酬が、たったのこれだけと認識した俺は、すっかり落胆してしまう。
”いいえ、落胆してるようですがこれはなかなかのあたりですよ?”
「ふむ?」
疑念を抱く俺に、エンサーは解説を始める。
"それはスキル水晶というもので、その名の通り新たなスキルを授ける効果が有ります"
「うわぉ凄い効果。...待てよ、これを集めて売れば億万長者になれるんじゃ!?」
いつの時代も、浪漫故力を欲する者は多い。これを使うだけで簡単にスキルを得れるとあれば目から鱗、億万長者も夢ではない。
"いえ、そうでも有りませんよ?"
「ありゃ?」
"スキル水晶は、出現してからおよそ1時間が経つとその力を失います。発注人に届けるのには時間が足りませんし、もし時間内に着けるほどのスピードを持ったとしても、それをするぐらいなら別の事のほうが金を稼げますよ”
「うーん...なるほど? でも、その条件があるとはいえ対策はありそうだし、危険を冒さず手に入れられるんだったらまだ買い手は結構居そうじゃない?」
”それはそうなのですが...”
「ほう、まだなんかあると」
”与えられるスキルがランダムなんですよ...それ...”
「あぁ...ガチャか...」
やはりどの世界も、ガチャは悪い文明である。
おひさ
色々あったの、許してちょ