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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部2年 校外実習編
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 特に夜中に襲撃されることもなく、無事クーリア達は朝を迎えた。


「昨日は少し飛ばしてたし、魔獣の遭遇も少なかったから、村に着くのは予定より早くなりそうね」

「ああ。馬車の車輪、車軸も確認したが、問題は無い。早ければ今日中には着ける」


 朝食であるパンを齧りながら、サラとヴィクターが今後の予定の話し合いをする。

 学園の校外実習なので、予想外の事態が発生しない限り1週間以内には往復できるよう日程が組まれており、昨日予想より早く進むことが出来たクーリア達は、かなり早めに目的地へと到着できそうなのだ。


「このまま何も無ければいいんだけどねぇー」

「……イルミーナ、そういうこと言ってると本当に起こるからやめて」


 クーリアがムスッとした表情でイルミーナを咎める。皆の願いはもちろんイルミーナの言った通りだが、そう上手くはいかないだろうなとも考えていた。


「さて。じゃあ進みましょう。クー、警戒お願いできる?」

「まかせて。対処は?」

「……できるなら、対処もお願い」

「分かった」


 クーリアが頷き、馬車の幌の上へと飛び乗る。


「身軽よねぇ…落ちないよう気を付けてね!」

「うん」


(本当に大丈夫だろうか…)


 と心配に思いながらも、サラ達は馬車へと乗り込む。それを確認したヴィクターが馬車を出発させた。


「おっと」


 クーリアが少し体勢を崩したものの、落ちることはなくそのまま馬車は進み始めた。




「ふーむ……いるけど、警戒してるかな」


 魔力を薄く広げ、クーリアが魔獣の居場所を確認しつつそう呟く。

 昨日の戦闘の影響か、魔獣達は馬車から一定の距離には近付いてこない。まぁそれは好都合なので別に問題は無いのだが。


「……暇だなぁ」


 不安定な馬車の幌に座っているというのに、クーリアは能天気にそう呟く。まぁここまで落ち着いているのは、ひとえに魔力で体を固定しているからなのだが。

 魔力線と呼ばれる、魔力によって創られる紐のようなものを用いて、クーリアは自身の体を固定していたのだ。


「便利だけどくい込むなぁ…」


 体に巻き付けているようなものなので、結構締め付けられるのだ。だが、落ちるよりマシだ。




「……ん?」


 暫く馬車が進み、クーリアがふと空を見上げる。


「クワァァァ!」


 鳴き声を上げながら空を旋回する、黒い鳥。


「……魔獣か」


 クーリアが立ち上がり、弓を構える。明らかに鳥型の魔獣は、こちらを発見し、行動を起こそうとしていると分かったからだ。


「……《リブート》」


 クーリアが短くそう呟き、番えた矢を放つ。魔力を上乗せする魔法だ。……だが、魔力を流したのは矢ではなく、弓。

 弓を強化することで弦の反発力を高め、威力を上げ、飛距離を伸ばすことができる。

 そのことをクーリアはある日偶然発見したのだ。だからこそ、昨日の矢は猿型の魔獣に届いた。


 空へと真上に放たれた矢は、一直線に鳥型の魔獣へと向かっていく。


「クワァァァ!!」


 だが、距離があるせいで鳥型の魔獣は回避行動を取ろうとする。このままでは当たらないだろう。

 ……しかし、クーリアは落ち着きながら次なる魔法を行使する。


「…《リモート・ロック》」


 その言葉が紡がれた瞬間。まるで矢が生きているかのように軌道を変え、鳥型の魔獣の体を貫いた。


「よし……おっと。回収っと」


 グイッとクーリアが何かを引っ張る仕草をする。すると魔獣が手元へと落下してきた。

 実はクーリアは、矢に魔力線を繋げていたのだ。それを引っ張ることで、魔獣を回収した。

 ……ちなみに、先程の矢の遠隔操作を可能にしたのも、この魔力線のお陰である。


「…これはお昼かな」


 そう言いながらクーリアは小さめのナイフを取り出し、血抜きを行って馬車の中へと放り込んだ。


 ………その直後。馬車の中から甲高い悲鳴が上がったのは、言うまでもない。






 

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