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クーリアは教室を出て真っ直ぐに図書館へと向かっていた。
「はぁ…まさかリーフが飛び級してくるなんてねぇ…」
道中そんな独り言を呟いた。それだけクーリアにとって、信じられないことだったのだ。
だが、もう起きてしまったものは仕方がない。そう考えて、クーリアは気持ちを切り替えた。
そしていつものように図書館へとたどり着き、その扉を開く。すると、クーリアの目の前にヒラヒラと1枚の紙切れが落ちてきた。
「ん?」
クーリアが地面に落ちたそれを拾い上げる。すると、そこに文字が書かれていることに気が付いた。
クーリアはその文面を読み……深いため息をついた。
「はぁぁ……まぁ、話したいこともあったし、いっか」
紙切れをポケットへと仕舞い込み、クーリアは図書館の中へと足を踏み入れた。
真っ直ぐといつもの本棚に……は向かわない。さらにその奥の本棚へと向かった。
「えっと…」
クーリアは奥の本棚の目の前に立つと、キョロキョロと何かを探し始める。
「あ、これだ」
そして所狭しと本棚の中に並んだ本の一冊に目を止めた。それは、普段クーリアが読むような本ではなく、何時からあるのか分からないほど古びた本であった。
クーリアはその本を本棚から抜き出す。そして本を抜いたことで出来た空間へと、本を持つ手と逆の手を入れた。
「うーん……あ、あった」
本棚の奥。見えはしないが、手から伝わる感触で探していたものを発見した。
クーリアが手を触れたのは、本棚の奥に貼り付けられた小さな石版。そこに指先から魔力を流す。すると次の瞬間、
ガコンっ!
何かが動いた音が図書館へと響いた。
「よし」
クーリアは取った本を元の位置に戻すと、今度はその本棚へと手をかけた。
「よい、しょ…っと」
クーリアが横に軽く力を入れると、本棚の下半分のみがギギギッ、と横にズレた。
「なんでこんな凝ったもの作ったんだか…」
クーリアが思わず呆れたような声を漏らす。
本棚があった場所には、ほのかに明かりが灯る長い通路が続いていた。
クーリアはその通路へと足を踏み入れ、ズレた本棚を戻す。すると今度は、ガチャンッ!と鍵がかかったような音が響いた。試しに少し力を入れてみるが、ビクとも動かない。
「とりあえずこれで誰かにバレることはない、か」
本棚が動かなくなったことを確認して、クーリアは薄暗い通路を進み始めた。




