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ごめんなさい

「助けたい!」


 イリヤさんはそれを聞いて微笑む。


「そう、分かったわ」

 と、言って、壁から背中を離した。


「それじゃ行きましょうか」

「はい!」


 僕達はカイルさんに向かって駆け寄っていく――。


「あっ! 危ない!」


 カイルさんはゴーレムの猛攻にバランスを崩し、盾を弾かれる。

 ゴーレムは次の攻撃を仕掛けようと右腕を振り上げていた。


「アイス!」


 イリヤさんが冷気の魔法をゴーレムに放ち、左腕を一瞬で凍らせた。

 ゴーレムはこちらに気付いたようで、ギロッと視線を向けてきた。

 僕達の方に体を向けると、凍った腕を壁に叩きつけ、割っていく。


 今のうちに! 僕は落ちているカイルさんの盾を回収すると、カイルさんの方へと一気に駆け抜けた。


「カイルさん、これ」


 カイルさんに盾を差し出す。

 カイルさんは僕が助けに来た事が意外だったようで、目を見開いて驚いていた。


「お前……どうして……」

「それは――」


 僕がそう言い掛けた瞬間、後ろから「レンちゃん、危ない!」

 と、イリヤさんの声がする。

 慌てて振り返ると、イリヤさんが僕達を守るように両手を広げて立っていた。


「イリヤさん!」

 と、僕は叫んで近づこうとしたが遅かった。

 イリヤさんはゴーレムのパンチを食らい、右の方へと吹き飛ばされてしまう。


 イリヤさんの体が半透明のバリアで包まれている。

 良かった……咄嗟にマジックシールドで身を守ったんだね。

 それでもイリヤさんは膝をつく。 

 ゴーレムはトドメを刺そうとイリヤさんに向かって歩き出す。


「カイルさん、盾を借ります!」

 と、僕は返事も聞かず走り出した。

 動きの遅いゴーレムを追い越し、イリヤさんの前で立ち止まる。


「レンちゃん! 危ないから逃げて!」


 今までモンスターと戦ってくれていたのはイリヤさんだ。

 だけど、僕だって経験を積んでレベルアップしてきた。


「大丈夫。僕にだって、イリヤさんを守ることぐらいは出来るはず! それより回復に専念してください」

「――分かった」


 少し躊躇いはあったが、イリヤさんは僕を信じてくれる。

 期待に応えないと!


「ゴーレム! 来るなら来い!」


 僕は盾を構えながら、そう叫ぶ。

 盾を装備しているからといって油断しては駄目だ。

 ゴーレムの一撃は、イリヤさんに膝をつかせる程に強力だ。

 僕が食らったら一溜まりもないだろう。

 とりあえずイリヤさんの方に行かない様、逃げながら誘導する。

 それしかない!


 ゴーレムが目の前まで迫って来る。

 ヤバい……足がガクガクと震えだす。

 本当に情けない。


 ゴーレムが僕の前で立ち止まり、右腕を振り上げ来る。

 まだだ……まだ避けるな……。

 僕はゴーレムが拳を振り下してくる瞬間を狙って、横に逃げた。


 ゴーレムの拳が地面に当たり、衝撃で地面が揺れる。

 当たった地面はクレーターのように、へこんでいた。

 思わずゴクッと唾を飲み込んでしまう。


 ビビっている場合じゃない。次に備えないと……。

 僕はゆっくり、イリヤさんと離れる様に後退していく。

 ゴーレムは僕に標的を替えたのか、僕に付いてきた。

 いいぞ……その調子だ。


「しまった!」


 僕は大きな石があった事に気付かず、つまずきそうになり姿勢を崩す。

 ゴーレムはそれを見逃してはくれなかった。


 拳を振り上げ――一気に下ろしてくる。

 僕は慌てて盾でガードをし、踏ん張ろうとするが、当たって吹き飛ばされてしまった。


 地面に倒れこみ、腕に激痛が走る……きっとヒビぐらいは入ってしまったかもしれない。


「レンちゃん!」


 イリヤさんが心配して僕の名前を叫ぶ。

 僕は痛みを堪えながら、上半身を起こした。


「大丈夫か?」

 と、カイルさんが駆け寄ってきて、しゃがむと、僕の背中を支えてくれる。

 僕の前に回復薬が入った瓶を差し出すと、「飲め」


「ありがとうございます」


 僕は受け取ると早速、回復薬を飲み干す。


「よくもレンちゃんを~……」


 傷が癒えたのかイリヤさんがスッと立ち上がり「許さない! ボッコボコにしてやるんだから!!!」


 イリヤさんが僕のために怒ってくれている。

 こんな状況なのに鳥肌が立つぐらいに、とっても嬉しかった。

 イリヤさんがゴーレムに向かって右腕を伸ばす。


「砕け散れ! エクスプロージョン!!!」

 と、叫ぶと伸ばした掌の前に魔法陣が描かれ、レーザービームのような赤い光が、ゴーレムに向かって放たれる。


 ゴーレムの背中にその光が直撃したと思うと、轟音と共にガス爆発でも起きたかのような凄まじい爆発が起きた。


 すぐに盾でガードをするが、石つぶてのように飛んでくる石が、盾以外にも当たって普通に痛い。


 ――少しして、爆発が収まると洞窟は静けさを取り戻す。

 辺りはゴーレムの残骸の石と、砕け散った魔力の結晶が転がっていた。


 カイルさんがスッと立ち上がり「立てるか?」

 と、手を差し伸べてくれる。


「はい、大丈夫です」

「お前達のおかげで助かった。ありがとう」

 と、カイルさんは面と向かって言うのが恥ずかしいのか、遠くを見つめながらそう言った。


「いえ。僕は何もしてません」

「――お前をパーティから外して、こういうのは何だが……俺と旅をしないか?」

「え?」

「無理にとは言わない」


 仲間に裏切られて、心細くなったのだろうか?

 それにしたって、自分勝手だ。

 僕の気持ちはもう――。


「ごめんなさい。無理です」


 カイルさんは目を閉じ「そうだよな……」

 と、落胆する。

「すまないが盾を返してくれないか?」

「あ、ごめんなさい」


 僕は慌てて盾を外し、カイルさんに返す。

 カイルさんは受け取ると、盾を装備し、僕に背を向け歩き出した。


「邪魔したな」


 カイルさんは目的の魔力の結晶も取らずに、帰って行ってしまった。


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