表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッション・クリア 2  作者: 奈那美
2/6

第2話

そのとき、ちょうど横を通りかかった田中さんが、私たちのところに近づいてきた。

「なになに?名前の話?」

「そうよ。名前でからかわれた過去を持つもの同士だねって話」

「俺も、からかわれてたぞ」

「田中さんも?まさか。苗字から言ったら、からかいようがないじゃない?」

「それがあるんだ」

そう言って、田中さんはメモ用紙をひきよせて、サラサラとペンを走らせた。

 

書き終えた紙を私たちに見せてくれる。

そこには几帳面な字で『田中 一』と書いてあった。

「たなか はじめ、でいいの?読み方」

「おう。それでいいよ」

「普通の名前だと思うんだけど…」

「うん。普通。だけど…」

 

もう一度自分のほうにメモを向けなおし、今度は定規を使って線を一本書き足した。

先ほどの縦書きの漢字の、真ん中に縦の一本線。

 

「線対称。小学校で習っただろ?一本の線を挟んだ左右が全く同じ形。その授業の時に、担任が線対称の説明するのに、よりにもよって俺の名前を使ってくれちゃってさ。黒板に、俺の名前を書いて。今みたいに、真ん中に線引いて。クラス中、大爆笑でさ。で、それから卒業まで、ずっとあだ名が『線対称』」

「あ…それはちょっといやかも」

「…ですね」

「でもさ、俺らよりも、もっと苦労してたかもしれないやつがいるよ」

「どなたですか?」

「大和だよ。立花さん、大和のフルネーム知ってる?」

「いえ。こんなふうに、おしゃべりをしたこともないので」

 

思い返してみれば、毎日のようにミッションをこなしていたけれど、おしゃべりってしたことないし。

フルネームを知らなかったことも、今、初めて気がついた。

 

「フルネーム、なんておっしゃるんですか?」

私の問いに田中さんは、先ほどのメモの空いた部分に、再度ペンを走らせた。

見せてくれたメモには『大和 昴』と書かれていた。

 

「やまと…すばるさん?」

「そう」

「…芸能人みたいね」安藤さんがポツリとつぶやいた。

「俺も最初聞いた時、そう思った。もしも、小学とか中学でクラスメイトだったら『お前、げーのーじんって柄かよ』って言ってるかも。いやたぶん言う!もしくは『さらば~すばるよ~』とかな」

「そこ、威張るとこじゃない。というか、田中さん、古すぎっ」安藤さんがツッコミをいれた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ