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新人プロデューサーの苦悩

五十嵐プロデューサー視点



休憩を言い渡したのは自分の思考を整理するためだ。彼女が完全に退出してから、机に突っ伏しどうしたものかと考える。


大手レーベルで勤務していた頃でも滅多にお目にかかなかった逸材が、独立したての少し波に乗ってきたがまだまだ弱小事務所であるうちの門を叩いてきた。


この幸運な巡り合わせ、決して逃してなるものか。


うちのデビュー曲を振りも歌も完璧以上に覚えて披露してくるほどに熱意がある。個性も今までうちに居なかった中性的なタイプで華がある。技術もうちの中では高水準。ポーズ一つとってもうちの子たちに見習わせたいほど洗練されている。曲がかかってからの存在感はうちの事務所のエースで歌姫『神塚 藍』を越えるほどだ。





なによりも彼女は一度たりとも目を逸らさなかった


ファンに当事者意識を、ちゃんと見られている意識を植え付けるのが上手い。最も簡単ながら最も難しいファンサービスだ。


特に地方アイドルでは、一回一回のチャンスが少ない。たまたま通りがかった人をパフォーマンスと視線で落とすことがどれだけ難しいことかわかるだろうか。

しかし、私には彼女は簡単にそれをやってのけるという確信がある。


彼女が遺憾なく才能を発揮するステージをこちらが用意できれば大衆の目を吸い寄せファンを増やすことができる。故に事務所唯一であるアイドルユニットの間口となれる。




しかし、もう一人の私が彼女をユニットの一人に押し込めておくのは惜しい人材だと嘯くのだ。


1/5に収めておくにはもったいない才能だ、と。


彼女は他のメンバーの完全なコピーができてしまうほどに器用だ。ユニットに参加させれば、存在感を消して1/5に収まり新人ながらユニット全体を支える屋台骨のような存在になることも可能だろう。


だかそれは、彼女の才能を抑えつけることになる。プロデューサーとして、自分で研磨し磨き上げられたアイドルの宝石に手を加えて歪な形に成形し直す。


そんなことやっていいはずがない。

アイドルという職に対する侮辱だ。



中央に、センターに据えるという手もある。しかしどう考えても下策だろう。波に乗りかけている既存メンバーが作り上げたアイドル性を完全に壊してしまう。言い方は悪いが新人のバックダンサーになってくれと言っているようなものだ。心血注いで育ててきた子たちに向かってそのよう暴挙絶対に有り得ない。

それに元センターのファンは間違いなくアンチ化するだろう。才能で圧倒していたとしても、どれだけ可愛らしかろうと、同じユニットだろうといや、同じユニットだからこそ推しが格下げさせられた原因である敵を好きになることはない。アイドルのファンというのはそういうものだ。


藍の隣に現時点で並び立つ才能だが、本人はアイドルを志しているのも問題だ。

ソロアイドルは無理だ。伝説のアイドルが引退してからはアイドルの流行は完全にグループユニットだ。アイドルではなくアーティストであればやりようもあるが、アイドルへのこだわりが強そうだ、首を立てには振らないかもしれないな。


なんにせよ本人の意向を聞いてからだろう。

嬉しい悩み事だが

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