表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

まるで思春期の女の子のようだ

 家がポツン、ポツンと建っている小さな村に到着する。

 農業が盛んなようで、畑がよく目に入った。


「ねぇ、イリヤさん。何か買いたい物あります?」


 僕は村の真ん中で足を止めると、後ろを歩いているイリヤさんに話しかけた。

 イリヤさんはうつむきながら「別に無いわよ」

 と、呟くように答えた。

 具合でも悪いのだろうか?


「そう。声、小さいけど具合でも悪いんですか?」

「そんなんじゃないわよ、話しかけないでくれる?」


 機嫌が悪いのか、イリヤさんは素っ気なくそう言った。


「分かりました」


 よく周りを見ると村人がジロジロとこちらを見ている。


「ねぇ、あの女性の左手……」

「うん、きっとそうよね」


 村人のヒソヒソ話が微かに聞こえてくる。

 そう言う事か……。

 この世界では魔女は珍しい存在で、左手の甲に魔女の証である紋章のようなアザがある。

 魔女は魔女だと気付かれたく無くて、イリヤさんのように包帯などで隠しているのだが、直ぐに勘付かれてしまっていた。

 僕は黙って村人を睨みつける。


「あの男の人。女性に話しかけていたよね?」

「うん。じゃあ……」


 村人のヒソヒソ話は止まらない。

 胸糞悪い……イリヤさんの為にも、サッサッと用事を済ませて村から出よう。


「ちょっと、あなた達」

 と、突然、イリヤさんのトーンの低い声が聞こえる。

 イリヤさんに視線を向けると、とても冷たい視線で村人を見つめていた。


「私は何と言われようと構わない……だけど、レンちゃんを馬鹿にしたら、あなた達もろとも、この村を焼き払ってやるから、覚悟しなさい」


 イリヤさんはそう言って、掌から炎を出す。

 村人達は血の気が引いた表情を浮かべ、アッと言う間に去っていった。

 僕は勘違いをしていた。

 イリヤさんが離れて歩く理由って、僕を守るためだったんだね。

 僕はイリヤさんに近づき、左手を握ると「行きましょ」


「きゃ!」


 イリヤさんは突然、可愛らしい悲鳴をあげ、僕の手を振り払う。

 見る見るうちに顔が赤くなっていくのが分かる。


「突然、なにするのよ!」

 と、言って、顔を手で覆いながら、走り去ってしまった。

 それはまるで思春期の女の子のようだった。

 そんな可愛らしい後ろ姿をずっと見ていたかったけど、ドンドン離れていってしまうので慌てて僕は後を追いかけた。


「ちょっと、待ってくださいよー」


 ※※※


 村で魔力を回復するマジックポーションを調達すると、イリヤさんに渡す。


「ありがとう」

「いつもお世話になっているお礼です。さて、次に行きましょう」

「うん」


 僕達は村を後にして、次の目的地の洞窟に向かう。

 その洞窟にはどうやら、マジックポーションの原料となる魔力の結晶が眠っているらしい。

 魔力の結晶は非常に貴重な鉱石で、高く取り引きされている事もあり、冒険者が各地で探し求めている。


 僕が現実世界に戻るために必要な材料だとも聞いているので、なんとしてもここで手に入れたい。


 ――数時間が経ち、噂の洞窟に到着する。

 岩石の壁に人がすんなり入るぐらいの入口がある。

 ひび割れたような入口で、自然に出来た感じだ。

 入口の周りには、苔や蔓草が生えている。

 外から見た感じ、中は真っ暗だ。


「ランタンを持ってくれば良かった」

「あら、それなら大丈夫よ。私の炎があるじゃない」

「でもそれだと、イリヤさんが大変なんじゃ……」

「大丈夫、大丈夫。マジックウォーターがあるし、私の魔力はそんな簡単に枯渇する程、やわじゃないよ」


 確かにイリヤさんが魔力を切らしている所を見たところがない。


「それじゃ……頼める?」

「もちろん!」

「じゃあ、お願いします」


 僕はそうお願いすると、洞窟の中へと進む。

 ――中はとても広く、ジメジメとしていた。

 予想した通り、天井や壁に裂けている所は無いので、イリヤさんの炎が無ければ進めないぐらいに暗かっただろう。


 僕達は順調に奥へと進んでいく。

 奥に進めば進むほど、敵は強く多くなっていったが、イリヤさんが炎を維持しながら戦ってくれたおかげで、苦労することは無かった。


「イリヤさん、大丈夫ですか?」

「平気よ! レンちゃんは? 痛いところ無い? ヒールを掛けてあげようか? それとも魅了魔法の方が良い?」

「いや、大丈夫です」

「え~……何かあったら遠慮なく言いなさいね」

「ありがとうございます」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ