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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部2年 校外実習編
87/136

82※

 クーは馬車の幌の上から、固定砲台としての役割を担ってもらっている。これは前から決めていた役割だ。

 クーの武器は、短弓。一応近、中距離とカバーできる武器ではあるものの、やはり接近戦は危険がある。よって、この役割。

 ……もう1つ理由があったりするけれど、まだそれは言わないでおこう。


「さて。…この距離はクーの短弓は届かないわね」


 とはいえ、わざと馬車に近づける訳にはいかない。だから、2人で叩く。


「じゃあ、決めていた通りに」

「はい」


 リーフィアが杖を構え、魔法を行使する。


「《ウィンドカッター》!」


 数本の不可視の刃が、()()に襲いかかる。

 ウィンドカッターによってその太い幹が切断され、木々が倒れた。


「キキィ!?」


 それと同時に、驚きの声を上げながら魔獣も落下してくる。わたしはこれを待っていたのだ。


「はぁぁっ!」


 一気に駆け寄り、その首を切り飛ばす。

 

「…そこっ!」


 後ろを振り向きつつ、投げナイフを投擲する。すると見事に魔獣の眉間へと突き刺さり、絶命したのか木から落下してくる。


「あとは…っ!リーフィア!」


 あともう一体というところで、その魔獣がリーフィアへと襲いかかろうとしていた。

 わたしは咄嗟に声を上げたが、遅かった。

 リーフィアへと魔獣の手が迫り………しかし、その手は届くことなく地面へと落下した。


「大丈夫?!」

「は、はい…お姉ちゃんのおかげです」


 見ると胴体部分に矢が突き刺さっている。クーの仕業だろう。


「…にしても、よくこの距離を」


 わたしだったら、確実に外していた。…ううん。外すだけならまだいい。すぐ近くのリーフィアに当たっていた可能性だってあるだろう。それを、クーはやってのけた。


「…ごめんなさい。足を引っ張ってしまって」

「謝ることじゃないわ。リーフィアが無事だっただけでもう安心よ。でも、次からはちゃんと周りの把握もね」

「は、はいっ!」


 とはいえ、わたしにも落ち度はある。少しリーフィアから離れすぎた。


「さぁ戻りましょう」

「そうですね」


 とりあえず魔獣の死体は穴を掘って地面へと埋める。解体は技術として持ち合わせてはいない。男子の選択授業には含まれているため、ヴィクター達は出来るだろうが、そもそも時間が無い。


「よし。行きましょう」

「はい」


 死体は燃やす。そうしないと他の魔獣が寄ってきてしまって、帰り道に待ち伏せされてしまう恐れがあるから。


 リーフィアと共に馬車へと戻る。先にヴィクター達も無事に倒せたようで、もう既に出発の準備が整っていた。



「待った?」

「いや、さっき準備が終わったとこだ。直ぐに出るぞ」

「ええ」


 早く進まないと、先程の戦闘の音で魔獣が寄ってきてしまうからね。


「あ、そうだ。クー、これ」

「ん?……あぁ、別にいいのに」


 クーに渡したのは、魔獣へと命中した矢。鏃は無事だったし、矢は消耗品なので回収してきた。もちろん投げナイフも。


「持っときなさい。いつ何があるか分からないんだから」

「……そうだね」


 クーが矢を受け取り、歪みがないか確認した後、腰に着けた矢筒へと仕舞った。血は拭いといたからね。


「あと何本?」

「えっと…14、かな」


 用意していたのは15。少し少なかったかしら……


「まぁ無駄撃ちはしないように気をつけるよ」

「…そうね。最悪村で買いましょう」


 一応その判断も視野に入れつつ、わたしたちの馬車はガタゴトと揺れながら、森を進んで行った。





 



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