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浪漫と仮初ロマン  作者: 酔月 輪廻
1/1

~彼女の美学は、いつもビター~

こんにちは、こんばんは、酔月 輪廻です。

初めて投稿させていただきます、若輩者です。

そんな私から初めに、皆様に読んでいただく前に一つお願いがあります。

それは、最初は正直面白くないので、継続してこの作品を読んでいただけると嬉しい、ということ

です。

私は小説を、最初から面白く書くのが苦手です。

徐々にみなさんの心を私の世界に導き、引きづりこむのを得意としますので、

ぜひ、この回が面白くなくても、次も読んでみてもらえると幸いです。

長くなりましたが、私の作品を楽しんで読んでいただけると最高です。よろしくお願いします。

プロローグ

 私は、退屈だ。

 私は、憂鬱(ゆううつ)だ。

 私は、もう死んでいる。


そんな面白さの欠片もない人生を歩んでいた私を、死という意識の沼から引きあげたのは紛れもなく、

彼女だった。


「貴方には、価値があるわ。じゃなきゃ、生まれてきていないの」


 あの日、あの場所、あのシーン。そしてこの言葉。


 興があったように見えるあの日こそが、私と彼女の出会いだった。


 誰にもわからない、誰にも伝わらない、美学。


 それを学んだから私は、あのステージに立つ事ができたのかもしれない。


 あのステージで輝けたのかもしれない。


 これは私が、彼女とともに歩んだ、数日の奇跡の物語だ。

 そして軌跡のお話だ。







一、キャメル色の私の憂鬱

「わ、私、ぬいぐるみより重いもの、持ったことない……もん!」


「んなわけないだろ、あんたさ」


「あんたじゃなくって、ロマン……」


「はいはい、わかったって」


「ま、まあ持ってあげないこともないわよ……?」


「いいや、あんたはお嬢様なんだしいいよ」


 体育館のステージに立ち、台本片手に、役に見合う動きを見せるみんなは、

やはりイキイキとしていた。それぞれの思う自分の役をすぐさま掴み取り、

自分の動きとして体に落とし込む。


 演劇というのは、ただなにも考えず喋って動くわけではない。


 そのキャラがどのようなものを背負い、どのような人生を歩んできたのか、そして

今現在の心情をセリフの節々から炙り出し見つめ、そこに一つひとつ思いを乗せる……。


 キャラクターの考えていることは、自分が考えていることとイコールではない。

毎度毎度つながることばかりでは決してないだろう。

けれど、そこをいかに自分の思慮しているところかと、聴衆に錯覚させ、自分を消し、

その役が乗り移ったようにみたいに見せなければ、演劇は始まらない。


 そんなことは、演劇部に入るためにここの学校に入った私からすれば、理解以上のものを持っていた。


でも、知識で頭の中に入っていても、必ずしもそれが実践できるかは違う。


 とんとん拍子で進むこの場面、コメディ感がある。


 数ページ先のこのシーンは、少し神妙な面持ちだが、この時の心情は……。


 初見では、極力先を見通す必要性がある。じゃなければキャラの心情を用意できない。だが、

先に何回か読んだのに今日に限って、上手く頭に入ってこない。


 少しの間のブランクがあったから頭が働いていない……と思いたい。


 私がいない間、別の台本であれど、ずっと他校に負けじと頑張っていた役者人。

 音響と照明のバランスを慮って、試行錯誤していた裏方人。


 私は、台本からようやく目を離し、周りの様子を窺った。みんな、動き付けは今日初めてなのに、

早くもモノになり始めている。まだ洗礼されきれてはないが、結構な出来だ。


 やはり私との、根本の出来が違うように思える。


 私とは、違う。


 なけなしの放課後の時間を割き、部活に励む私たちは、一連のやり取りを終え、私は密かに、

はあ、とため息を吐いた。


 私はロマン。ロマンチックで、可愛くて、いろんな人に愛されるの。このキャメル色の髪の毛の

おかげ? この美しい瞳のおかげ? ううん、私が愛されるのは私のすべてが美しいからよ!


 台本のキャラクター紹介欄には、こう書いてあった。



 ロマン。見た目は可愛いが、わがままで、どうしようもなく甘えていて、全部他人任せ。自分では

なにもできない、典型的なお嬢様の形、そういう想像をさせる。


 こんなキャラクターが主人公だなんて……。


 そして、こんな子が私の役だなんて……。


 いろいろなごたごたが終わって、久しぶりに部活に行ったら、勝手に役を決められていて、

この『ロマン』という、いかにも私に合わない役を割り当てられていたことを知った今日。

じゃんけんに負けて、この役になった方がよっぽどマシだ。


 部長が、遠くから「休憩だよ」と言っている声が微かに聞こえる。


 私は、その場に座り込み、少しの間目を閉じた。



 私からすれば、彼女の言葉は腹立たしいものばかりだった。


『私、椅子なんて持てないわ! あなたが持って頂戴!』


……だったら「い、椅子ですか? あ、持ちますよ……、あははは」と変換されるし、


『この私に盾を付くなんて、恥を知りなさい!』


……だったら「あ、私は気にしないので……。ははは」になる。



 なんでこんなに、嫌な役を押し付けられないといけないんだ。別に、適任適所な役者の二人は、

この役に充てられなくてもわかる。


 だが、他の先輩方は? 


 私以外の人間の方がよっぽど適所だったんじゃないか?


 沸々と、嫌な念が浮かぶ。


 わなわなと自分の感情が荒ぶる。


 経験だ、とか言っといてなんのアドバイスもなしか。


 私にこんな役が合うと思ってんのかよ。


 私はもっと、こう暗い役が……。

 

 感情を必死に喉の下で抑え込んでいた最中、私は目を開いた。


タイミングよく「ちょっと!」と、遠目から見ていた顧問が声を荒げる。


その声に私は肩をびくりと震わした。



「貴方、役が気に食わないからって、手を抜かないでくれます⁉ 大変迷惑ですよ。きちんと読んで、

役に徹してください! 大会も控えているんですからね!」


 唐突に大きい声を出されて、苛立った。それに、片手にはスマホ。私たちがやっていた時も、

毛頭興味もなさそうだったじゃないか。


 手を抜いているのはお前だし、そんな顧問でもいつもは、顧問面して、なんでもかんでもいちゃもんをつけて厳しく私たちにものを言うくせに。


 私は、先程喉に突っかかっていた言葉達を、別の言葉に変換して吐き出した。


「て、手は抜いていませんよ……? す、スマホ見てる先生に言われたくないですね~、ははは……」


 全然笑えねぇよ、私。

 なんで言い返しちゃったんだよ、めんどいじゃん。



 無論、そのパワーワードによって、火がついたと言わんばかりに、顧問は怒りだした。


「はい……⁉ 私は今度の大会の手続きをしているんですよ? それを、貴方は……」


 にしては、手が止まっていたし、クスクス笑ってたじゃん。


 額には夏ならではの汗と、怒りで噴き出した汗がにじんでいる。ぷつぷつと、そのまま沸騰でもして

泡を吹きそうな勢いの顧問の額は、どんだけも脂っこそうで、気分が悪かった。  


 それに、子供の戯言にこんなに起こっている時点でばかばかしい。


 もっと、サラッと受け流せよ。


 大人、なんだろう?


「……本当に、タチが悪い生徒ですね」


 普通だったら聞こえないような静かな声で、顧問は言い放った。


 本来なら、ニュースとか、動画サイトとかで使われるピー音を入れて欲しかったが、編集ができない

のでどうしようもなかった。体育館の反響具合でうまく、聞こえたのだった。


 だが、私の頭の中には、その情報はうまく入ってこなかった。


 でもこれだけは思った。


 もう嫌だ、面倒くさい。



 ハッとして、気づいた時には空気が悪くなっていた。そして、周りの役者の顔が怪訝。

 やらかした、やらかしてしまったと、慌てふためくのは時間の問題だった。


そんなタイミングに、気を利かせたのか、遠巻きに見ていた部長が「じゃ、ちょちょっと休憩で! ね!」と場を誤魔化した。



「……ねぇ、なんかロマンの役さ、上手く掴めてなくない?」


「え?」


 休憩ということで、ステージの床にお菓子をぶちまけ、つまんでいた時だった。


役者の一人、同級生の一葉がそう呟いた。


「確かに。なんか断片的にしか掴めてない感じする!」


 役者二人目、瑞穂が賛同し呟く。


 あたり前じゃないか。


 自分に合わない役をやるのはどんだけ大変か、ここの二人にはわからないのだ。後輩の瑞穂は

根本が楽観的すぎて、こういういかにもナルシストで、ぶりっ子で問題児な役は合わないし、

一葉に関しては、男で、なんならイケメンだから論外だ。



 私は、いつも通り体調が悪くなる。おなかが痛い、そして気持ち悪い。

 自分が、この役から逃げられる道はなかったのだろうか。なんなら今から逃げられる道は

ないのだろうか。今日、部活になんて来なければよかった。


「……ごめん、役頑張って掴むね。あの、今日は体調悪いから……帰るね」


 私はそんな謝る気はみじんもなさそうな言葉を上の空で呟きながら、撤収しようととりあえず思った。


 早めに撤収して、逃げよう。逃げ出してしまおう。


 きっと、今の私は演技になんて集中できないし、まず、この役では私にはなす術はないのだ。

どうにもならない、どうしようもない。


 私は顧問の目を盗んで、ステージ袖に逃げ込んで、体育館を後にした。



読了ありがとうございます。

お疲れ様でした。

私の文章は読みずらいところも多々あるかもしれませんが、それでもなお最後まで読んでいただき

ありがとうございます。

面白かったでしょうか、それともつまらなかったでしょうか?

前書きにも書いた通り、私は最初から物語を面白くするのが苦手です。

なので、次も読んでいただけると本当にうれしいですし、励みになります。

若輩の私ですがこれからも頑張り続ける予定ですので、ぜひ応援していただけると、

泣いて喜びます。

重ねて、読了ありがとうございました。

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