エピローグ~異世界不動産にて~
「行っちゃったね。オッサン」とチル。
「もう会えないね。オッサン」とラリ。
「そうね。でも、初めて会った時よりもずっといい顔になっていたわ」
「そうですね」
淡泊に答えた世望に肌島が訊ねる。
「世望さん。もしかして最初からこの結果が見えておられたのですか?」
「さぁ」
「私が取り出した異世界の数は3世界分ありましたが、1つ隠しましたものね」
「はて? そうでしたか? 肌島さんが、邪魔そうな胸を突き出してくるので、手が滑ったのかも知れません」
世望は、パソコンの前に座るとコーヒーカップに口を付けた。
「全て、彼の生き様ですから。誰かに必要とされる。誰かに期待された時に、人はそれを原動力とし、自分でも気付かなかった程の行動力と力が湧くものです。山本様はあの土壇場でそれを体感し、覚醒したのです」
「だったら、私の生き様はどうなるのでしょうか? 世望さんが抱いて下されば覚醒できるのですが」と艶めかしく、世望と距離を詰める。
「近いです」
肌島がムギューっと世望の顔にバストを押し付ける。
「息が出来ません」
「世望さんッ!? イケませんわッ」
「前が見えません」
チルがパーテーションの奥に走ってゆく。
「待ってー。チル」とラリが追いかける。
そこには広大な図書館への入口があった。
本棚によじ登るチルとラリ。
『ファイタル・アメルティアと転移勇者』の本を手に取る。
チルが「オッサン。どうなった?」と言う横で、ラリが「オッサン。死んだ?」とケタケタと笑う。
「見てみようよ」「うん、見てみよう」
そう言うと、チルとラリは本のページを捲った。
自動ドアが開いた。
挙動不審な様子の女子高生。
「ここ……何なんですか?」
怯える女子高生に世望は笑顔でこう言った。
「いらっしゃいませ。本日はどのような異世界をお探しでしょうか?」
END
最後までお読みいただき有難う御座いました。
以前からネタとして眠らせていたのですが、メインで執筆中の「鬼喰いの浄鬼師」を書いている最中、気分転換に吐き出してみました。
2日間で書いちゃいました。
もし、宜しければ、ご感想を頂けると幸いです。
夢のまた夢ですが続編希望の声が多ければ、他のお客様や、そもそもこの不動産屋は何ぞや?って言う真相に迫れるかも知れません。
今後ともよろしくお願い致します