アイドル自己紹介を平時にすると実際地獄……照れたらもっと地獄……
「……それじゃあいきますね」
ミカ先輩ノリノリすぎません?どこからペンライト出してきてるの?あっ備品ですか。そう。いや、私はいいです大丈夫。いや遠慮とかでは……はい振ります。みんなペンラ持ってる姿が堂に入ってるけどこの子達アイドルだよね……?
これコーレスする流れ?全員分予習しておいてよかった。
「ぷらすすたーと!」
「「「「いえーい!!!」」」」
「歌も踊りも大好き!ファンのみんなも大好き!みんなとずっと一緒にいたいな!ぷらすたのピンク担当モモです!」
「桃華です。ぷらすたのセンターで中学三年生です。アイドルが好きです。」
大好きのところでコーレスを被せる感じですね。文句のつけようがないほどに正統派。逆を言えば無個性だけど、本人の正統派アイドルっぷりに合っていて正統派という個性が確立していて素敵。
「ギャルだけど、本気!みんなの心に、全力投球!アツいハートをぶつけるよ!ぷらすたのイエロー担当リンだよー!」「さっきも言ったけど花梨だよっJK1だよー」
みんなの心に~で溜めて、全力投球で一緒に言うタイプ。ギャルっぽい格好を好むのと実際は熱血な性格のギャップがよく表現できていて彼女らしいキャッチコピーだと思う。友だちから彼女になりたいタイプのアイドル、多分本人はそういう路線をあんまり意識してないところがなお良いですね。
「おっとり、はんなり、京娘。そやけど、うちは、アイドルさん。ぷらすたのグリーン担当みくどすえ。うちのアイドル姿、みてっておくれやす。」「うちは一条尊。みことって名前男っぽくて好きじゃないからミコかミクって呼んでな、高2です」
京都弁!京都弁キャラなの?って聞いたら、実家が京都だからね、普段は標準語だけどってお茶目な顔で言われました。からかったり意地悪なこと言うと思うけど堪忍な、それと京言葉だよってアルカイックスマイルで言われました。これが京都の女か……なるべく怒らせんとこ。キャッチコピー葉和風のはんなりした喋りの区切り方がわかりやすくていいと思います。
潜入捜査員的には一条って名字が不穏かな、陰陽師の家系だったりします?って聞いて大丈夫かな。流石に踏み込み過ぎか
「ちっちゃいけれど、ちゃんと見つけてね?ぷらすたのおやゆび姫はここだよ?ぷらすたのオレンジ担当ヨルです。」「夜河香苗です。小学5年生です」
おやゆび姫ってアイドルのキャッチコピーとしては珍しくない?なんでって聞いたらちっちゃいから?って微妙に濁されました。まだ若干距離を感じて悲しいですヨル先輩。意外とガチ恋系のキャッチコピーでおねえさんは心配です。名字が珍しいけど式神由来とかではなさそうかな。少なくとも術師界隈ではいないと思う。
自己紹介とキャッチコピーと芸名を考えながら代わる代わるキャッチコピーと名前を聞かせてもらって、だいたいこのユニットの雰囲気を把握しつつ潜入捜査員として容疑者候補の5人を確認する。現時点での目星をつけるために簡単にだけど。モモとリンが名字を言うつもり無さそうなのがちょっと不穏なところ。宇佐美とか平塚でわかるだろうけど、家絡みの式神を持つ伝統のある家は家名が式神に寄ってることが多いんだよね。私の平塚は式神契約の後で寄せただけなんだけど。
でも覚醒とか神のきまぐれとかで式神を持った場合は家名の手がかりはないし、こういう事件起こすのってアヤカシのルールをよく知らない人が起こすからそのへんはあんまり参考にならないんだけどね。まあヨルが若干白くなったかなぁって感じな雑なプロファイリング。
「うさみん芸名決めた?あーしはカオがいいとおもう!」
「薫子も宇佐美もキャラじゃなくて好きじゃないので関連性のないものが良いです」
というのも宇佐美さん関連だと流石に迷惑かかるからね。ただでさえ争ってる宇佐美さん家で隠し子疑惑とかで巻き込まれたら面倒くさいし。薫子はそもそもキャラじゃないから最初からないです。
「え?薫子ちゃんも?花梨も桃華も私も訳あって苗字使いたくないんだよね」
「そうなんですか?」
「うちは親父がアイドル反対で隠れてやってるからバレないようにあんまり言わないだけ」
「私は名字がアイドルらしくないので言いたくないです」
「うちは別に嫌とちゃうんやけど、ファンの人に実家がバレてしもうたら騒動になるんちゃうかおもて」
「ミカ京言葉でてるよ」
「あらごめん。ありがとうヨル」
ミカ以外は割としょーもない理由だった。いや彼女たちにとっては大事なことだとはわかるけども、ミカとくらべるとどうしても危険度的に見劣りする。実家バレで騒動ってなんだよ……やっぱりヤバい筋のお嬢だったりする?それはそれで取り扱い危険物なんだけど、2つも案件抱えたくないですやめて欲しい
「彼女のブランディングは面接で聞いてこちらも了承している。ユニセックスだ」
「それってってジェンダーレスってことですか」
モモが五十嵐さんに確認する。ユニセックスって服みたいだけどジェンダーレスじゃ五十嵐さんには伝わらなかったので仕方なかったのだ。人のこと言えないけど、年取ると新しい言葉を覚えられなくて若者の会話へ徐々についていけなくなるんですよ…………老害にはなりたくないものです。うちの部署に後輩できるの稀だけど
「そうだ。卒業したメンバーと真逆でファンも混同しにくいようにしたい」
「それならメンバーカラーは紫色も外したほうがいいですね。ヨルはどう思う?」
「えっと、ピンク、イエロー、グリーン、オレンジ、パープル以外だと……ブルーかレッドですかね?」
「それならブルーがいいんじゃない?ニチアサっぽいし」
「ヨルとリンはニチアサ好きよね、ヨルはわかるけれど。うちは一度も観たことないわぁ」
「ミクち。ニチアサはね、アイドルに通ずるものがあるんだよ」
「あら、そうなの?」
「モモも観るといいよ、アイドルはみんなを笑顔にすることが仕事でしょ?ニチアサは辛いことことも苦しいことも仲違いすることもあるけどみんなで乗り越えてテレビの前の私達を笑顔にするために頑張ってるんだよ」
「リンちゃん、DVD昔のシリーズだけどあるよっ」
「マジで!今度一緒に観よ!事務所で上映会していい?五十嵐サン」
「脱線しすぎだ。上映会は自宅でやりなさい」
「ちぇー。五十嵐サンとも一緒に観たかったのに」
よく会話が続くなぁとアラサーは感心しています。話に入るタイミングが掴めないや……
昔ユニットのアイドル楽屋と一緒になったことあるけど、あの時もこのくらいお喋りしててちょっと入りづらかったのを半分聞き流しながら思い出していた。私はソロだったので一人でケータリングの弁当を隅っこで食べてました……ほろ苦い悲しい思い出
「たしか芸名とメンバーカラーでしたよね。芸名はアオ、メンバーカラーは青色がいいです」
どうだろう。さすがに安直すぎる気もするが、愛着が沸かないようにできるだけ雑な名前がいい。捜査が完了すれば辞める身、潜入捜査員で公僕なのだから。若干シリアスしてるとリンとモモが両脇に寄ってむぎゅむぎゅと身を寄せてきた。歓迎の儀かなにかですか
「それまんまじゃん!ウケる」
「わかりやすくていいわね」
「キャッチコピーは格好良くするの?」
「そのつもりです」
「もしかしてもう決めてはる?」
「はい、まぁ一応」
「えー!やってみてよ!なんとなくでいいから!」
十の瞳がキラキラとこちらを向く。完全にキャッチコピーを披露する流れである。期待が痛いが、見せてもらった以上やるしかない。
「ニューフェイス、スタート。ぷらすたのブルー担当、アオ。よろしく。」
「えーいいじゃん!クールってかーんじっ?」
「いいね。デビューしてしばらくしたら変える必要あるけど」
「まあええんとちゃう?ヨル?」
「素敵だと思います!ぷらすたに女の子のファンができちゃうかも。五十嵐さんはどう思いますか」
「こちらに不都合はない。それで構わないよ」
及第点を頂けたようです何よりです……恥ずか死ぬ……
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